場所はいつも君のとなりだった「よし、準備できました」
オクジーくんもベッドに上がる。
壁を見ると目玉き、カリカリに焼かれたベーコン、トースト、という先程夕飯を食べたばかりだと言うのに食欲をそそる定番の朝食と共に、映画のタイトルが映っていた。
「『場所はいつも旅先だった』⋯?」
「見たことあります?」
「いいや」
映画を見ること自体が久しぶりだ。
普段は見ても古典作品やミステリーが多いが、これはタイトル画面から察するにそういった類いの映画ではないだろう。
「難しく構えず、ゆったり見てくださいとヨレンタさんが仰ってました」
じゃあ始めますねと再生ボタンを押した。
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「なにが⋯」
「はい?」
ベッドを降りて片付けをしようとした彼を引き止める。
「何が、君を『そう』させた?」
教えて欲しい。君が抱いた感情を、君の言葉で聞きたい。
そう期待を込めて見つめると、オクジーくんはふっと目元をやわらかくして私の隣に座り直した。
「そうですね⋯。うーんどこから話せばいいかな」
「最初から」
有無を言わさず即答すると、彼は困ったように笑って話し出した。
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傷一つない彼の頬を撫でる。
「なら、今絶望の淵にいる者のためにも、私たちは愛し合わなければ」
それとも、それは罪だと思うか?
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