抱き上げる/おやすみ/嵐「よう、プリンセス。目の下に隈できてんぞ」
「ああ王子か久しぶり、大丈夫今日はこのあとすぐ帰れそうだから」
会うなりそんなロイヤルな者同士のような挨拶を交わす。しかし私たちはどちらも正当なそれではない。王子は実際いいとこのお坊ちゃんだったようだけれど私の方は完全に無関係である。
「うちの姫さんはまた忙しそうにしてんな」
「そういう王子こそガープさんに連れられての遠征から帰ったばかりでしょ」
お互いにそのあだ名に似合わずすでに退職届を軍に提出済みという立場にあるのだからおかしな話だといつぞや同期に笑われたことがある。最前線に立つ王子や姫がいてたまるかと。しかしそんなあだ名をつけて呼ぶようになったのは周りにいた彼らの方なのだから文句はこちらが言いたいくらいである。
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