太陽の杯【カルヨダ】 誰のどんな望みでも叶える魔法の杯。何かと当国の政治に干渉してくる目障りな隣国の王子はそんなお伽話にご執心らしい。
ある筋から半信半疑で取り寄せた古い学術書に書いてあったのは、今時のドラマはおろか、子ども向けのアニメーションでも耳にしないような呪文である。聖遺物を添え、魔法陣を描いて呪文を唱えると、偉人をしもべとしてこの世に呼び出せるという。
そうして英雄同士を戦わせ、勝者のみ願望を達せられるとして、たかが人間一人が現代の武器や兵力に敵うとは到底思えない。半信半疑で取り寄せた聖遺物である黄金の耳輪を眺めながら、怪しげな術師に書かせた魔法陣の中央に座る。
「馬鹿げた話だ。こんなものを本気で信じている奴に、わし様の国が掻き乱されていると思うと虫唾が走る」
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