恋煩い(仮)プロローグ
熱い、と思った。身体の中心に、何か熱いものが置かれている。
その熱に導かれるようにゆっくりと目を開けた。目を開けて、今まで自分は目を閉じていたことを知る。薄ぼんやりとした視界の中で認識できたのは、真っ白な天井……と、それを額縁に納めるように薄緑色のカーテンが四方を囲っていた。
どこだ、ここは。
判断するには可視的情報が少なすぎる。けれど、ツンと鼻を刺激するのは、薬品の匂いか?耳を澄ますと、誰かの話声が微かに聞こえた。
「あつい……」
覚醒しきらない頭で再び思った。燃えるような熱さはなんだ?今度は声に出たようで、しかしそれは声と言っていいか怪しい程に音になっておらず、ほとんど空気が掠れる音となって唇を震わせた。
2839