【ケンちゃんヤバいよ!タカちゃんのピンのお仕事、出演者の女優がケンちゃん嫌いとか言い出してタカちゃんキレちゃったの!
スタジオは最悪の空気で100パー女が悪いのにみーんなタカちゃんのせいにしてマジ最悪だったよ!タカちゃん大丈夫かな?ちゃんと慰めてあげてね!】
「…」
送られてきたDMは私が予想していたものより遥かに最悪だった。まず、ピンチャンファンの距離感がエグいな、私はキミの友達か?
…まぁ、いつもは迷惑でしかないファンからのDMも今回ばかりは役に立った、返信はしないけど心の中で褒めてあげる。
「はぁ、珍しくメールに既読がついてないと思ったら、そんな面倒なことになっていたのか…」
エックスを閉じてLINEを開く、今日は遅くなるというメールには相変わらず既読の文字がついてなかった。いつもは3分とかからずに返事が返ってくるのに今日は収録が終わるまで一度も通知が鳴っていない。
ファンのDMから察するに、私の相方は馬鹿な女優に利用されたようだ。
デビューしたての俳優や女優というのは顔を売るためによくバラエティー番組に映画やドラマの宣伝も兼ねて出演している。
ただ宣伝するだけの者は害がないからいい、面倒なのはバラエティー番組で目立つ事をして爪痕を残そうとする人間だ。
しかも今回の相手はかなり最悪のパターンのようだ。ピンチャンの髙羽と羂索の人気というのは右肩上がり、つまりファンの数は圧倒的に私が上…まぁ、どちらが人気者なんて私にしてみれば“どーでもいい“ことで私は髙羽と漫才ができればいい、相方と最大級の面白いを追求するのが私の一番楽しいことだ。
…しかし、困った。恐らく今の髙羽は“アレ“になってる可能性が高い。
「羂索さんお待たせしました。
お店を予約しましたので仕事の話はそちらでー」
「あぁ、すいませんマネージャー
大切な用事を思い出してしまいましたので
仕事の話…まぁどうせ雑誌の話でしょうが
その話、明日にしてもらえませんかね」
「えっ、そんないきなり」
「先方にはマネージャーが謝っておいてください。それじゃお疲れ様でした〜」
「えぇ!?嘘でしょ!?羂索さん!?」
焦るマネージャーの声を無視して私はテレビ局の控え室を出るとタクシーに乗り込み自宅へと向かった。
「ただいま」
ピンチャンの名前が売れてボロアパートを卒業した私たちの今の住処はオートロック付きのマンションだ。
自宅に入る前にもう一度メールを確認する。…やはりまだ未読だ。
鍵を差し込み自宅に入ると廊下の明かりもリビングの明かりも点いていたので髙羽が帰ってきてるのは間違いないだろう。
リビングに入るとなるべく目線を下に向けて、間違えても踏まないようにゆっくり移動してソファーの下を覗き込んだ…いない。
前の時はいたのにな、次に自室に向かってゆっくり静かに毛布を持ち上げる…ココにも居ない…
「はぁ、まったく今日はどこに……ん?」
明かりの点いたリビングの真ん中、腕組みをして次に探す場所を考えていると、ソファーの上にあるカーディガンが目に入る。
あのカーディガンは室内でよく着ているものだ、しかし、今日の朝着替えるときにハンガーにかけたはず…もしかして…
「…」
私はソファーにゆっくり歩み寄るとしゃがんでカーディガンをジッと見た
「…微かに、動いてる」
今日はそこか。
静かにカーディガンをゆっくり摘み上げると、そこには猫のように小さく丸まってピスピス泣いてる小さな相方の姿があった。
やっぱり、小さくなっていたか…
私の相方は術式の影響で精神が不安定になると手のひらサイズほどに小さくなる。
小さくなる時は大体ピンの仕事で失敗した時がほとんどで、最近は少なくなっていたけど
今回はかなり精神的にキたのだろう。
「馬鹿だね、有象無象の人間の言葉に振り回されるなよ」
「…っ羂ちゃ」
「羂ちゃんって…だいぶ弱ってるみたいだね
いつも私のことを羂さんと呼んでいるキミが羂ちゃんなんて呼ぶの、久しぶりじゃん」
「ごめん、俺…羂ちゃんが悪く言われるの嫌で、聞いてられなぐて…っえず、エスエヌエスでもすげぇ叩かれて、俺のせいでぇピンチャン炎上」
「安心しな炎上してるのは馬鹿な女優の方だよ
キミを批判しているのは女優の一部のファン、アンチくらいでリアタイしていた視聴者のほとんどが女優の言動の方が問題あるって、女優が所属していた事務所はもう謝罪文を出してる…だからほら、もう泣くなよ。
キミが泣くのはベッドの中で充分なんだから」
「う〜」
両手でゆっくりと力を入れすぎないようにお人形のような相方を持ち上げて顔を近づける。いつもの私服、オールバックが崩れた顔や姿はサイズも相まって幼く見えた。
泣きすぎてりんごのように赤くなったほっぺをペロと舌で舐めてあげる、舌先には塩を水で薄めたような味がした。
くすぐったいよ羂ちゃんと言ってちんまい相方はイヤイヤするけど、ただ可愛いだけで抵抗になっていない。
私の相方可愛いなぁって手のひらの上に乗せて親指で流れ落ちる涙を拭ってあげると小さな手が親指をギュッ抱きしめる、ちんまい相方は私の親指におでこをぐりぐり押しつけながら「羂さん、ごめんなさい」と言った。
「俺…ピン芸人の頃は小さくならなかったのに…羂さんとコンビ組んでから、小さくなること多くて…羂さんにも、迷惑かけて…弱い相方で本当ごめん…っ」
「あのさぁ、それって私を信用してるってことだろ?
相方に守られて頼られて嬉しくない相方はいないよ」
「ほ、ほんとに?」
涙と鼻水で汚れた“ブチャイク“な表情に口づけをしてあげる、私の唇の方が大きいから顔全体的にキスする形になってしまったけど、私の小さな相方は頬を赤らめくすぐったそうに笑っているから少しは気持ちが軽くなったのだろう。
「いくらでも小さくなりな
必ず私がキミのこと見つけてあげるから」
「ん、ありがと羂さん」
私の言葉に髙羽はふにゃりと笑った。
次の瞬間には髙羽の体は元のサイズに戻る
ちんまり髙羽だった男は、私の相方に戻ると私を強く抱きしめた。
私も髙羽の背に両腕をまわし
髙羽よりも強く強く抱きしめた
「お帰り史彦」
「ただいま羂索」
私と同じシャンプーの香りに混じった髙羽の匂いに、10時間ぶりに私の腕の中に愛しい相方が戻ってきた。
「まったく、キミのおかげで今日一日ずーっと通知がうるさかったんだから…ピンチャンファンは過保護が多い」
「へへ、ごめんなさい」
「喜ぶなよ。…いいか髙羽よく聞け
もしまた変な奴が私の悪口言っても気にするな、私はどーでもいい人間に何を言われも気にしない。だからキミはお笑いのことだけ、お客さんのこと笑わせることだけ考えな」
「…相方馬鹿にされるの…笑いに変えるのも笑って流すのも、イヤだ」
「じゃあ監視つけていい?」
「えっ、じゅれーのこと?…出演者に変なことしないよな?」
「時と場合によるかなぁ」
「え〜怖っ…まぁ、いいけど」
「いいのかよ」
「…羂さん」
「んー?」
「もう小さくならないようにするけど
また小さくなったら見つけてね」
どんなに小さくなっても必ず見つけるよ
私はキミとピンチャンになるまでずっと虫であったり、虐待される猫であったり、余命宣告された女だったり、産まれながらに病弱な子供と、健康な人間に産まれてキミを見つけるまで随分かかったんだから、今更小さくなったって私が何度でも、どんな場所にいてもこの手に収めてあげる
「見つけるさ、必ずね…」
オマケ
ちんまり髙羽が大好き過ぎる羂索バージョン
私はソファーにゆっくり歩み寄るとしゃがんでカーディガンをジッと見た
「…微かに、動いてる」
今日はそこか。
静かにカーディガンをゆっくり摘み上げると、そこには猫のように小さく丸まってピスピス泣いてる眠る小さな相方の姿があった。
「…」
私は髙羽が眠っているのか確かめるために指先でほっぺをプニプニしたり、米粒くらいの鼻をつついた。…よし、寝てるなと心の中でガッツポーズを取った。
髙羽は一度寝ると起きないからね、私はポケットからスマホを取り出すと写真を連写、真正面から斜め右、下アングルから舐めますように撮影した。
「ふぅ…今日もいい写真撮れたな」
次に動画撮影モード切り替えて可愛い相方の姿を動画に収めた
「はぁ〜可愛い、わたしの相方ちょー可愛い!え?天使か?なんで35歳のくせにこんなに可愛いの?あぁ私の相方だからかッッ!!
鼻提灯出ちゃってるの可愛い、猫ちゃんみたいにごめん寝ポーズして寝てんの可愛いぃ〜犯すぞ。小さいから流石に私の魔羅は入らないだろうからな、口も裂けちゃうからまぁ〜〜我慢してやるよ。はぁぁ可愛い、指先近づけると猫みたいにペロペロすんの可愛い過ぎるんですが、やっぱヤるか、でもなぁ裂けちゃったら漫才出来ないし、写真も動画も撮れないし…あ、今わたしの名前呼んだ?
寝言?はぁああぁ〜??寝言が私の名前とか可愛い過ぎるんだけど?ブチ犯してやろうか?」
満足いくまで写真と動画を撮った私は眠るちんまり髙羽を膝に乗せながら頭撫でたり、顎下コショコショしながら、ノートパソコンのちんまりフォルダの中に今日収めた新しい写真と動画を保存した。
「ウチの相方が可愛い過ぎて困る」
終わり