死は二人を分かつのか?そうだ、今日は心地いい気温だからと窓を開けて、そのまま知らぬうちに眠ってしまったんだ。夢でのそよ風がやけにリアルに思えたのは、そのせいかと納得する。
俺を文字通り叩き起したバデーニさんは、なにか特別用があったわけでは無いらしい。最初は俺の胸で頬杖をついていたけれど、首が疲れたのかそれをやめて完全なうつ伏せ状態になった。首の向きを左右どちらにしようかと何度かころころと向きを変え、しっくりくる場所があったのだろう、満足そうに鼻先を沈ませて、ふうと息を吐いた。
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「結構飲みました?珍しいですね、外でこんなに酔うまで飲むなんて」
金髪から覗く耳殼をそっと撫でると、バデーニさんは少し恥ずかしそうに瞬きをした。
「付き合い程度だ。君のマヌケな寝顔を見たら、急に回った」
その言葉を聞いて、ちょっと嬉しくなった。自分の顔を見て気が抜けた結果、酔いが回ったのだとしたら。
バデーニさんにとって安心する存在になれている、ということだろうか。
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そのまま彼の髪をサラサラと梳かしていると、しばらくされるがままだったバデーニさんが、唐突に、意外な話題を話し出した。
「六〇〇年前も私たちは『こう』だったんだろうな」
「え?」
視線を下げると、彼はどこか眠たげな瞳で俺のポロシャツを指先で弄っている。バデーニさんは癖なのか、眠くなると手元にある布とか服とかで手遊びし始める。小さい子供みたいで可愛らしいと、いつも思う。
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「オクジーくん」
「は、はい」
自分の死体処理の話をしたというのに、声色もどこか楽しそうだ。
「我々は焼かれて一つの灰となって、処理された。私の肉も、君の骨も、まとめてな」
それがどういうことか、分かるか?
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