無題*プロローグ*
「実は今日、告白されたんだ」
え、と零れた声は静かな図書室の空気にあっという間に呑み込まれて行った。
ずっと彼女の声が耳に入りながらも動き続けていた筆は、この一言でいとも簡単に止まってしまい、そのままゆっくりと彼女の方を振り向く。目の前にあるのは少し悲しそうに見つめる蜂蜜色の瞳。それが窓から差し込む光をゆらゆらと反射しながら、ただ、私のことを見つめていた。
意味が分からずに、さっき聞いた言葉を頭の中で何度も往復する。告白されたんだ、その意味を咀嚼するように何度も繰り返すと、次第に私の眉間にシワがより始めた。
「告、白?」
「そうなんだ、同じクラスの男の子。そんなに仲良いとか思ってなかったんだけどなぁ」
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