九話進捗2「いか、ないと…!」
痩せきった腕をついて重い体でベッドから這い出そうと動き出す。まだ動くなと押し留めようとする医者たちを鈍い腕で振り払って這うようにベッドから落下するが、打ち付けた身体の痛みなど二の次だ。そんなことより早くあの子の元へ行かないと!
あの子が泣いてる。
早く行って、抱きしめて、涙を拭ってあげないと。
「……はぁ。トニー屋、獣の状態で大人二人運べるか?」
「出来るぞ」
軽い荷物のように抱えられて、大きなトナカイの背に乗せられた。後ろには支えるためか目付きの悪い方の医者が腹に手を回して同乗している。
「いいか。我が儘を聞くのはコレっきりだ。上でステラたちと会ったら後は大人しく医者の言う事を聞いてもらうぞ」
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