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    AYAPersonifica

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    AYAPersonifica

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    自宅剣弓槍の何気ない日常の会話。
    ちょいシリアス……かも?

    量産型の存在名義姿は変わらなくても



    心が違っていたら



    それは別の存在になってしまうのだろうか……?










    「ユミンパ、ヤリドヴィッヒ。テセウスの船って知ってるか?」

    「テセウスの船?そんな船なんか聞いた事ないニャ」

    「いや、船では無……船といえば船か?」

    「オレは知ってるぜ。確か……同一性に関する思考実験だったか」

    「そうだ、流石だな。馬鹿猫には最初から期待していなかったが」

    「ニャ、ニャンだとぉ〜〜誰が馬鹿猫ニャオイラより年下のオマエにバカなんて言われたくニャい」

    「煩いぞ、事実だから認めろよ」

    「ニャ…………ま、まぁいいニャ。で、それがどうしたニャ?オイラにも分かるように説明してくれニャ」

    「テセウスの船っていうのは、簡単に言うと『パーツが全て置き換わった時、それは同一と言えるのか』というパラドックス的な思考実験だ」

    「パラドックス……?どういう意味ニャ?」

    「ここに二隻の船があるとして、片方は元々あった船。片方は朽ちていった木材を置き換えて作った船。どちらも全く同じ形をし、全く同じ色をしていたら、お前はその船が同じ物であると言えるか?」

    「そんなの簡単ニャ。だって全く同じ形や色なんだから同じ物に決まってるニャ」

    「でもそれは本当に『全く』同じなのか?形や色は一緒だが、朽ちていき古いパーツを新しいパーツに置き換えたのだから『構成物質』は全く違うものとなっている訳だ」

    「ん、うニャ〜……確かにそれなら全く同じ物とは言えニャいニャ……つまり答えはノーなのニャ?」

    「それは『同一』という言葉をどう捉えるかによるんだ。テセウスの船とは、ある物体においてそれを構成するパーツが全て置き換えられたとき、過去のそれと現在のそれは同一だと言えるのか否かという哲学的問題を指す」

    「ここから派生した問題として、置き換えられた古いパーツを集めて組み立てた場合、元の船と再度組み立てられた船のどちらが本物なのかという話もあったな」

    「うニャ……オイラ、頭がこんがらがってきたニャ……」

    「一つの存在から置き換わったパーツ一つ一つに個性があり、それが全て入れ替わってしまったのなら、『テセウスの船』はオリジナルと同一であるとは言えないだろという話だ」

    「あ、ニャるほど……確かにちゃんと個性があったもののパーツが全部新しくなっちゃったら、それは同じじゃないかもしれないニャ」

    「そういう事だ。まぁ、結局このパラドックスの答えは未だに出されていない。だから今言った話は『テセウスの船』の一例でしかないんだがな」

    「……で、その話が今なんの関係があるんだ?」

    「いや、実をいうと少しばかり……不安な事があって」

    「不安?オマエが?」

    「ああ……私達は様々なワールドを渡り歩き征服しては撤退し、を繰り返してきた。それはあくまで我らの王の求める世界ではなかったからであり、敗北を喫するほどの相手に出会った事は無かった」

    「確かに突撃部隊担当で一番手のお前と親衛隊がいれば大抵の奴には勝てたしな」

    「……ニャ?オマエまさか……次の世界で負けるかもしれないって思ってるニャ?」

    「……勝つつもりでいるさ。だが、もし万が一にも負けてしまったら……私達はどうなる?この身体も記憶も全て替えの利くもの、作ろうと思えば幾らでも量産できる」

    「そ、それは……そうかもしれないが、カジオー様がそんな事をする訳が無いだろう?」

    「だが……私の全てが置き換えられてしまったら、それはもはや私ではない。私は私であるが、私の証明が出来ない」

    「オマエ……一体どうしたんだニャ?そんならしくない事を言うなんて……」

    「武器は一度壊れれば二度と同じものは作れない。私という存在そのものが曖昧になり揺らいでいき……もし私が私で無くなった時、仲間が受け入れてくれるのかどうか……それが怖い」

    「……なるほど、だから『テセウスの船』か」

    「ああ。もし私が私の証明が出来なくなって、私で無くなったら……お前達はどうする?」

    「どうもしニャいニャ」

    「え?」

    「別にオマエがオマエで無くなっても、オイラ達にとってはオマエは仲間だニャ。それは変わらないニャ」

    「……でも、それは今ここにいる私が私であるからだろう?その私を否定されたら……」

    「……じゃあ逆に聞くけどよ。オマエはオレ達が先に壊れて量産型に置き換えられたら他人として振る舞うのか?」

    「そ……そんな事はしない私はお前達を大切に思って……」

    「キキキ、そうだろう?姿形が変わっても……心が同じならオレはお前を『ケンゾール』という存在だと認識する。もちろんユミンパや他の奴らもな」

    「……!!」

    「オマエは『ケンゾール』なんだニャ。だからそんなくだらん事で悩むんじゃねえニャ……オマエがオマエじゃなくなったらオイラ達が叩き直してやるから安心しろニャ」

    「……そうだな、馬鹿猫に諭されるとは思わなかったよ」

    「ニャ!?まだ言うのニャ!?」

    「はは、冗談だ……私が私でなくなった時、お前達が受け入れてくれるのか不安だった。だが、そんな心配などいらなかったな」

    「……なんかいい話っぽくなってるけど結局『テセウスの船』はどういう事なのか分からなくなってきたニャ……」

    「解決した今、無理に理解する必要は無いだろ。そもそもこれまでに多くの世界を渡り歩き勝利を収めてきたお前が負ける訳がないだろ」

    「ふふ、そうだな……私は今一度自分の存在を見つめ直し、私なりの答えを探してみる事にする」

    「ニャ!そうと決まれば早速戦力強化の特訓するニャ!」

    「急だな……だがその前に」

    「ニャ?」

    「腹減ったな……」

    「……言われてみればオイラもニャ」

    「……まずは腹ごしらえするか。馬鹿なことを聞いてきた罰として、オレの水蒸気爆発三連発も特訓のプランに組み込んでやるよ」

    「は、はあっ勘弁してくれ、冗談抜きで死ぬだろ」

    「オマエのためだと思って我慢するんだニャ」

    「く……分かった、だがその後お前達二人まとめて焼き尽くしてやるからな」

    「ニャハハッ、できるもんならやってみろってもんだニャ〜」

    「キキキキキ、威勢がいい奴を返り討ちにするのは面白いからな、楽しくなりそうだ」

    「この……っ子供扱いするなよっ」








    ―――――――――――――。


    ―――――――。


    ―――。






    ……夢を、見ている。

    赤い髪を逆立てた派手な色をした弓のような怪物と、赤いマントに槍を持った赤髭の男。
    私と同じ姿をした誰かが、そいつらと楽しそうに話しているのだ。

    ……なんだろう、この感覚は。

    水面に映る自分を覗き込んでいるような……。


    ……私は、誰だ?


    微睡みの海でごぽりと浮かんだ泡沫は、そのまま弾けて消えた。
    閉じていた瞼を開き、“少年”は黒く濁った瞳で虚空を見つめた。





    「……今のは一体……」






    end.
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    かほる(輝海)

    DONEシティーハンター
    冴羽獠×槇村香
    原作レベルでも原作以上でも。

    例のマフラーについての捏造話。
    『……これ、お前にやるよ』
     遡ること数週間前、あたしはリビングで突然、獠に紙袋を押し付けられた。中を覗くと、黄色いマフラーが入っていた。これってまさか、獠からのプレゼント……? でも、その日はあたしの誕生日でもなければ、クリスマスでもなかった。
    『どうしたの、これ……』
    『キャバレーの福引で当たったんだ。どうせ俺は使わねぇしな。気に入らないなら捨ててくれ』
     獠はそう言い残して、リビングを出ていった。

     あたしのために選んでくれたわけでもなく、邪魔なものを押し付けられただけ。ほんの数十秒前までは、喜びで満ちていたあたしの心が、急激に冷えていった。それでも、獠がくれたものだし、捨てるのも忍びなく……。なんだかんだ言って、獠があたしへ初めてくれたプレゼントでもあったし、あたしはそのマフラーを大切に使うことにした。

     しばらくして、あたしはそのマフラーを身に着け、キャバレーへツケを払いに行った。ママへ直接マフラーのお礼を伝えたら、怪訝な顔をされた。
    『そんな福引、うちの店ではやってないわよ。よその店の間違いじゃない……?』
     いや、聞き間違いは無いはずで、獠は確かにここの店だと言ってい 1560