ソイツと出会ったのはトイレの中だった。
夜中、尿意を感じて目を覚ました俺は一階のトイレに入って用を足していたんだ。
寝ぼけ眼に小便していたらトントンって何かに後ろから肩を叩かれた。
寝ぼけていたせいもあって俺はとくに考えもせずに後ろを振り返り目を見開く
そこにいたのはお坊さんのような格好をした長身の【首の無い】男だった。
【顔 蝶 だい】
「ヒッ…ぎゃ、ギャアァアッ〜‼︎」
色々な声が混ざったような声を聞いた瞬間に俺の恐怖は限界突破した。
その後のことは悲惨という一言に尽きる。
トイレから転がるように逃げ出した俺
自分がさっきまで小便していたことも忘れた俺は小便を垂れ流しながらリビングから両親の部屋へと助けを求めに行ったのだ。
当然両親は大激怒、母親から長々とお説教されて父親からは頭に拳骨食らった。
首無し男の話をしても信じてくれなくて
母親は悪い夢でも見たんでしょって呆れたようにため息を吐かれた。
【ゲ ラ ゲ 羅 馬ァ鹿】
違う、夢なんかじゃない…
だって首無し男は今も母親の後ろにいる。
首無し男は腕を組んで俺が下半身丸出しでお説教される姿を見ているんだ。
顔が無いから表情なんて分からない…でも声だけは聞こえるから馬鹿にしたような笑顔で見下してるのだけはわかった。
明日も早いということで深夜のお説教が終わり両親が寝室に戻っていき、新しい服に着替えた俺は自分の粗末した後片付けをしている。それが終わるまで寝てはいけないと言われてしまったからだ。
首無し男に驚いたとは言えあの時もう少し冷静になるべきだったと反省した。
俺はもう小学生の中でも上級生の仲間なのだ、幽霊にビビって家中を小便まみれにするなんて恥ずかし過ぎる。
【顔 蝶 だい】
洗面台にバケツの中の汚れた水を流していると首無し男が近づいてまた同じ言葉を言った。
両親に怒られてイライラしていた俺は首無し男を無視して掃除道具を洗って仕舞うと自室に戻った。その後ろを当たり前のように首無し男が着いてくる。
怖くないと言ったら嘘になるけど不思議と首無し男の存在はそんなに怖くなくなっていた。
なかに入って扉を閉めると扉の真ん中からヌッと首無し男が出てきた。
ゆっくりとした足取りで部屋に入ってきた。
【寝 ル の?】
「あ、今のは分かるぞ
寝るよ、寝るに決まってるよ!
だってもうねみぃもん」
【顔 蝶 だぃ】
「また同じ言葉…
顔ちょう?だいって何?
俺の顔欲しいなら
お坊さんの体的に
合わないと思うけど」
【血が う。ワタ 名前 羂索】
「羂索?は幽霊じゃないのか?」
ベットに寝転んで傍に立つ首無し男に質問をした。
首無し男…いや、羂索は数秒体の動きを停止させるとベットに座って困ったように腕組みをしていた。
【少 死 違ウ。
私 は 呪呪…呪霊 特級】
「じゅれい?」
【未練 ノ、塊…】
「未練の塊?」
【そ 卯 だ 】
「…」
枕元の目覚まし時計を起きる時間にセットしながら「幽霊じゃなくて、じゅれー?の羂索はなんで俺のとこ来たんだ?」と質問をすれば、羂索は何も言わずに俺の頭をゆっくりと優しく撫でた。
【タカ 馬 顔 我欲し イ】
「なんで俺の苗字…
顔欲しいってなん…ふわぁ〜…
ん〜〜ダメだ。
もう眠い…羂索…けんじゃく…
おれもう寝るよ…おやすみぃ」
眠気の限界が来て俺は布団をかぶり直して寝る体制に入る。
羂索は相変わらずベットに座って俺を見下ろして頭を撫でている。
幽霊でじゅれーで言葉だって声だって変だし
怖いし…羂索の手は暖かかった。
本当になんでコイツは、俺のとこに
来たんだろ?
【顔 ガ 欲し ヰ】
顔が欲しいって何?
【タカ 馬鹿 奈 ラ 出来 ル】
俺だからできる?
何が…俺なんかに何が出来るのかな?
「…」
【タカ 場】
【タカ馬 顔我 欲し イ ヨ】
【私 我 私ニ 私ニ 顔ガ アレバ
面白い ダ ロゥ?】
◾️
ピピピピッッ
「う〜ん…」
いつもの起床時間。
俺は目覚まし時計のアラームを
止めるため目を覚ました。
【夜ァ オハ ヨ】
目の前に宙に浮いた首無し男が片手をあげて俺の顔を覗きこんでいた。
「ギャァアァアァ‼︎」
家中に響き渡る悲鳴に両親が何事かと部屋に入ってくる。
落下した状態でベットの上を指差す俺を見て両親は互いに顔を見合わせ疲れたようにため息をした。
やっぱり両親には羂索の姿が見えていないようだった。羂索はというと、ベットの上で
釈迦ポーズをしながらゲラゲラ笑っていた。
クソ〜っ、怖くはなくなったと言ったけど
見た目が怖すぎなんだよ!
一日で慣れるわけがない!
「史彦、お前今日は学校休みなさい」
ベット上の羂索を睨みつけていると父親が慰めるように頭を優しく撫でてくれた。
羂索とは違う撫で方だったけど久しぶりに父親に頭を撫でられたのと休めることも相まって嬉しかった。
「羂索は、えっと…じゅれーはご飯とか食べないの?」
母親が作り置きしてくれた昼ごはんのサンドイッチを食べながら隣に立つ羂索に声をかける。
【私 食 ベ 平気】
「やっぱり幽霊なんじゃないの?」
【違ウ 呪 私 ハ 呪霊ダ】
「じゅれーねぇ…」
ラスト一個のサンドイッチを食べ終わると除菌シートで手を拭いて自室に戻ろうと立ち上がる。
しかし、立とうとした俺の両肩を羂索の手が抑えつけた。
「羂索?」
【髙 バ 外 ニ サン歩】
「散歩?羂索は散歩に行きたいの?」
【う ン】
「まぁ、別にいいけど…
あっ、でも俺今日ズル休みしてるようなもんだからあんまし遠くには行けないよ?」
【ダイ ジョ 歩 神社 息 タ井】
「神社?いいよ!神社なら家から近いし」
【 有難ゥ】
そう言って首無し男が俺の手を取った。
思った以上に力が強い。
よろけそうになった体を羂索が両腕で支えてくれた。
【大丈夫 ブ ?】
「えっ、あ…うん、ありがとう」
【イ こゥ】
「…なぁ、羂索って顔が無いのにどうやって話してるんだ?」
【…コレ】
羂索は着物の袖口から何かを取り出した。
手のひらサイズのヒヨコのようなもの
いや、ヒヨコにしては目が多すぎる。
【ピギャアァア】
「えっ何コレ、鳴き声気持ち悪っ⁉︎」
【コレ ハ 周リ 乃
コ ヱ を 吸収ス ル】
「へぇ、だから羂索の声っていろんなのが混ざったような声なんだ!」
【コ ヱ モ 髙バ 並ラ 出来 ル】
「俺なら出来るって…俺なんも出来ないよ
俺…面白くないし…クラスの笑いものだし…」
【キミ ハ オモシロ 伊 ヨ
キミは 蝶 面白い ヨ】
「羂索…へへっ、ありがとな!
じゃ、散歩行こうか!」
今まで誰にも言われなかった初めて言われた【オモシロイ】の言葉に俺は嬉しくなって俺から羂索の手を取った。
首無し男を連れてきたのは地元では隠れた名所と言われる神社だ。街を守ってくれる御狐様が祀られてるとかで夏には必ず祭りが開かれている。
早い時間もあっていつもは学校帰りの子供達の遊び場となる場所には人っこ1人いなかった。
神社には遊具もないから神社周りをグルーっと一周するくらいしか出来ない。
羂索と手を繋ぎながら神社を適当に歩いた。
季節春の終盤で神社の数少ない桜の木もすっかり枯れてしまった。
ただ歩くだけというのは子供の俺からしてみれば暇だし、つまらない。
「羂索〜、もう帰ろうよ」
【ま ダ ゼン武 タベ テナイ】
「食べてない?…あれ?羂索はご飯食べないんじゃなかったの?」
【ご飯 ハネ 食べ ナヰ】
「ご飯は?」
【ア ココは 丁度 イィな
力 我 蓄え ラレ瑠】
「ん?羂索今なんて言ったんだ?
上手く聞き取れなかった」
【気ニ す ル な】
「ん〜…わかった!
じゃ、もう少し散歩しようぜ」
【アリ 我ト 御免 ネェ】
羂索との散歩から帰るとリビングのテーブルの上には仕事の合間を縫って帰ってきた母親が置いであろう置き手紙と千円札があった。
「今日もか…きょ、今日は、何のお弁当
買おっかな〜!」
【キミ 乃 母親は ご飯 作ラナイの?】
「母ちゃんも父ちゃんも仕事忙しいから
しょうがないよ」
【寂 シィ?】
「えっ、いや…こんなん毎日だし
慣れちゃっ」
ぽんっと優しく頭に手を置かれた
【寂しい?】
「…寂しくないよ、もう慣れた」
【寂しいんだろ?】
「っだから」
【私の 前で 嘘 使 くて いい】
「…っ」
初めて聞き取れた羂索の言葉に
頭を撫でてくれる優しい手に…
ずっと閉じ込めていた
【寂しい】気持ちが緩んでしまった。
「…本当は寂しいよ…おれ
寂しい、の本当はイヤなんだ…っ」
【私が イる】
「…うんっ」
優しい手に導かれるように俺は羂索に強く抱きついた。じゅれーってやっぱり変だ。
なんで触れるの?
なんで優しいの?
【髙 バ 顔が欲シ ぃ】
【私 我 私ニ 私ニ 顔ガ アレバ
面白い だろう?】
「…別に」
【エリ カ 加ヨ】
「エリカって誰?」
【……コレが ジェネレ カ】
「なんでジェネレ知ってんだよ」
へへっと笑って羂索から少し離れて何もない
首の上を見上げてみる。
俺は首無しの羂索のままだっていい。
でも、もし…羂索に顔があるなら
俺の頭を撫でる時の顔や
俺を馬鹿にした時に笑ってる顔が
どんな表情をしているのか
この目で見てみたい…
「…面白い」
【髙 バ?】
「羂索に顔があったら
面白いって…俺は思う…よ!」
【………有難う 髙羽イイ子 だね】
アトはキミ蛾 思いダス だけ ダ ネェ…】
「思い出すって…
やっぱり羂索は俺と昔会ったことあるの?
…どうして俺、覚えてないんだろ…」
もし俺が幼い頃に羂索に会っていたなら、この格好は一度見たら忘れないって自信があるのに…何度見ても羂索は首無し男でしかなくて、思い出せない自分に腹が立った。
【気ニ する 必要ハ ない…
準備は出来テ ル。
アトは キミ次第だよ】
「…っなんも覚えてなくて
ごめんな、羂索…」
【イイコ イイ子 】
落ち込む俺を羂索が抱きしめて頭を撫でてくれる。肌に触れた羂索の服は爺ちゃんのお葬式で嗅いだことのある匂いがした。
「ん…よし、それじゃあ弁当買いに行くから着いてきてくれよな羂索」
【モチ論 ダ】
手を伸ばせば強く握り返してくれる大きな手
いつも1人で歩く見飽きた弁当屋に続く景色も羂索が隣にいるだけで違って見えた。
買ってきた弁当を食べながら俺は羂索と一緒に大好きなお笑い番組を見た。
意外なことに羂索は俺と同じくらいお笑い好きで、この芸人が好きとかこのネタ面白いとか言ってお笑いの話で盛り上がった。
町外れの病院で働く両親は深夜か朝方まで帰って来ない、少し前ならそれが寂しくて1人で寝るのすら嫌だったのに…今の俺には羂索がいる。
だから全然寂しくないんだ!
「羂索おやすみ」
【オやスミ 髙羽】
ニュースをお伝えします。
〇〇市にある御狐様で有名な稲荷神社で
火災が発生しました。
火災に巻き込まれた神主の〇〇さんは
全身に火傷を覆った状態で救急に運ばれましたが死亡しました。
放火の疑いがあるとして〇〇警察は
捜査に当たってー
「おはよう羂索」
【髙羽 オハ よ】
起きて宙に浮かぶ羂索にいつもの朝の挨拶を済ますと俺はベットから飛び降りて部屋の壁に画鋲で止めていたカレンダーを捲った。
今日から新しい月がはじまる。
羂索も後ろから覗きこむようにカレンダーを見つめている。
【髙羽 アレは ?】
カレンダーに記されていた赤い花丸マークに気づいた羂索が印のついた日付けに指を指す
「…」
今更ながらに羂索って周りのものをどこで見て
何で認識してるんだ?
俺にさんざん顔ちょうだいとか、顔が欲しいって言ってくるけど、ココまでちゃんと見えてるなら顔なんていらないんじゃないの?
【髙羽?】
「えっ、あ、この日な
この日は修学旅行の日なんだ!
しかも旅行先はなんとあの大都会の
東京なんだ!スゲーだろ⁉︎」
【 …東京】
「俺、地元から一歩も出たことないから
東京に行くのスッゴイ楽しみなんだ!」
【 へェ イイ ネ 私モ 楽しみダ】
「何言ってんだ羂索はお留守番だよ」
【私モ 行く】
「ダメだよ!
お前いたら東京観光楽しめねぇ!」
【私モ 行く 可能性 が アルか もしれない からね】
「可能性?」
【アァ 楽しみ ダね 東京…】
「……」
指先でカレンダーの赤色の印に触れる首無し男、その姿を見て俺は久しぶりに羂索を怖いと思ってしまった。
今の羂索には出会った頃に感じた不気味な雰囲気が漂っていて怖い。
この場から逃げる言い訳が思いつかなくて
俺はとりあえずトイレに向かった。
羂索はついてこない、何処にでも着いてくる羂索にトイレには入ってくるなとキツく言っておいて良かったと今になって思う…
「可能性ってなんなんだろ?」
◾️
「B組〜忘れ物はないかぁ?
あぁ、それからゲームな。
見つけ次第没収するからなぁ
持ってきたらダメだぞ」
「「はーい!」」
楽しみな日ほどあっという間に来るものだ。
修学旅行バスで学校から空港まで行って飛行機に乗った。
地元を出るのが初めてなら飛行機に乗るのも初めてだったから緊張していると逆さまになって羂索が【大丈夫?】と顔を覗き込んでくる。
あれだけダメだと言ったのに結局コイツは着いてきてしまったんだ。
よく考えてみれば羂索は幽霊みたいなじゅれーってやつで俺よりも自由に行動が出来るんだ。宙に浮いたり、鍵をかけた部屋をすり抜けて入ってきたり…つまり羂索が行きたい!と言った段階で羂索付きの修学旅行は決まっているようなものだった。
修学旅行1日目は東京スカイツリーに登った。
最上階の高さからの景色にちょっとだけビビっていたら、スカイツリーの窓の外に首無し男がふわふわ浮いて手を振ってくるものだから呆れてしまう。
次は浅草に行った。
沢山美味そうなものを売ってる店があって何か一つくらい食べてみたかったけどまだ自由行動じゃないから我慢した。
同じ班の子と自由行動の時に絶対買おうな!って約束をして溢れ出そうな涎をゴクリと飲み込んだ。
東京では有名なスクランブル交差点に来た。
俺たちの学校は田舎でマンモス校みたいに生徒数もそこまで多くないから生徒を先生が半分に分けて渡らせていた。
俺は後ろの方にいたから後半組だった。
東京に来てから羂索は妙に大人しい
いや、何かを探してるみたいに後ろを見たり
横を見たりしているけど変わった変化はない
「後半組、渡るよ〜」
違うクラスの先生が声をかける
はーいと返事をして前に進もうとした時だー
【見つ ケ た 】
「えっ?」
ガシッと強く羂索に腕を掴まれた。
前を歩く生徒の後頭部が遠ざかっていく…
何するんだ羂索と言おうとして振り返った先に
見えたモノに俺の思考は停止した。
綺麗な白髪のサングラスをかけてクレープを頬張る男の隣…黒髪で前髪を垂らし後ろを団子結びしている男の人に、俺の目は釘付けになった。
まるで俺の周りだけ音が消えたような
不思議な感覚で…
交差点の向こうから微かに聞こえる先生の声も、立ち止まった俺を邪魔くさそうに避けて悪態をつく男の声も顔も霞んでいく
俺は…あの人を 知ってる?
ズキズキと激しい痛みが
「…っちがう、しらないに決まってる
だって…だって…おれ、は…今日はじめて
東京に、来て…」
本当に?
「ゥアァ…っ!」
頭が割れるように痛くて俺はその場に頭を抱えて蹲った。
「キミ大丈夫かい⁉︎」
遠くにしか見えなかった黒髪の人が俺に気づいて近づいてきた。
痛みに震える体を必死に起こして見えた人の顔に再びズキズキと頭が激しい痛みを呼び起こす。
「っぁあ…痛…っ痛いぃ!」
「マズイなコレは…っ
ちょっと待ってて、今救急」
この人を、いや…顔か?
俺はこの顔を知ってる…
でも違う。
顔は…
もっと、何か傷のようなモノが
声も…
「声?」
【コ ヱ モ 髙バ 並ラ 出来 ル】
「痛い…!痛い!けっ、羂索はどご!
羂索…っ…羂索っ!」
「けんじゃく?」
頭が痛いんだ。
羂索助けて、羂索…
【タカ 場 髙羽】
【髙羽 顔が欲し イ ヨ】
【私 我 私ニ
私ニ 顔ガ アレバ
面白いだろう?】
「っ顔…そう、だ…あたま、ひたい
羂索には…アイツには…ひたいに」
アイツって誰だ?
【あぶなーい!】
【10、0でお前が…】
【嫌で〜す】
【ファンタだー!】
【行こうぜ相方】
【ピンチャン】
【キミ、超面白かったよ】
なぁ、誰なんだよ…
震える指先を目の前の男の人の額に伸ばして
「傑ッ!その子供から離れろッ‼︎」
誰かが叫んでる。
「アイツは…アイツ?
そう、だ、傷が、縫い目、のような
傷があった」
横に一直線に線を引いた。
【ありがとう 】
後ろから聞こえる優しい声。
見えてないはずなのに俺は首無し男の首から上が逆再生のように戻っていく姿が想像出来た。
「⁉︎なんだコイツ、顔が…っ」
「傑っ!早く離れろ!」
「悟っ⁉︎」
白髪の男が俺から引き剥がすみたいに黒髪の人の腕を強く引っ張りその背に庇うように隠した。
「髙羽」
後ろから誰かに抱きしめられた。
低く声が耳元に落とされる。
その声に懐かしい気持ちでいっぱいになった
2人から目を離して後ろを振り返った。
そこに首無し男はいなかった
「髙羽、ありがとうね」
さっき声をかけてきてくれた人と姿も声もそっくりなのに、額に走る縫い目のような傷跡が…俺しか知らない羂索のようで嬉しくなった。
だけど…
「羂索…ごめん、俺お前の顔
絶対知ってるし、見たことあるのに
何も…なんも思い出せなくて…っ
ごめんな、羂索…」
首無し男の顔が戻ってきたのに俺は結局何も思い出せなくて、それが悲しくて悔しくて泣いていると羂索に抱きしめられた
「…気にしなくていいよ
いつか、きっと思い出すさ」
「…うん」
俺はそのまま羂索の腕の中
気絶するように眠ってしまった…。
補足設定
羂索
髙羽の未練が強くて特級呪霊になってしまった。いろんな人の体借りて渡り歩いてきたので正直顔は誰でもよかった(最低)けど、髙羽と出会った時が傑くんの体だったので顔は傑くんでなくてはならなかった。
姿や力を保つために神社の神様吸収しちゃった☆
髙羽が相変わらずの無自覚超人術式使いだとわかっていたので暗示に近い形で術式発動させた。
実はそんなに髙羽の記憶が戻る戻らないは気にしてない。
髙羽と一緒にいれればいい。
無くした顔を戻すなんてトンデモ術式使えるの髙羽しかいないし、正直顔戻った時は内心「マジで?」と思ってた。
髙羽少年
千年生きた執着心ツヨツヨの男に気に入られてしまった可愛いそうなショタ。
超人は体に刻まれているので健在
まだ幼く知識も乏しいので羂索と戦った時みたいな謎領域は出せないけど、オモロいと思ったことは実現化できるので羂索の顔が戻った。
呪術師(五条、夏油)目の前でトンデモ術式使ったのでそのまま羂索と一緒に高専預かりとなります。
羂索のことはたぶんいつか思い出す。
自動で反転術式が発動されるので家入がいない時はよく呼ばれる。羂索と同室。
夏油
今世は呪術師家の生まれ
親友とは幼馴染。
記憶なしなので親友が羂索を嫌っている理由が分からないけど、羂索と仲良くする気もない。
バカだけど素直で優しい髙羽を気に入っている。
五条
羂索の顔が戻る姿見たせいで全部思い出す。
宿儺戦前くらいしか髙羽と会ってないので
本気で羂索が髙羽を気に入ってる理由がわからない。
髙羽のたまに出ちゃう無自覚超人に付き合えるのは自分だけだと思っていたけど、羂索がキャラ大丈夫かよってくらい髙羽の超人に順応し過ぎててビビったし引いた。
下級生に髙羽つけとけば大丈夫だと思っているので理由も言わずに任務に向かわせる。
おわり!