赤い舞台で踊りましょう。🎲「ジャック。急に呼び出してすまなかったね、今回の調査の事だが…少々手こずっていてね…夜を使役する君に任せようと思うのだが、如何だろうか?」
ジャックと呼ばれる怪異は調査課の課長だ。
その上司であるロットは、ジャックへ仕事の資料を持ってきたのだった。
🌒「構いませんよ。夢を食べるバクの怪異ですか、バクといえば悪夢を食べて同じ夢を見させない、と言うような良い印象がある怪異ですが...」
バク。それは有名な怪異であり、噂が広がって個ではなく種族となった怪異達だ。
どの個体も性格に難があり非常にタチが悪いと言われている。
手に取った資料には、問題のあるバクの事が詳細に書かれていた。
🎲「ふむ、そのバクのことだが、問題は悪夢を食べることだけではなく...人が見ている吉夢や記憶までも喰らってしまう。と報告されている…このまま放って置く訳にはゆくまい、本部の命令により保護か状況によっては処分という選択肢も視野に入れておかなければならないと、承知しておいてくれ。」
🌒「承知致しました…。では、すぐにでも調べてみます。」
記憶や吉夢までも食べられた人間や怪異がどうなるか...容易に想像出来た。
まるで廃人のように変わり、色鮮やかな世界が見られなくなる。そんな事...あってはならない。
資料を元に、ジャックはこの依頼を承諾した。
ーーー
ーー
ー
🌒「とは言ったものの...夢の中を見ると言うのは、なかなか難しい事を仰る…。まずはそこからだな、夜の魔法から繋がる夢の入り方を…」
独り言を呟きながら悩み浮いて回る。
夜の魔法、と言っているが...具体的にどういう原理でそうなったのか、本人もあまりよく分かっていないところがある。
夜空色の魔法を生み出し、己自身が夜空または星空のような怪異。
ジャックの事は、世間では''夜の魔法使い''と呼ばれていた。その事から自身も『夜の魔法』と呼んでいる。
ジャックは異能を使い、自身の生み出した
異空間図書館に入り込んだ。
この空間は、ジャックとその本人が許可した者しか入れない特別な場所。これが彼の異能力なのだ。
誰も邪魔出来ないこの場所で、バクについて調べる事にした。
ーーー
🌒「この術式を繋げればいけそうだな…早速やってみよう……」
何時間も調べ物をし...バクやその歴史、
夢へ入る方法などを調べあげたその結果。
特定の魔法陣を描く事により、他者の夢に入る方法を見つけたジャックは、ゲートを開ける為の魔法陣を慎重に描くと歪んだゲートが開いた。
他者に干渉する魔法は大掛かりだ、失敗したら相手にも自分にも悪影響を及ぼす可能性がある。
だからこそ慎重に的確に書き込んだ。
🌒(ただ人の夢に入るだけでは、駄目だ)
ターゲットを捕捉しなくては意味が無い。
魔法陣にバクの名前を書き足し、追跡魔法も付与する。
その先からは紫色の煙が漏れ出ている。
資料にあったバクはこの先に潜んでいるのだろう
🌒「…行こう。」
警戒しながら、ジャックは慎重に
ゲートをくぐった。
ー誰かの夢の中ー
🌒「暗い空間だ…奥に誰かいる…?」
何も見えない暗黒のような世界。そしてシャボン玉のような物体が沢山浮いている空間。
そのシャボン玉には人間の記憶や思い出が描かれており、時折そのシャボン玉から楽しそうな声が聞こえる。
🌒(これは...この夢の主の記憶だ。)
無闇に触れるのは危険と判断し避けて通る。
その瞬間、奥から懇願するような声で叫んでいる人間の女性がいた。
「だ、誰かっ!!助けて…!!」
🌒「な、なんだ…!」
ジャックは、急いで声のする方へ駆けつける。
🎪「そんなに逃げて何処へ行くのやら…良い夢を見せてあげたでしょう?その対価を頂くだけですよ…さぁ、貴方のその美しい夢を頂きましょう。」
女性「…いや…いやっ…やめて!!ぁあああっ、あぁ…ッッ」
赤いスーツ姿のバクは、女性の髪を掴みあげ
じっとりと顔を眺める。
そして動けぬよう紫色の煙で身体を拘束していく。女性は暴れて逃れようとするが、バクは自身の杖で女性の瞳から出ているモヤのような物を引き摺り出す。
やがてその煙は弧を描き、シャボン玉のように変質した。それを杖にコン、と当てると杖にそのシャボン玉が吸われていく。
そして段々女性の抵抗が少なくなっていき、目から光が消えていった。
🎪「ク、クフフ…実に甘美…やはり人間の夢は格別ですねぇ…ご馳走様でした。」
🌒「お前…何をしているんだ。」
🎪「……!おやおや...おやおや!これは驚きました!私の夢に入り込める方がいらっしゃるなんて!」
その姿にジャックは動揺する。
確実に奴はイカれてる...そう考え、つい声が漏れた。
その声に反応したバクがこちらを向く、
互いに目がカチリと合い、驚いた顔をした赤いバクは女性に興味をなくし、その手を離した。
興奮した早口でジャックに詰め寄る。
🌒「これ以上近づくな…報告にあったバクだな。何故、人に危害を加えるッ!」
🎪「何故?そんなの実に簡単な話。人間の夢はとても美しくて綺麗だから…私の身体はただの悪夢の味だけでは物足りなくなってしまったのですよ」
まるで不思議な事を聞くんですね?と言った顔で、杖をクルクル回す。
🌒「バクにとって普通の夢はとても不味いと聞くが…何故そんなものを食べるんだ」
🎪「…うーむ、他のバクと違って私の味覚は変わっている。それだけで充分な理由になるでしょうか?」
楽しそうに笑って質問に答えている。
バクは綺麗な姿をしたジャックに興味津々のようだ。
🌒「要はゲテモノ食いなのだな、分かった…お前を拘束する…。これ以上人間に手を出させる訳には行かない」
空中に魔法陣を展開しジャックはその中から
夜色の鎖を飛び出させた。
そして馴れた手つきで素早く相手を拘束する。
🎪「酷い言い方…。ん、っ…キツく締め付けないでくださいな、痛いですよ?」
余裕な表情を浮かべ、ヘラヘラしていたかと思えば...拘束されている鎖に思い切り食らいついて
食べてしまう。
🌒「なっ…!!何でも食うのかお前は…!」
🎪「貴方の魔法は私の夢空間の中で発動しているもの…夢から生まれるものは、大抵どうにかなってしまう。それが私の異能力…」
拘束を解き、ごくりと飲み込んだ瞬間
ジャックのすぐ目の前に現れた。
まるで瞬間移動したかのように。
🌒「…!!僕の魔法がこんな方法で破られるのは初めてだよ…」
急いで距離を取ろうとするが、その暇もなく
手を掴んでバクはジャックに身体を寄せる。
🎪「あぁ…美しい御方、逃げないでくださいな。」
🌒「何をする!」
凄い力によって、手は振りほどけず
すぐに離れる事は出来なかった。
🎪「貴方のような美しい怪異に会えるなんて夢にも思いませんでした…そんな貴方が見る夢はきっと甘美なのでしょう…興味があります。是非とも食べてみたい…ッッ」
顔を近づけ、舌舐りをするバク。
そんな姿に身の毛がよだち、背面の床に魔法陣を作ると鋭い棘を呼び出し背後に思い切り突き刺す。
🌒「つくづく気色悪い…離れろっ!!」
🎪「…!!ゴハッ…!!?」
🌒「流石に刺されれば効くか…」
胴体を貫いた棘のダメージが通ったのか、口から血が溢れ...力が緩んだ。その瞬間を狙い、手を振り払って距離を取った。
🎪「…フ、フフ…素晴らしい…こんな素晴らしい力をこの身で味わえるなんて、ますます貴方が欲しい…。ですが、それは今ではない…今は退きますか。...クク、またお会いしましょう?夜の魔法使い」
負傷しているバクは、また楽しそうに笑って地面に杖を突き刺した。すると風に揺れる水面の如く地面に波紋が広がり、その中に彼はトプンと沈んで姿を消した。
🌒「待て…ッ!!くそっ…逃げ足の早いやつだ…」
女性「何も…何も、見えない…よ......助けて、...っ」
先程、投げ捨てられてしまった人間の女性の声が聞こえ、すぐ寄り添う。
悲しげに泣いている様だ。
その目には光がなく...色を映さないモノクロな瞳になっていた。
🌒「…そこの御方、その目を治しましょう…こちらに来ていただけますか」
女性「…ぅ…うう…」
ジャックは手を差し伸べ、女性はジャックの優しげな声を頼りに手を掴む。
彼女を宵之牙本部へ連れていき、すぐ医療班に連絡した。
ーーー
ーー
ー
その翌日ーー
🎲「被害に合った女性の目は、抜かれた夢の分をどうにか取り込み直せば元に戻るそうだ。その為には、あのバクを捕まえて治して貰うしかあるまい…」
🌒「…やはり、保護という形で捕えないといけないのですか」
🎲「その通りだ、出来そうか?」
🌒「その為には奴を夢の中から引き摺り出す必要があります…。夢を使役する力は僕の魔法があったとしても弾かれてしまうので…」
「ふむ…それならば、これを君に渡そう」
ロットはジャックに、キラキラとした
赤い宝石の付いた指輪を渡した。
🌒「これは…?」
「この指輪は、バク族を現実に引っ張り出す優れものだよ…技術開発課に頼んでおいた。...使い方は」
使い方をロットに説明してもらい、その指輪を指に嵌めた。話によると、これは技術開発課が用意した対バク用の装備らしい。
🌒「分かりました、次は奴を確実に捕獲しましょう。」
ーーー
ーー
ー
🎪「あの方の夢はどんな味がするのでしょう…そんな事を考えていたら人間では物足りなくなってしまいそうだ…フフ、フフ…」
自身の夢空間...まるで劇場のような場所に篭っていた。恍惚な笑みを浮かべ、昨日出会ったジャックのことを考えていた。
どんな味なのか、あの美しい怪異はどんな夢を見るのか...もしかしたら人間の夢よりもずっとずっと綺麗で静かな夜を味わえるかもしれない。そんな心躍る想像、妄想が尽きなかった。
その瞬間、望んでいた相手の声が聞こえた。
🌒「僕は…人間に危害を加えなければ、何でもいいけどね」
🎪「!!…フフ...毎回私のいる場所を的確に見つけてくるなんて、そんなに私がお好きなのでしょうか?」
ジャックは陣を描き...同じ手順、要領でバクの位置と夢の場所を特定していた。
そんな事は露知らず、バクは喜んで
舞台の中央からジャックの元へ近寄って行く。
🌒「勘違いしないでもらえるかな。僕は、君を捕まえる為に追いかけてきただけだよ。」
こちらも警戒心を解かぬよう、ゆっくり近づいた。互いに舞台の中心で向き合う。
🎪「…おやおや、振られてしまいました…しかしこんなに近寄って少々無防備なのでは…?」
🌒「君こそ、無防備じゃないかな」
手を取り甲に口付けをするバク。
ジャックの間合いに入った、その足元から影の鎖が出現し足元を拘束する。
🎪「おや、ソレは''ここ''では効かないとお教えしたはずですよ?」
少し呆れた顔で
指パッチンをすると鎖は外れ、バクの指示で
簡単に消されてしまった。
🌒「間合いに入れれば充分なんだよ」
すぐさま上に展開した魔法陣から、
夜空色の棘を降らせた。だがそんな事は無意味。
バクは自分の夢空間なので、杖を振るえば
物質を変化させる事が出来た。
ジャックの生み出した棘は、心地よい暖かな雨に変わったのだ。
🎪「あぁ、そんな物騒な物を降らせるなんて...危ないでしょう?」
🌒「特別にこの舞台で踊ってあげるよ。タダで夢をあげるわけないだろう?」
🎪「それもそうです!では、享楽にふけると致しましょう。そういえば、自己紹介がまだでしたね?
フフ…私は夢に巣食う悪夢と吉夢を喰らうもの、そう、バクのオリヴァーと申します。以後お見知り置きを」
くるりと大袈裟な演者の真似をし、スポットライトを浴びてオリヴァーと名乗ったバクは優雅に、そして丁寧にお辞儀をしながら挨拶をした。
🌒「宵之牙所属のジャック…君を捕まえに来た者だ」
🎪「ジャック様…えぇ、覚えておきましょう。私が欲する美しい怪異の名を」
陣を展開し、空間から飛び出した刃物のような切り裂く風を起こした。その風が当たる前にそよ風に変えてしまうオリヴァー。
やはり、ジャックの攻撃は一向に当たらない。
オリヴァーは、先程のジャックを真似し
杖を使って夜空色の鎖を召喚してみる。
🌒「…そんな、僕の真似まで出来るのか...っ!!」
🎪「く、ふふふ...こんな高度な術式まで使えるとは!」
捕まるより早くジャックは舞台の床にある影に潜り込んだ。しかしオリヴァーは杖をカンッと鳴らし、床に出来た水の波紋のようなもので
ジャックの位置を探る。
🌒「捕まえた」
探られるよりも早く影から飛び出て
オリヴァーにしがみついた、が...
🎪「フフ、フフ...この程度では…捕まりませんよ?」
どろりと自身が液体化するとそのままジャックの背後へ移動する。まるで隙がない。
🌒「…これならどう?」
面倒な空間だ、と心の中で悪態をつき
足元へ作り出した魔法陣を隠す。
それに勘づかれぬよう影の弾をオリヴァーに飛ばした。
🎪「フフフ…小洒落たシャボン玉にしか見えません。」
その弾すら簡単に杖でいなされてしまう。
🌒「…その夢の力、本当に面倒だね。」
ジャックは仮面の下の眉を顰め(しかめ)
わざと隙を作る為、大きな魔法陣を作り出そうと行動を起こす。
🎪「褒めて頂けるとは光栄です。夜の魔法使い…この力は私を無限にしてくれる素晴らしいものなのですよ」
🌒「…ぅ、ぐ…ッ…」
ジャックの足元から影を操り、逃げられぬよう無数の触手を召喚しその触手でジャックを雁字搦め(がんじがらめ)にしてしまう。捕らえた喜びの表情を隠そうともせず、オリヴァーはツカツカと足音を立ててジャックに近寄った。
🎪「実に楽しいダンスでした。これで終わりにしてしまうのは少々物足りなく感じておりますが…」
するりと、顎を撫でるオリヴァーの
その手つきが気色悪い、とジャックは感じていた。
しかし...
🌒「ふ、っ…甘い、な…ぁ...捕まったのは、わざとだよッ!!」
🎪「あぐっ!?…ゆ、だん...した…ッ!?」
近寄ってきた隙を突き、足元のトラップを発動させる。足元の鎖を強固な物にした。
たった数秒でいい。
解除されるその時間さえあれば!とオリヴァーにジャックは鋭い頭突きをかました。脳震盪でオリヴァーの夢世界は大きく揺らいだのだ。
🌒「…!(今だっ!)」
ロットから渡された指輪を光らせた。
その光によって大きな地震が起き、夢世界は崩壊を始めた。
崩れていく。
ジャックは静かに
オリヴァーを見つめながら話しかける。
🌒「…その力は凄いものだよ。だけど君自身が完璧な訳じゃない...もっと、より良い...違う使い方があるはずだよ、オリヴァー。」
ジャックを押さえつけていた触手の拘束が緩んだその瞬間。内側から触手を破壊して脱出した。
夢の崩壊に巻き込まれる前に、オリヴァーの襟元を掴み、引き摺って現実へ出ていく。
🎪「な…何を…っ」
🌒「ココ(夢)に存在する限り捕まえられない…そうだろう?君の夢の力は無限なのだから」
🎪「…クク…最初に近寄った時にその指輪の力を使わなかったのは何故でしょう?」
夢の外へ引き摺り出され、頭を押さえながら
オリヴァーはジャックへ質問をする。
🌒「最初の君はガードが硬かったでしょ、何をしても直ぐに僕の魔法を躱(かわ)していた。わざと油断させて夢世界を揺らがせるのはああするしか無かったんだ。」
🎪「…だからと言って、あんな...っ!苦しそうで卑猥な顔を見せるなんて…なんて卑怯な!!」
わざとらしく、シクシクと泣き真似をしながら
ジャックを煽った。
まだそんな減らず口が叩けるのか、と鳥肌が立つ。
🌒「してないッッ!!!いちいち発言が気持ち悪いな…!とにかく、これで君は何も出来ない。大人しく降参することだ」
🎪「…ハァ…そうですね、現実に戻されては何もできません。降参しましょう。」
🌒「…聞き分けのいい子だね。とりあえず逃げないようにこれ付けさせて貰うからね。」
🎪「クフフ...全く、貴方ともう少し遊びたかったというのに…」
ぺたりとオリヴァーの顔に貼られた札は、異能を抑える効果を持つ呪符のようなもの...ジャックの呪い(まじない)が込められた手作りだ。
オリヴァーは不貞腐れ、まるで子供みたいに
退屈な顔をした。
🌒「そんな顔してもダメ、反省する気あるのか…?」
🎪「…反省してますよ」
嘘だ。見ればすぐ分かる。
横を向いて目を合わせない。
明らかに反省の色が見えないのだ。
🌒「困った奴だな…本部から処分命令が下されなかっただけでも有難いと思ってくれないと…」
そしてジャックは、本部へ連絡と報告をして
オリヴァーを引き渡す。
これで事件は一件落着だ。
例の人間の女性の夢は、強制的にオリヴァーから引き抜かれる。夢の一部を使い、宵之牙の医療班に目を治してもらったそうだ。
...ただ、大きく食べられた分は、治せなかったようで少し記憶に欠陥があるかもしれない。
彼女にとって、それは怪異に襲われた傷となってしまった。
その後、更生施設の装置によって
彼女は怪異に出会った記憶を消され
何事も無かったかのように人間界に帰って行った。と報告を受けた。
ーーー
ー数日後ー
🎲「この間はご苦労だった、あの指輪は役に立っただろう。」
🌒「夢の波長を乱すものだったのですね…あれが無ければ逃げられていたでしょう、ロットさんの判断があったおかげです。」
🎲「だとしても、この調査を1人でこなすとは流石だな。ジャック…」
🌒「お褒めに預かり光栄です。」
🎲「その功績を称え、お前の課に新たな人員を増やそうと思ってな。ジャック直属の補佐として…なんというか凄く言いづらいのだが…」
🎪「私めが、ジャック様の補佐を完璧に努めましょう!」
ピカピカとスッキリした顔で
近寄るオリヴァーが
ロットの背後から出てきた。
🌒「何でこいつが!!?本部に引き渡されたのではっ!!」
🎲「彼自身には喰らった夢を返し、更生施設での教育もちゃんと受けてもらった。
…そこで意外な才能が発揮されてな、判断力や多彩な技術、夢世界での無限に世界を操れる異能は他のバクに比べたらかなり優秀で...
味方として引き込めば大きな力になると上層部からのご判断だ…。
そこで、だ…こいつの力を抑えられるのはジャックしかいないと。本部からの命令で、このバクを傍で監視し、悪さをしないように見張っていてくれないか?」
🎪「もう悪さはしないと決めましたし…。何より貴方様と共にいた方が楽しめると判断したので、御安心を」
胡散臭い笑みを浮かべていて全く信用ならなさそうだが、上からの命令というのならば従うしかない...と、ジャックは頭を抱えた。
🌒「分かりました…が、全然安心出来ませんね…」
🎪「貴方様のご命令に従いますよ、我が主。
末永く宜しくお願い致しますね」
跪き、頭を下げて忠誠を誓う。
そのオリヴァーの仕草は真剣のようだ。
🌒「勝手に夢を食べたら、今度は消滅させるからな…」
ジャックは、オリヴァーの存在を
渋々受け入れることになったのだった。
ーーー
ー数年後ー
🖥「何その話、お前やべぇやつじゃん…」
サイバー課にいるテレビ頭のメカ族。
レルムが休憩時間中、調査課に遊びに来ていた時にオリヴァーから昔話を聞いていたのだ。
🎪「おや酷い、今は全く何もしてませんよ。そんな話もありまして今のジャック様のお傍に仕えているのです。」
🖥「ジャックさんも気が気では無かっただろうな…可哀想に」
相変わらずの胡散臭いスマイル。
こいつの顔を見ていると本当ムカつくな...と
レルムは考えるが心の内に留めておいた。
🎪「あの頃の本部も大胆な事をしますよね、私をジャック様の傍に置いて監視するなんて」
🖥「お前の、その顔の札なんだろう?と思ったけど、ジャックさんの術式が込められた札だったのか…」
🎪「えぇまぁ…今はそれほど気にもなりませんが、約束を破った場合のみ...直ぐにバレてしまう仕組みに変えてあります」
🌒「監視自体はまだ終わってないからね…けど、まぁ今は信頼しているよ、任務も難なくこなしてくれるし…変な事もされなかったし…まぁ万が一があるから付けててもらってるけどね」
🖥「びっっくりした!!ジャックさん何時からそこに!」
いつの間にか背後にいた
ジャックに驚き、肩が飛び上がる。
何時から話を聞いていたのだろうか...とレルムは心臓がドキドキしていた。
🎪「10分ほど前からいらっしゃってましたよ」
🖥「気づいてたのかよ!」
最初に言えよ!!と思わず
レルムは心の中で突っ込んだ。
🌒「あの時、オリヴァーの興味が人間から僕に移ってくれた事から、人間に危害を加えなくなったんだな、と思う。...それに夜は何だかんだ悪夢を見なくて快適だし」
🎪「今ではジャック様を襲う悪夢が美味なので、win-winの関係を築けています」
🖥「変な関係性ですね…」
🎪「ハッ、もしかしたらこれは運命だったのかも知れませんね!」
きゃっ、と乙女のような反応をオリヴァーは見せるが...いつもの事なので、ジャックにさらっと流されてしまった。
🌒「…さぁね、休憩時間終わるから。そろそろ戻ってね」
🎪「フフ...はい、我が主。」
🖥「はーい…」
今日も宵之牙での職務は続く。
悪事を働く怪異がいる限り
この組織は今日も働き続けるのであった。