寝たふり「………さん、ぎゆうさん、義勇さん」
名前を呼ばれた気がして、ゆっくりと意識が浮上した。とは言え、眠気はまだ健在で、重たいまぶたは光を受ける気がないらしい。
それでも覚醒した脳は、自然と状況整理を始めてくれる。ここはどこで、自分は何をしていたんだったか…?
今日は中学の剣道部が休みだから、ランドセル二年目になった俺の小さな友人・炭治郎が遊びに来るんだ。それでいつもの休日よりも早めに起きたんだった。眠い目をこすりながら起き上がって、今日の為に準備しておいた青のストライプのシャツが視界に入って、思わず頬が緩んだのだ。
少し青みがかった俺の瞳が好きらしい炭治郎は、俺が青を身に付けると似合うと褒めてくれる。でも、初めてそのシャツを着たときだけは違った。出迎えた俺を見上げたまま絶句。顔を真っ赤にして、ぽかんと口を開けたまま玄関で固まってしまった。そして、熱中症にでもなったのかと心配してオロオロする俺に、意を決したように小さな手を握りしめて言った。
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