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    かわい

    @akidensaikooo

    アキデンの小説連載とR18漫画をぽいぽいします

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    かわい

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    アキデンの初デートの話です。

    スイート・デート・エスコート 3昼食は、水族館に併設されたファーストフードで食べた。

    大口を開けて食べるデンジが口の周りをマヨネーズでベトベトにしていると、アキが黙って拭いてくれた。いつもは「綺麗に食べろ」と小言を言うだけなのに、今日は大サービスだ。
    ついには、「あんまりベトベトにしたら、俺が舐めとるからな」と言ってきたので、デンジは慌ててソースを自分で拭いた。今日のアキは、なんだか本当に舐めとりかねないオーラを放っていたので。

    その後二人はまた電車で街に戻り、今度はボーリングをした。

    二人とも負けず嫌いなので、途中からは真剣な争いになってしまった。デンジはシャツだけになっていたし、アキも完全に腕まくりをしていた。デビルハンターをこなす二人の身体能力は異常に高いので、スペアよりストライクの出る回数が多いほどの、白熱した戦いであった。
    結局アキに負けたデンジは、ジュースをおごるハメになった。まあ、ここまで費用のほとんどをアキが払ってくれているので、デンジは自分もお金を出せたことにホッとしたくらいなのだが。
    いつだって奢られたらラッキー、お金は人に出してもらってナンボだと思っていたのに、この心境は一体どう言うことなのだろう。

    街をブラブラしているうちに、夕食の時間になった。

    今日のアキは、いつもと明らかに違う。だからデンジは、もし夕食にお高い店を予約されていたらどうしようと、少しだけ焦った。だって、デンジは高い店のマナーなどわからない。
    けれど、アキがデンジを連れて入ったのは、チェーン店のファミレスだった。
    ほっとすると同時に、さすがのデンジだって気がついた。アキはデンジが気を遣わないように、デンジのレベルに合わせてくれているのだと。

    ――今までの女とは、どんなとこにいったのかな。アキによく似合う、夜景の見えるレストランとかに…行ったのかな。

    目玉焼きの乗ったハンバーグを食べながら、デンジはもやもやして、溜息をついてしまった。するとアキは、デンジを気遣うように覗き込んできた。

    「どうしたデンジ?食欲ないか?」
    「いや、え〜っとぉ……あの。アキ、デート慣れてんなって。今までの女とはどんなとこに行ったのかなァ〜〜って、ちょっと。気になったって言うかぁ?」

    デンジはしどろもどろになりながらも、もやもやしていたことを、ほぼアキに伝えてしまった。言ってしまってから後悔する。落ち着かずに、足を擦り合わせた。
    しかし、アキはしばらく手を顎に当てて考え込んだ後、意外なことを言い出した。

    「いや…考えてみれば。ちゃんとしたデートって、これが初めてだ」

    デンジは驚愕のあまり、ファミレスのボックス席でのけぞった。

    「ハアァ!?うっそだろアキ!お前っ……その顔で!嘘いうなよ!!」
    「本当だ。俺は、復讐のことしか考えてなかったからな」
    「マ、マジかよ…………」

    デンジは呆然とした。

    ――俺が…アキの、初めて?

    なんだか、胸がぽやぽやする。
    自分ばかりが初めてだと思っていたから、大人であるアキの初めてになれたことが、とても嬉しいと思った。
    デンジは何だか恥ずかしくなってきて、照れ隠しで余計なことを言ってしまった。

    「あれ?もしかしてアキって童t…」
    「違う!!!気楽な関係なら、いくらでもあった」
    「……あっ、そォー……!爛れてんな〜!!」

    デンジは自ら余計な話を振っておいて、むすっとしてしまった。どうしてこんな変な気持ちになるのか、まだ自分でもまだよく分からない。
    ただ、アキのあの唇の熱さを知っている人間が他にもいるんだと思うと、良い気分がしなかったのだ。

    「そう拗ねんなよ」

    するとアキは存外真剣な顔で、デンジの左頬に手を添えてきた。

    「ちゃんと好きになって付き合うのも、初めてだし。俺の初めてはほとんどお前だよ」
    「う、うぇ………………」

    アキの言葉があまりにもまっすぐなので、またしてもデンジのキャパはオーバーした。あっという間の出来事である。
    しかしそこでデンジは、気になっていたことを聞いてみることにした。この際だ。

    「つーかさぁ、それなら、なんで今日まで……付き合ってる感っつーの?出さなかったんだよ。アキ、いつも通りだったじゃんか!」
    「ああ。だって、急に態度変えたら、お前がビビって逃げると思って」
    「ああ"!?逃げねーっつの!」

    言いながらも、デンジはちょっと自信がなかった。初日から今日の態度で来られたら、かなりビビりはしただろう。間違いない。

    「ふ。お前、ずっと俺を意識してそわそわしてんの……可愛かったな」
    「見てたのかよ、アキ!趣味わり〜ぞ!!」
    「ごめん。でも、それ見てたら俺も我慢すんの馬鹿らしくなって。これからは全力で行くことにした」
    「ぜ、ぜんりょく……」
    「だから……覚悟しろよ?デンジ」

    首を傾げて、デンジをすっと射抜く青の瞳。その姿は蠱惑的であり、あまりにも格好良かった。
    デンジの心臓は、それだけで大騒ぎとなってしまったのである。

    ――お、俺……もう無理かも。

    デンジは完全にアキの掌の上で踊っていることを感じ、困り切っていた。
    そもそもデンジは、自分を好きな人が好きだ。
    アキには恋愛感情なんてなかったはずなのに、チョロいデンジはもはや完全に、その術中にはまっていた。
    自覚はあるのに、もはやどうにも後戻りできそうにない。

    恋人になった早川アキは――格好良くて、綺麗で、優しくて。デンジを大切にしてくれる。

    ――こんなの、好きにならない方が無理じゃんか!

    デンジは軽くオーケーした自分を呪い、ちょっと泣きたい心地になってしまった。


    夕食を食べ終えた後、夜は海の近くにある観覧車に乗った。
    「最後にはちょうど良いだろ」と、アキが手を繋いで連れてきたのである。もちろんデンジは観覧車も初めてであるので、ポカンと口を開けてその巨大さに圧倒されていた。

    観覧車から見る夜景は、圧巻だった。

    「すげー高けぇー!!」
    「やっぱ、綺麗なもんだな」
    「なあなあ、俺たちの家ってどのへん〜?」
    「ええと……あの辺だろ。あそこに駅があるはずだから……」
    「えっ、どこどこ!?」

    アキはデンジの目線に合わせて教えようとし、近づいた。その拍子に、腕でデンジを閉じ込める形になってしまう。デンジの身体は急速に強張り、ぎゅっと目を瞑った。

    「……デンジ」
    「ん……」
    「抱き締めてもいいか」
    「き、聞くなよ……!」

    言うが早いが、デンジはアキにすっぽりと抱きすくめられた。大きなアキの身体。温かくて、タバコの匂いと……他にもシトラスのような、甘い良い匂いがした。
    デンジはまた、心臓から手指の先まで、ビリビリとした震えが走るのを感じた。今日初めて感じたこの感覚は、一体何なのだろう。まるでわからないが、叫び出したいような、安心して泣きたくなるような、衝動的な気持ちになるのだ。

    「デンジ。好きだ」
    「…………!」

    さらに熱を持ったデンジの頬にそっと触って、アキは微笑みながらデンジに近づき――鼻と鼻が触れ合う距離で、囁いた。

    「いつか、俺のことも好きになってくれ」

    ちゅ、と唇が重ねられた。

    角度を変えて、もう一度。
    食むように、もう一度。

    ――また、キスしてる。

    デンジはバクバクとうるさい心臓を手で押さえながら、その甘さと優しさに酔いしれた。

    「…………な、なんか。テレビのデートみてぇ……」
    「はは、そうだな」

    アキは、心底幸せそうに笑っている。薄暗い空間でそんなアキを独り占めする時間は、とても贅沢だと思った。デンジはすっかりされるがままになって、その心地良さに浸かってしまった。

    観覧車が地上に着くまでの間、二人は何度でも、キスを繰り返していた。
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