花道をよろしく「おぉ、みとじゃねーか。久しぶりだな!」
部活が終わって体育館の外に出ると水戸が帰るところだった。
今日から桜木が練習に復帰した。
復帰といってもしばらくの間は負担にならないようなストレッチや筋トレ、基礎練習なんかが主な練習メニューになるとは思うが。
そんなバスケ部に久しぶりに水戸が顔を出した。
桜木が入院中は水戸が家族代わりとなってお見舞いやら洗濯物の管理やらをしてくれていたので部活を見に来るのは本当に久しぶり。
「今日から花道復帰なんで顔見に来ました」
「相変わらずアイツいるとうるせーな」
アハハと三井。
「でもアイツ今日から部活だ!て昨日からすげー気合い入ってるんすよ」
「おう、それは見たらわかる」
「昨日三井サンとこにも連絡いったでしょ?」
「おう…」
桜木が入院中にすったもんだがあって三井と桜木は付き合うことになった。
元々は三井の片想いだったのだが、桜木の入院中に2人の距離が縮まり三井の想いは成就。
桜木にとって大事な人であろう水戸とバスケ部の鬼キャップ宮城には既にこのことを報告してある。
「あのよ、前々からその…ちょっと気になってることがあるんだけどさ…」
ちょっと言いにくそうに口籠る三井。
「そんな態度三井サンらしくねーな、何?言ってよキモチワルイ」
「おう…あのさ、お前にとって花道って何なの?」
「何って何?」
「…うーん、なんかもしかしてお前花道のこと好きだったんじゃねーかって。それは前から思ってたんだけど」
あぁ、と水戸。
「花道は一言で言えば『オレの一番大切な人』かな?」
三井の顔が青ざめる。
「あー…やっぱり…?」
バツが悪そうに頭をかく。
「あ、でも恋愛感情があるかって言ったら…あるのかないのか自分でもよくわかんねーんだよな。もし花道から付き合ってくれって告られたら100%付き合うけど、だからといってオレから告る気はねーし。花道が三井サン好きでこうなったのもオレは嬉しいから」
難しいんだよねこの感情をどう言葉にするか、と水戸。
一番は花道が幸せなこと、これは絶対条件。
「それを守るためだったらオレ何でもするよ」
オレにとって花道は親友であり、家族であり…
「オレの命より大切な存在…かな?」
そういって優しく笑う。
「オメーには敵わねーな…」
「やめてよ三井さん、花道が好きなのはアンタなんだからさ。アンタが花道幸せにしてあげて」
だけど、と続く。
「花道不幸にしたら許さねーよ」
元和光中の水戸洋平の顔になる。
「お、お、おう!花道はオレが絶対幸せにする!」
「うん、知ってる。三井サンどんだけ花道のこと好きか見ててわかるから」
とイタズラっぽく笑う。
「お、よーへー!今日来てくれたのか?」
「おう、基礎練頑張ってたじゃん」
「天才だからな!つまらん基礎練でも全力でやるのだ、ナハハ」
「バスケできて良かったな、花道」
そういって優しく微笑む。
その顔だぞ、みと。
そんな顔好きじゃねーヤツには絶対見せねーだろ、普通。
でも水戸が言うように桜木に対する水戸の思いは表現するにはとても難しいものなのかもしれない。
強いて言うならば「花道の幸せが一番でアイツが幸せならそれでいい」といった感じなのだろう。
「花道、オレこれからバイトだから先帰るわ」
「おう!ありがとな、よーへー」
「またな」
花道にそう言った後オレのところに来て
「三井サン、今日花道の家にお泊まりだろ?」
「ななななななんで知ってんだよ!?」
「声でけーよ!そんなのアンタと花道見てたらわかる。まぁアンタなら言わなくてもわかってると思うけど、花道背中まだ本調子じゃねーからよ…ほどほどに」
「ングッ!!」
喉からサザエさんみたいな声が出た。
退院してから何度か花道の家には泊まってるけど、やっぱ背中のこともあるし本番はまだしてない。
お互いのモノ合わせて手でやってるだけ。
それでも幸せだし気持ちいいし、何より大好きな人とキスして触れ合って一緒に朝迎えられるのってそれだけで最高じゃね?
「花道頼んだぜ、三井サン」
そんじゃ、と水戸は帰っていった。
「ミッチー、よーへーと何話してたんだ?」
「ん、まぁ、あれよ…あーっと、そう、アイツのバイトのこと!金曜なのにめんどくせーなーって言ってたから」
アハハハハなんて乾いた笑い。
「そっか。ミッチーとよーへーが仲良くてオレもウレシイぞ」
ニカっと笑う花道にどうしようもなく恋焦がれてしまい
「早く帰ろーぜ」
そういって花道の手を握ればみるみる真っ赤に染まる顔。
「誰もいねーしいいだろ?」
ちょっと悪戯っぽく聞いてみると
「お、おう」
と可愛い返事が返ってくる。
こんな可愛い恋人を絶対不幸になんてするものか。
一生オレが守る!
少し肌寒くなってきた秋の夜空に再度誓う三井だった。