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    重なる想いが蜜と成り
    展示作品です。

    怪盗×刑事パロディです。

    Love Steal怪盗×刑事パロです。怪盗の仕事はヤタガラスと仮面マスクを足して2で割った感じです。


    レイ逆の例の衣装のイメージで。







    『怪盗フェニックスライト、鐘鳥商会に盗みの予告!』

    新聞の一面を賑わせているのは、最近現れた怪盗、フェニックスライトである。
    闇夜の中に颯爽と現れ、悪徳会社に入り込み、不正の証拠を奪い匿名で世間に公開したり、盗賊の家やアジトに忍び込み、盗まれた美術品や金品を取り戻し、元の持ち主に戻すという正に義賊のような怪盗である。
    それを見てワナワナと新聞を持つ手を震わせる一人の男がいた。
    「おはようございます!御剣刑事!」
    「……糸鋸刑事か……」
    美しいアッシュグレーの髪をした刑事、御剣怜侍だった。
    その光景を気にせずに話しかけてきたのは後輩の糸鋸刑事である。
    「あ、それ怪盗フェニックスライトの記事ッスよね?」
    「ああ…全く、忌々しい…!」
    怪盗フェニックスライト。その存在が初めて出た時、担当刑事となったのが御剣だった。だがしかし、当人の犯行現場は疎か、その姿さえ見せぬ間に取り逃してしまい、警察の信用はメディアにボロボロに書かれる始末だった。
    そういう訳で、御剣にとっては因縁の相手なのだ。フェニックスライトの担当を買って出て、今度こそは尻尾を掴んでやると意気込みながら、毎回失敗しているのだ。
    「…ちょっと外に出てくる」
    「いってらっしゃいッス!」
    こんな気持ちでは仕事に集中することが出来ない。気分を一新しようと外に出た。
    「はあ…」
    外の空気を吸っても気分は晴れない。かつての父のように立派な刑事になるのが夢だったのに、このような体たらくでは父に顔向けが出来ない。
    そう溜息を零すと、目の前を何かが横切った。
    「ム?犬…か…?」
    「待てー!」
    走っていった犬を追いかける一人の男の姿があった。
    「よし!捕まえ…ああー!」
    犬を捕まえたと思ったらすっとよけられてしまい、男は地面にそのまま前のめりに倒れた。
    「…貴様、何をしているのだ」
    「痛ぇ…あれ、御剣じゃん」
    顔面を摩って起き上がったのは、御剣の幼馴染みの成歩堂龍一だった。
    「何って…飼い犬が逃げたから捕まえて欲しいっていう依頼が来たから…」
    「それにしては逃げられていたようだが?」
    「だってすばしっこいし…」
    「成歩堂さーん!捕まえましたよー!」
    遠くで一人の青年が犬を抱き上げて手を振っている。
    「ありがとう王泥喜くーん!」
    部下の青年、王泥喜が先にこなしたようだ。これでは上司としての面目が保てんだろう、と御剣は呆れた。
    成歩堂はなんでも事務所という様々な依頼を請け負う事務所の所長をしている。このような迷い犬探しから、果ては芸能系の仕事もしているらしい。
    「…はあ…」
    「うん?どうしたの御剣」
    思わず零した溜息に、目敏い幼馴染みは見逃すことは無かった。
    「いや…今日の新聞、君は見たかね」
    「え…ああ、怪盗の予告状だっけ。そっか、御剣あの怪盗の担当してたんだっけか」
    あの怪盗にしてやられて以来、御剣はよく成歩堂に愚痴を零していた。
    「ああ…今度こそ奴の姿を拝んでやる…!」
    ぎゅうと御剣の拳が握られる。
    「…まあ、あまり思い詰めるなよ。じゃ、ぼく犬を依頼人の所に連れていくから」
    「うム…ではな」
    御剣と別れた成歩堂は、王泥喜と一緒に犬を依頼人の元に連れていった。
    全く呑気な男だ。と呆れる御剣だったが、成歩堂は彼が気を使うことなく接することが出来る数少ない人間の一人なのだ。少しリラックス出来たのか、外に出てきた時よりスッキリした気分になっていた。


    予告当日。
    商会の周りには沢山の警官隊、警備ヘリとマスコミのヘリがいた。そして、フェニックスライトのファンであろう野次馬が沢山来ていた。
    「相変わらず凄い人集りッスねー…」
    「フン、あの義賊が公開した情報でいくつもの会社の不正が暴かれたからな。それに、奪われて諦めていた宝物が帰ってくる…。その影で泣き寝入りしていた人間にとっては正に救世主なんだろう」
    面白くなさそうに御剣が呟く。
    持ち場を糸鋸に任せ、御剣はフェニックスライトが狙っているであろう物が保管されている場所に向かった。
    そこには既に二人の警官が警備として立っていた。
    「ご苦労様です!」
    「うム、ご苦労」
    警官の間には七色に輝く宝石がショーケースに飾られていた。周りには赤外線センサーが張り巡らされている。
    この宝石は鐘鳥商会の会長が譲り受けた物だと言っていたが…。フェニックスライトの流儀からして、不当に奪われた物なのだろう。
    だが、警察には奪われたものという証拠が無いためそちらを捕らえることは出来ない。
    御剣は懐の懐中時計で予告の時間まであと少しであることを確認する。もう一度宝石を見ると、なんと宝石がいきなり震え出した。
    「な、何だッ!?」
    警備員もビックリしてショーケースの中を覗き込む。すると宝石がポンっと煙を立てて破裂した。宝石があった場所には、「七色の宝石は確かに頂いた」というメッセージカードと、一枚の青い羽が置かれていた。
    青い羽はフェニックスライトのトレードマークだ。仕事を遂行した後はこの羽を添えるのが奴の決まりらしい。
    という事は。
    「直ぐに包囲網を張れ!」
    「はっ、はい!」
    やられた。恐らくはこの中に置かれる前から盗まれていたに違いない。
    すると外の野次馬が騒ぎ出した。商会の屋上にフェニックスライトがいると口々に言い出したのだ。
    御剣は屋上へと向かう階段を二、三段飛ばしで上り出した。
    (今度こそ…!貴様を捕らえてやる…!)

    息を乱しながら屋上の扉を開けた。すると、そこにいたのは燕尾服と風で翻る黒いマントに身を包んだ男が満月の光を浴びながら背を向けて立っていた。
    御剣は一瞬面食らったが、拳銃を構えて無線を繋げた。
    「…貴様がフェニックスライトか」
    男はゆったりとした動作でこちらを向く。その顔は黒いマスカレードマスクで覆われていて、素顔は分からない。
    後ろに撫でつけられた黒髪が風にかすかに靡いている。
    「…これはこれは、御剣怜侍刑事殿。お初にお目にかかります」
    男は恭しく、そして芝居がかったようなお辞儀をする。それが余計御剣の癪に障る。
    「…私を揶揄っているのか?」
    「まさか!…何回もこうして御足労頂いているのですから、御挨拶をと思いまして…」
    「フン、要らぬ気遣いだ。もうこの建物からは逃げられない。観念したまえ」
    御剣はジリジリと拳銃を構えたまま近づく。だが男はただ薄く笑みを浮かべているだけだ。それが御剣には気味悪く感じた。
    (おかしい。追い込んでいるのはこちらの筈なのに…)
    そう違和感を感じていると、まるで世間話でもするかのように男はぽつりと話し出した。
    「今日は月が綺麗ですね…そう思いませんか?」
    御剣は答えない。いくら時間稼ぎをしても無駄だ。直ぐに無線で情報を得た警官が来るぞと心の中でほくそ笑んでいた。
    すると、男が体勢を低くして走り出し、御剣の直ぐ目の前まで近付いた。
    「なっ…!?」
    御剣は思わず構えていた拳銃を持つ手を緩めてしまった。
    その瞬間、低い声が脳内を駆け巡った。
    「刑事さん…ここにはぼくと貴方の二人だけだ…無粋な真似は止めてほしいな…」
    耳元で囁かれた、と気付いた時にはそのマスクの奥に見える闇色の瞳に魅入られてしまっていた。
    白手袋をつけた男の左手が拳銃をゆっくりと下ろさせる。それに抵抗出来ないまま、男の顔が近付いてきた。

    そのまま、深く口付けられた。

    「っ…!?」
    御剣は何が起こったのか理解するのに数秒かかった。だが気付いた時には男は離れていった。
    顔を真っ赤にして固まる御剣を見て、男はくくっと笑った。
    「…意外と可愛らしいんだな、刑事さん」
    「な!…き、貴様!!」
    「それでは、今宵はここまで…御機嫌よう、御剣刑事?」
    男はマントを翻し、御剣の視界から姿を消した。
    御剣はそれをぼんやりと見届けた後、へなへなと腰が抜けたように座り込んでしまった。
    「御剣刑事ー!大丈夫ッスか!?」
    どたどたと糸鋸刑事が複数の警官をつれて屋上にやってきた。
    その音を聞いてはっと我に返った御剣は、遅い!と一喝した。
    「無線を繋げていただろう!何故もっと早く来なかったのだ!」
    「そ、それが…無線が全て雑音ばかりになってたッス…」
    「な、何!?」
    御剣が無線機を取り出して耳を当てるが、確かに雑音ばかりで人の声は一切聞こえなかった。
    (まさか、あいつが…!?)
    あの男、いやフェニックスライトが何かをしたのだ。そうでないとこんなに一斉に無線が使い物にならなくなるなど有り得ない。
    ギリギリと悔しさで無線を握っていると、糸鋸刑事がとある事に気が付いた。
    「あれ?御剣刑事、胸のポケットに何か入ってるッスよ?」
    それを聞いた御剣が胸ポケットを探ると、何か角張ったものが入っていた。
    それを取り出した御剣は硬直した。

    入っていたものは、青い羽が添えられていたメッセージカード、そして。


    『貴方の心は頂きました ーーーフェニックスライト』


    御剣は顔を赤くして震え出し、心の底から叫び声を上げた。

    「許さんぞフェニックスライトオォォ!!!!」





    鐘鳥商会から近い所にある人気の無い公園の茂みで、男、フェニックスライトはいた。マントは折り畳み、燕尾服は上着だけを脱いで茂みに用意していたバッグに突っ込んだ。
    マスカレードマスクを外した男の顔は、赤くなっていた。
    「はあ〜…あんな事するつもりじゃ無かったんだけどな…」
    マスクもバッグに入れ、男は何食わぬ顔をして公園の外に止まっている車の後ろに乗り込んだ。

    「お疲れ様です、成歩堂さん」
    「私のジャミング、バッチリ効いてたみたいですね!」
    「ああ…二人とも、ありがとう」

    男、成歩堂は赤い顔を誤魔化すように後ろにもたれかかった。

    運転席には王泥喜と、助手席には心音がいた。

    そう、成歩堂なんでも事務所のメンバーは怪盗フェニックスライトの一味なのである。
    そして、怪盗フェニックスライトの正体は所長の成歩堂龍一であった。

    王泥喜が小さなケースに入れた七色の宝石を成歩堂に見せる。
    「この通り、今回のミッションも遂行です!」
    「やりましたね!王泥喜センパイ!」
    「今回は成歩堂さん…フェニックスライトさんが警察の目を引き付けてくれましたからね!」
    今回の作戦は、成歩堂と王泥喜が警備員に変装して行った。
    成歩堂が宝石に見せかけた時限装置をショーケースに飾り、宝石が破裂する時間までにマントと燕尾服に着替えて屋上で待機し、野次馬という名の目撃者に騒いでもらい、警察の目を全て屋上に向けさせる。
    その間に王泥喜が本物の宝石を盗み出すという作戦だった。
    尚その前後に、心音が特製の装置を使って商会内の電子機器を全てジャミングしていた為、監視カメラや無線等も砂嵐や雑音になり、犯行の瞬間は見えない事になる。
    「後はこの宝石を元の持ち主に返せば…オールクリアです!」
    ビシっとVサインを決める心音。
    そろそろ行こう、と王泥喜が車を走らせる。
    その間、成歩堂は窓から鐘鳥商会を見ながら溜め息を吐いた。

    (まだアイツはあそこにいるんだろうな…)

    あの時、少し怯ませてから屋上から去るつもりだった。
    だが、近付いた時に見た薄い色素の瞳が、いつも会った時に見ていた筈のその瞳に。

    吸い寄せられてしまったのだ。

    思わずあのメッセージカードを彼のポケットに入れてしまった。今使う予定ではなかったのに。
    (あー…どんな顔して会えるかな…)
    せめて部下達には知られないようにと、誤魔化すように外を見ていた。






    ーーーーー






    あれから数日後。
    成歩堂は御剣に誘われて居酒屋の個室で飲んでいた。
    因みにもう一人の幼馴染みである矢張も誘ったらしいが、恋人を追い掛けに海外に行ったらしい。
    成歩堂はアイツらしいなと笑いながら、その話を酒の肴の一部にしていた。
    だが、御剣は終始荒れていた。酒が入る前から荒れていたが、飲んでからは更に荒れた。
    「うぅう゛〜許さんぞ…ヤツめぇ…」
    ビールを飲み干しながら恨み節を吐いていた。その度に何があったんだよ、と成歩堂は聞いていたが、何も無い!と力強く返されていた。
    暫く御剣の愚痴をうんうんと成歩堂は聞いていたが、御剣の言葉に力が無くなってきていた。
    「眠い?」
    「ム…」
    散々愚痴って疲れたのか、御剣はウトウトしていた。
    すると、ボソボソと先程まで話さなかった事を喋りだした。
    「……成歩堂…君は…キス、された事があるか…」
    いきなりの言葉に成歩堂は飲んでいたビールでむせかけた。
    「えっ?ま、まあ…付き合ってた時とかなら…」
    「付き合う…そうだよな…」
    御剣は腕枕をして机に突っ伏しながらも言葉を続ける。
    「…実は、その…この間、されたのだよ…」
    「…キスを?」
    「…う、ム…そうだ…」
    へえ、と冷静を装った振りをしながら恐る恐る尋ねる。
    「で、でも付き合ってる訳じゃ…ないんだよね?…嫌だったの?」
    「……じゃない」
    「え?」
    「い、嫌じゃ…なかった…だから、困っているのだよ…あの男は………私の…………を……」
    言葉尻が小さくなり、暫くするとすうすうと寝息が聞こえてきた。
    成歩堂は酒のせいなのか分からない赤い顔で悶絶していた。
    「…マジか…」
    成歩堂は以前より御剣の事を懸想していた。
    だから、あの時フェニックスライトとして対峙した時のキスも、予定外ではあったがしたいと思ったからしたのだ。
    てっきり嫌がられたと思ったが…。
    「嫌じゃない…か…それは、どうしてかな…」
    まさか、自分に嫉妬する日が来るとは思っても見なかった。
    “フェニックスライト”としての自分にキスされて嫌じゃなかったのか。“成歩堂龍一”としての自分からキスされたらどういう感想を持つのであろうか。
    「…いつか、全てを教えないといけない日が来たら…どう思うかな、お前は」
    裏切られた、と思うのだろうか。彼とはもう二度とこんな風に話す事は出来なくなるのだろうか。それとも…。
    さらりと成歩堂は眠る御剣の髪を撫でた。
    「…けれど、ぼくにもやらなければならない事がある…それまでは…」
    成歩堂は御剣に近付いて顔を寄せる。
    「こうして…触れるだけでも許して欲しいな…」
    そのまま、御剣の頬に軽く口付けた。

    この短期間で二度も同じ男からキスをされた張本人は、二度目の事は知る由も無いまま、穏やかな顔で眠っていた。







    END











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