抱き上げる「お前はどこから来た?」
「それは、我のことか?」
モラクスは木陰で休んで目を閉じていたが、ふと目が覚めると目の前に翡翠色のふわふわの髪をした小さな子供が不思議そうな瞳でこちらを覗いていた。
「お前以外に誰がいる?」
「木の上にはヤマガラがいる」
子供のフリをして襲いかかってくるタイプの魔神かと思い警戒していたが、どうやらそうではないらしい。きょとんとした琥珀色の瞳は、まだ戦のことなど何も知らなさそうな純新無垢の子供そのものに見えた。
「我は、あっちの村から来た。修行の最中だったのだが、知らぬ人が眠っていたので、気になって見にきたのだ」
「一人で修行を……?」
「ああ。我は夜叉だからな」
こんなに小さな子供が一人で修行するなど、鍛えられる技量はたかが知れているだろう。そう思ったが、ぺこりと頭を下げた夜叉は手を空に翳し、槍を取り出した。
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