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    ほむら

    @rietokota

    SD右花メインの小説置き場です。
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    ほむら

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    以前Twitterにあげた両片想いの流川と花ちを、流川のことが好きな晴子ちゃんと花ちのことが好きな藤井ちゃんがキューピットになってくっつけるお話です。高2設定で晴子ちゃんと藤井ちゃんがバスケ部のマネ引継ぎます。

    #流花
    flowering
    #スラムダンク
    slamDunk

    夏空と恋心桜木が床に落ちた自分の汗に足を取られ後ろに倒れる瞬間、傍にいた流川の表情が一瞬恐怖に引き攣る。
    その顔の流川と倒れそうになる桜木の視線が何もない空間で絡み、桜木の顔も恐怖に引き攣った。
    桜木が流川に助けを求めるように伸ばした手は虚しく宙を掴む。
    「花道!」
    宮城の声にたまたま桜木の近くにいた石井が反応し桜木の背を支えた。
    そのおかげで背中から床に叩きつけられることはなかったが、石井ともども尻餅をついた。
    「桜木、大丈夫か!?」
    石井が心配して声をかける。
    他の部員も桜木の周りに集まってきた。
    流川は動けずに立ち尽くしている。

    私も藤井ちゃんも心配で桜木くんに駆け寄った。
    「石井悪ぃ…大丈夫か?」
    自分より体の小さい石井くんを心配して謝罪と確認をする。
    「オレは大丈夫だけど桜木は?どこか痛くない?」
    「おう、おめぇのおかげで助かった!ほんとありがとな!」
    去年のIHで背中を怪我して以来バスケ部のみんなは桜木くんの怪我にとても神経質になっている。
    完治したとはいわれているがいつ何が原因で選手生命に危険が及ぶかわからないから。
    殊に流川くんは桜木くん復帰後、明らかに桜木くんに対する態度に変化が現れた。

    なぜそれを知っているかといえば、私も流川くんをずっと目で追っているから。
    桜木くんが復帰してからというもの、流川くんは桜木くんのことをよく目で追っている。
    以前はたまにチラッと見ることはあってもこんなにずっと目で追うことなんてなかった。
    しかも桜木くんの姿を見ると一瞬表情がふわっと和らぐ。
    あの能面のように美しい流川くんの顔が、だ。
    そして友達の藤井ちゃんは桜木くんのことが好き。
    桜木くんは以前安西先生から「上手くなりたければ流川くんのプレーを見なさい」と言われていて、文句を言いながらもそれを守っていた。
    いつだか藤井ちゃんが言っていた。
    復帰してから桜木くんの流川くんを見る目が優しくなって、たまに愛おしそうに微笑みながらそのプレーを見ていることがあると。
    それを今日私も目撃した。
    「あれは恋よう!絶対そうだわ!間違いないわよう!」
    私は確信した。
    流川くんは桜木くんが好きで、桜木くんは流川くんが好き。
    「それは私も思う」
    余計なお世話かもしれない。
    でも青春真っ只中の高校2年生女子。
    こんな状況になれば勝手にキューピットになりたくもなる。
    「これは私たちがどうにかしなきゃな案件だわ!」
    「あんたそれ余計なお世話だと思うけど」
    はぁ、とため息を吐きながら藤井ちゃんは冷静な言葉で返した。
    「でもこのままじゃ両片想いなのに成功する確率なんて0%よっ!」
    「んー…それはわからなくもない、かも」
    「私たちの推しCPの恋愛成就、私たちできっかけを作ってあげましょうよ」
    推しCPって…と思う藤井であった。
    自分が好意を寄せている桜木くんが流川くんのことを好きかもしれないと思った時、正直なところ「流川くんならしょうがない」と思った。
    あの2人の間に割り込める人なんてこの世に誰1人としていないだろう。
    仮にそこに恋愛感情がなかったとしても、あの2人の間に入れるのはこの世にバスケただ1つだけだと確信している。
    少なくとも私や晴子が入る隙間なんてこれっぽっちもない。
    だったらキューピットになるのも悪くないかな、なんて思ったりもして。

    去年のIH後アヤコさんから「晴子ちゃん、このままバスケ部のマネやってみない?」と誘われて私と藤井ちゃんでマネージャー業務を引き継ぐべくもっぱら修行中のそんなある日。
    「センパイ、この辺がくるしい」
    休憩中に流川くんがアヤコさんに不調を訴えてきた。
    私も藤井ちゃんも驚いて流川くんに駆け寄った。
    「どう苦しいの?息ができない感じ?それとも鼓動が早くて呼吸が上がる感じ?」
    「んーよくわからない」
    「どういう時に苦しくなるの?」
    少し考えた後
    「…桜木と目があったり…した、時…とか?」
    「「「!?」」」
    アヤコさん、藤井ちゃん、私の3人は同じ顔をしていたと思う。
    目を見開き口もあんぐりして、私たち3人の時間が止まった。
    確実に1分くらい止まった。
    「そ、そ、そっか、うん。そっかそっか、うん。病気じゃなさそうで良かったけど、多分その痛みは病院じゃ治らないやつなんじゃないかな、うんうん」
    アヤコさんがテンパってる。
    私はというと心の中でガッツポーズをしていた。
    やっぱり!ほらやっぱりそうじゃない!流川くんは桜木くんが好きなのよう!
    嬉しさと確実に失恋した悲しさとなんかもうぐちゃぐちゃなメンタルになったけど、もうこれは私がどうにかするしかないという勝手な責任感が生まれた。

    部活が休みの日を選んで流川くん、桜木くん、藤井ちゃん、そして私の4人でWデートを装って江ノ島水族館に行く計画を立てた。
    桜木くんは私と藤井ちゃんがお願いしたらすぐにOKをくれた。
    流川くんは「めんどくさい」と言っていたが桜木くんが来ることを告げたら即答で「行く」と返事がきた。
    本当に好きなんだなぁ、桜木くんのこと…
    ちょっと胸がチクッと痛んだけど流川くんと桜木くんのキューピットになるって決めたんだからもうやるしかない!
    当日最寄駅で待ち合わせ。
    流川くんの私服かっこいい…
    藤井ちゃんも桜木くんの隣でちょっと赤くなっている。
    さっきコソッと「桜木くんの私服可愛い。ドキドキする」って言ってた。
    だって私たち彼らに恋してるんだもんっ!
    でもでもでも、今日のミッションはそんな気持ちをかなぐり捨ててでもこの2人の距離を!近づけてみせるわよう!
    本気のJKのやる気なめるなよ、てなもんよう!
    水族館のお土産屋さんで4人でお揃いのキーホルダーを購入した。
    「これみんなでバックにつけましょうよう♡」
    そう、そうすれば流川くんと桜木くんのペアキーホルダーの完成よ!
    それっぽいシリーズを選んだんだもの、バッチリだわ。
    藤井ちゃんと小さくガッツポーズ。
    遅めのランチは併設されているカフェで。
    食欲旺盛な2人は買い占めるんじゃないかと思うくらいの量を買ってきて2人で取り合いをしている。
    やっぱり仲良いなぁ。
    2人の関係にちょっと嫉妬しちゃう。
    「ハルコさんとフジイさんも食べたいのあったら言ってくださいね。キツネがおごりますから」
    ナハハと桜木くん。
    それを聞いてテーブルの下でガシガシ流川くんが桜木くんの足を蹴っている。
    ランチ後そのカフェでお茶をしながら雑談タイム。
    流川くんはいつも通りコクリコクリと船を漕いでいる。
    その体がだんだん桜木くんの方に傾いてついには桜木くんの肩に頭を預ける形になった。
    でもそんなのお構いなしに桜木くんは話を続ける。
    「ハルコさんとフジイさん、マネージャーの仕事はどーデスカ?マネージャーって色々知識が必要だから大変ですヨネ」
    でもそのおかげでオレは復帰できました、と。
    「だから大変とは思いますがガンバッテください!ハルコさんとフジイさんが湘北のマネージャーになってくれたらすげー心強いっす!」
    「うん、私たち頑張るわ!」
    ねっ!と藤井ちゃんとアイコンタクトを取った。

    様子を見計らって私と藤井ちゃんはトイレに立った。
    流川くんと桜木くんを2人にする目的で。
    相変わらず混んでいる女子トイレに入り用を足しカフェに戻る。
    カフェに入る直前で藤井ちゃんに制止される。
    藤井ちゃんの目線を追うとその先には桜木くんの肩にもたれかかって寝ている流川くんと、その流川くんを愛おしそうに見つめる桜木くんの姿。
    私たちはそのままそこで2人の行く末を、せめて流川くんが目覚めるまでの時間見守ることにした。
    桜木くんの指が愛おしそうに流川くんの頬を撫でる。
    それに気づいたのか流川くんの目がうっすら開き桜木くんを見上げる。
    と同時に流川くんの顔が桜木くんに近づき唇が重なった。
    「「え…」」
    私と藤井ちゃんの声が重なった。
    それが合図になって私たちはダッシュでカフェを離れた。
    「え、え、え!?今2人キスしたよね!?見間違いじゃないよね!?」
    「した、したわよう!キスしたわよう!」
    大興奮の私たち。
    これってこれってこれって…2人の想いが通じたんじゃ?
    「ねぇ、私たちこれからどうする?なんかもし、もしよ?あの2人があのままいい雰囲気になったとして私たちジャマ者よね!?」
    という藤井ちゃんの言葉に
    「もう一回こっそり2人を見に行って、もしいい雰囲気になってたらばっくれましょう」
    2人で見つからないようにカフェを覗きに行った。
    そこにはかなりいい雰囲気の流川くんと桜木くん。
    流川くんは相変わらず桜木くんに体を預けている状態で、見つめ合いながら何やら楽しそうに…というよりは幸せそうに話をしている。
    2人とも優しい雰囲気を纏っていてとても私たちが入る隙間はない。
    「帰ろっか」
    「うん」
    嬉しいような悲しいような、それでいてやり切ったような満足感で私たちは水族館を後にした。

    後日流川くんと桜木くんから「付き合うことになった」という報告を受けた。
    その時持っていた2人のドラムバッグにはあの時に買ったお揃いのキーホルダー。
    私と藤井ちゃんは泣きながら喜んで祝福した。


    ーあれから10年ー
    私と藤井ちゃんはその後それぞれ運命の人と出会って結婚して幸せな家庭を築いた。
    でも今日は。
    私の実家でお兄ちゃんと私、藤井ちゃんでテレビの前を陣取って流川くんと桜木くんの結婚会見が始まるのを待っていた。
    高校卒業間近に流川くんが、その2年後に桜木くんがアメリカにバスケ留学し現在NBAで活躍している。
    私と藤井ちゃんがお膳立てしたあの水族館デート以降、2人は愛を深めてついに先日アメリカで籍を入れたと連絡をもらった。

    会見が始まった。
    年に一度は湘北バスケ部でOB会をしているから見慣れているはずの2人なのに、今日はスーツで正装していてとても素敵だ。
    「大人になったな…」
    そんな2人の姿を見てお兄ちゃんは既に涙を流している。
    高校生の時は『問題児』と言われてたのに。
    質問のほとんどは桜木くんが答えていた。
    「最後にオレ達をくっつけてくれたキューピットである、当時の同級生でバスケ部のマネージャーだった2人にオレ達から感謝を述べさせていただけたらと思います。」
    「「え!?」」
    私と藤井ちゃんは顔を見合わせて驚く。
    「あの時水族館に誘ってくれてありがとう。あれがなければ多分オレ達はこうなっていなかったと思う。本当に感謝してます!」
    「ッス」
    深々と頭を下げる画面内の2人に私と藤井ちゃんは抱き合いながら号泣した。
    「良かったよう、2人が幸せで本当に良かった」
    「うん、あの時行動して良かったね」
    2人して子供の様に泣きじゃくった。

    私たちの青春をかけたあの夏の1日は一生忘れることができない出来事となった。
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