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    ザクロア

    ザクロアです

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    ザクロア

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    グラアポ(🍤スキンネタ)
    団長とアポロニアさん付き合ってる前提。若干お下品要素あり(書きたいとこだけ書いたので唐突に終わります)

    🍤エビフライデーナイトフィーバー🍤「団長さん! 折り入って頼みがあるんだけれど聞いてもらえるわね?」
     
     フライデーの第一声に、僕は完全に圧倒されてしまっていた。突然部屋に来て欲しいと呼び出されたかと思えばこれだ。疑問を差し挟む隙もなく、彼女はどこからか楕円形のケースを取りだすと高らかに声を張り上げた。
    「実はプレミアムフライデーのさらなる普及を図るために、こんなモノを用意してみたの!」
     そう言って彼女は手にしたケースを開いて見せた……僕は詳しくないから気付けなかったけど、それは眼鏡ケースだったらしい。デザインは以前フライデーから渡された対巨大生物用コスチュームに付属していた眼鏡に似ている。
    「その名もエモーショナル・ビューワ・フォー・ラヴァーズ・イシュー!」
    「エモ……何?」
     思わず聞き返してしまったのに、フライデーは構わず語り続ける。
    「正にストレス社会を生きる現代の恋人達にとって必須級の超スペシャルアイテム! なんとこれを身につけるだけで、相手の考えていることを理解することができるスグレモノなの!」
     彼女はケースから眼鏡を取り出すと、「早速使ってみて頂戴!」と自信たっぷりに差し出してきた。相変わらずテンションが高い。
     あまりにも早口な説明だったので半分も聞き取れなかったけど、今サラッと凄いことを言っていた気がする。相手の心を読み取れるとか何とか。パッと見は普通の眼鏡だけど……。
     無視すると余計にややこしいことになりそうなので、言われるがままに眼鏡をかけた。
     度が入っていないし、しばらく周りを見回してみたが特におかしなものが視界に映り込むこともない。
    「これ、普通の伊達眼鏡じゃない?」
    「ノンノン! 右のところにボタンが付いているでしょう?」
     指示された部分に触れてみると、確かに右側の弦にスライド式のスイッチが付いている。
    「間違ってかける人がいないように、外すと自動で電源がオフになる仕様なの」
     やっていることは滅茶苦茶なのに、細かい安全管理にまで気をつかっているらしい。なんだろう。こういうチグハグなところが余計にカオスっぷりを引き立たせている感じがするんだよな。
     僕は半信半疑でスイッチを入れた。
    《さあ、どうかしら!? この素晴らしい発明品が本物だと分かってさぞ驚いていることでしょうね!》
    「え……ッ!?」
     突然脳に直接フライデーの声が響いてきて、僕は思わず眼鏡を外して投げそうになった。 彼女は口を閉じたまま、満面の笑みを浮かべている。「顔がうるさい」って、正にこういう表情のことを言うんだろう。
    「そのリアクション……!間違いないわね! 今私は一言も喋っていないけれど、なにか聞こえたんじゃないかしら!?」
     フライデーは興奮気味に尋ねてくる。てっきり視覚に変化が現れるのかと思っていたから、完全に不意をつかれる形になった。
     彼女曰く、これは「視界に入った人間の感情を検知・分析して限りなく近いニュアンスの音声データに変換する」装置らしい。
     脳に直接語りかけているように聞こえたのは、「魔力の骨伝導を利用しているから眼鏡をかけている本人以外には聞こえない」ということだそうだ。相変わらず意味不明な技術力だ……。
    「団長さんはいつもお仕事が大変そうだけど、本来はもっとワークライフバランスを重んじるべきだと思うの! だってこのアイテムさえあれば、恋人や友人とのすれ違いも減って、もっとプライベートが充実すると思わない?」
     僕はつい黙ってしまった。
     相変わらずぶっ飛んだ発想をする人だ。人の心の中を勝手に覗き見てまでプライベートを充実させたいなんて、マトモな人間の発想じゃない。
     なのに僕の心は、この未知のガジェットに釘付けになっていた。
    「じゃあ決まりね! しばらく貸してあげるから、また会った時に感想教えてね!」
    「あ、ちょっと!」
     僕に眼鏡を渡すと、フライデーはエビフライに飛び乗ってどこかへ飛んでいってしまった。すっかり見慣れた夢みたいな光景に、ぽかんとしてしまう。果たして彼女が本当にアポロニアさんと同年代なのか疑問だ。
     残された僕は、一人手元に残った眼鏡を見つめていた。これさえあれば、あの不器用で口下手な彼女の本心を丸裸にできるのかもしれない……。逸る気持ちを抑えて、僕は早速彼女の部屋に向かった。
     
     
    「なんだその格好は……?」
     僕を見るなり、アポロニアさんは訝しげに尋ねて来た。そういえば彼女に見せるのは初めてだったかもしれない。フライデーからもらった、高級そうな黒いスーツ。これは去年の年末にエビフライに乗ってティラノサウルスを討伐した時の服ですと説明したら、彼女は「そうか」とあっさり流した。最近こういうトンチキ事件に巻き込まれすぎて、突っ込んだら負けだと思ったんだろう。実際僕もよく分かっていないので、そのリアクションが正しいのかもしれない。
    「それで、この眼鏡なんですけど……」
     僕はちゃんと説明した。これは相手の考えていることが読み取れる眼鏡だということ。まだ試作段階だから完全に心の声がそのまま聞こえるわけではないとはいえ、かなり近いニュアンスを汲み取れるらしいことも。
     一通り僕の話を聞いたアポロニアさんは、遠慮なく鼻で笑った。
    「……それで、お前はそれを信じて受け取ったというわけか?」
     なんでだろう。まだ眼鏡の電源を入れてないのに、疑いや哀れみの気持ちがひしひし伝わってくる。アポロニアさんは口数の多い方じゃないけど、結構態度に出やすいタイプだった。
    「僕も最初は信じられなかったんですけど……」
    「仮にそれが事実だとすれば、ティアマトやユグドラシルのような言葉を交わせない星晶獣に使ってやった方が有意義なのではないか」
    「確かに……」
     彼女に指摘されて初めて気付いた。
     言葉を話せない星晶獣や団でお世話してる動物たちに使ってみたら面白いかもしれない。人間以外の生き物にどの程度有効なのかは分からないけど。
    「まあ、先に私で試したいと言うなら構わないが」
    「えっ……いいんですか?」
     彼女は小馬鹿にしたような顔で頷いた。どうやらまるっきり信じていないらしい。こうも鮮やかなフラグを建てられると、事実を知った時の反応が俄然楽しみになってくる。
    「じゃあ電源入れますね」
     腕組みをしたまま待ち構えている彼女をフレーム内に収めると、僕はスイッチを切り替えた。と同時に、彼女の本心が伝わってくる。
    《それにしても……スーツはともかくとして、ひどく趣味の悪いデザインの眼鏡だな。よりによってあのエビ女とお揃いとは……団長の雰囲気には全く似合っていないだろう。もう少しどうにかならなかったのか……?》

    「ぐぅッ…………!!」
     僕は耐えきれず、膝から崩れ落ちてしまう。
    「なんだ、突然どうした……!?」
    「いえ……」
     今の彼女からポジティブな感情が出てくるとは思っていなかったし、ある程度は覚悟していた。
     だけど唐突に辛辣な言葉が飛び出してくるのは、相当な破壊力がある。口に出さないだけ彼女なりの優しさなのかもしれない。
     あと、自分では結構似合ってると思っていたのでよりショックは大きかった。
    《だが、似合わない眼鏡をあえて身に付けているというギャップは案外良いかもしれないな……。知識人を真似て背伸びをしているようで、どこか微笑ましい……》
     隙を生じぬ二段構えに、僕の多感な思春期メンタルは悲鳴を上げている。生暖かい目を向けられる方がかえって心に刺さった。
    「もうやめてください……眼鏡似合ってないのは分かりましたから……!!」
    「……誰もそんなことは言っていないだろう」
    「だからこれ本物なんですって……」
     アポロニアさんの目が大きく見開かれた。
    《まさか本当に心の声が聞こえているとでも言うのか……?! 有り得ん……だが、そんな物が市井に出回れば激しい混乱を招くことになるのは目に見えている》
     口元に手を当てて考え込む仕草をするアポロニアさん。けれどその内心は音声として筒抜けになってしまっている。
    《今すぐこの場で破壊すべきか……? いや、確か試作機と言っていたな……これ一つとは限らないか……軍事転用などされようものなら恐ろしいことになる……》
     普段から長考することが多い彼女だけど、何も喋ってない時でも色々考えてるんだなあ……。脳に響く声は深刻な雰囲気を伴っていたけれど、日頃こんなに積極的に喋る人じゃないからちょっと嬉しい。僕は真剣な彼女の声が好きなんだな……と改めて思い知らされる。
    「団長、無駄な抵抗をせずに今すぐそれをこちらへ渡せ」
     アポロニアさんは思い詰めたような表情で僕に迫ってくる。いつの間にか、最初に期待していたのとは随分違う展開になってしまった。
    「確かにアポロニアさんが心配する気持ちも分かりますけど、そうじゃないんです」
    「……何が言いたい?」
     突き刺すような目で睨まれて、思わず屈しそうになってしまうけど、僕は何とか堪えて会話を続けた。
    「これはそういう危険な目的で作られたアイテムじゃなくて、単なるジョークグッズなんですよ」
     アポロニアさんは「信じられない」って顔をしていた。
    《馬鹿な……底無しの馬鹿かコイツは……!? たとえ製作者の意図がどれほど馬鹿げていようが、一度狡猾な人間の手に渡れば冗談では済まされないだろうが……!!》
     普段は無言で圧力をかけてくるような場面だけど、内心ではここまで馬鹿扱いされてたらしい。確かにアポロニアさんの考えはもっともだ。フライデーはいつも悪気なしにとんでもないことをしでかすし、この発明だってやろうと思えばいくらでも悪用できる。だけど、僕が一番最初にアポロニアさんのところに来たのにはちゃんと理由があるんだ。
     
    「僕はただ、アポロニアさんと恋人らしくイチャイチャするきっかけがほしくて使ってるんですけど……!」
     そこで初めて、彼女は僕の企みに気付いたみたいだった。
    《い、イチャイチャ……!? つまり私がもっとグランに触れたいとか、触れられたいだとか、普段から考えていることが全て筒抜けに────……!?》
     キイィーーーーィイィン…………!!!
    「うわ……ッ!?」
     それまで頭に聞こえていた彼女の声が、当然マイクのハウリングみたいな甲高い爆音に切り替わった。機械が処理できる感情の許容量を超えたのかもしれない。見た目にも分かるほど彼女は取り乱していた。
     びっくりして咄嗟に頭を押えた僕に、彼女が勢いよく飛びかかってくる。胸ぐらを掴まれると「ぐえっ」と情けない声が漏れた。
    「い、今すぐそれを外せ! 早く、さっさとしろ!」
     アポロニアさんは怒りと羞恥に唇をわなわな震わせながら吠え立てる。と同時に、脳内に響く声まで僕を激しく非難し始めた。
    《なんて卑劣な男だ……! おいグラン、聞こえているんだろう!? いくら付き合っているとはいえ、一方的に心の中を覗き見るなど信頼に対する裏切り行為だ! これ以上続けるつもりなら、私はお前を一生軽蔑するからな……!》
     体の内と外から猛烈な怒りをぶつけられて、僕は降参するしかなかった。これ以上彼女に嫌われたくないので、素直に眼鏡を外して渡す。あの不快なハウリング音のせいで、まだ頭がズキズキ痛かった。
    「…………」 
     しばらく疑わしげに眼鏡を観察していたアポロニアさんは、おもむろにそれをかけ始めた。
    「えっ……アポロニアさんもかけるんですか」
     あんなに怒ってたのに!? と思わず口に出しそうになったけど、ますます機嫌を悪くしそうなのでやめておいた。
    「フン、当然だろうが……お前はこれを使って散々私の心を盗み見たのだろう? このド変態め……」
     アポロニアさんは吐き捨てるように言った……一応使う前にちゃんと同意は得たはずなんだけど、こうなったら仕返ししないと気が済まないみたいだ。
     僕も本音を見られるのは結構恥ずかしかったけど、彼女かなり怒ってるし、今見られて困ることも特にない。「アポロニアさんやっぱり眼鏡似合うな」とか、「照れてる顔も新鮮でいいな」とか、口に出したらキリがないくらい、僕の心は彼女のことで埋め尽くされてしまっているからだ。
     かちり、と音がしたので、アポロニアさんが電源を入れたことが分かった。
    「…………」
     今この瞬間、彼女に心の声を聞かれている……。
     そう思うと、なんだか緊張して変な汗が出てきた。
     彼女は腕を組んだまま静かに目を閉じている。耳を澄ませているのかもしれない。あまりに沈黙が長いので、僕は段々といたたまれない気分になってきた。こういう時(変なことを考えないように意識するほど、良くない方向に妄想が暴走しそうで恐ろしい。
    「えっと、何か聞こえました?」
     せめて感想くらい言って欲しい。苦し紛れに聞いた僕に、アポロニアさんは「少し、口を閉じていろ」といつにも増して冷たく答えただけだった。駄目だ、取り付く島もない。僕は黙るしかなかった。
     やっぱり、人の心を勝手に覗ける装置なんて倫理的に間違ってたんだ。そんなものに手を出した僕が悪いと分かっていても、フライデーを逆恨みしそうになる。 
    「はー…………」
     結構な時間が流れた気がする。僕は判決を待つ被告人みたいな気分でアポロニアさんの言葉を待った。
     彼女は深い深い溜め息を吐くと、ゆっくり眼鏡を外す。それからこっちをじぃっと見つめてきた……僕の勘違いじゃなければ、何となく熱っぽい雰囲気が混じっている気がする。
    「…………お前の性癖はほとんど理解したつもりでいたが、どうやら私の思い違いだったらしいな……」
     呆れたような口調でそう言われる。どうやら心から嫌われたってわけじゃなさそうだ。
    「な、なんかすみません……」
     性癖に関しては心当たりが多すぎて逆に何のことか分からなかったので、とりあえず謝っておくことにした。
    「実は私も、昔は眼鏡をかけていてな……」
    「はい……?」
    「仕方がない、今度持ってきてやる……借り物を汚すわけにはいかないからな……」
    「本当に何を聞いたの!?」
     アポロニアさんは、少し照れたようにほんのり頬を赤らめて目を背けている。「仕方がない」と言いながら、語尾にハートマークが付きそうな甘いニュアンスを感じたのは多分気のせいじゃないだろう。何その満更でもなさそうなリアクション……!?
     そこまでマニアックな趣味はないつもりだったけど、僕の無意識の欲望が勝手に翻訳されて彼女に伝わってしまったのかもしれない。正直予想外だったけど、引かれず受け入れてもらえたんだから結果オーライだ。ありがとうフライデー。
    ㅤこのあと眼鏡アポロニアさんといっぱいイチャイチャした。おわり🍤
     
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