星と星を繋ぐ手白い壁に囲まれたメインルームは、空調の低い唸りと書類の紙音だけで満たされていた。
ニコルは机の端で端末を操作しながら、横目で反対側のソファに腰をかけてタブレット端末を操作するシルヴィアを見る。
「.....設備点検の要請書を午前中までに回すように、との事だ。君が昨日まとめていたEGO抽出要請リストも添付してくれ。」
「分かった。」
「よろしく頼むよ。」
静かな時間がしばらく続く。
新規幻想体のエンサイクロペディアの件、収容室の点検予定、換気設備の再調整.....業務的なの会話を交わしながら、ニコルの指先はどこか落ち着かず、提出書類を留めるクリップをカチカチ鳴らす。
ふいにその指が止まる。
ニコルはゆっくりと顔を上げ、まるで日常会話をするような自然なトーンで問いかけた。
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