嵐の文様 身体がふわふわと浮いている。上も下も暗闇ばかりだった。時折遠くにぴかっと瞬くものを見つけるが、流れ星よりも早く消えてしまう。女はもうずっとそういう空間を漂っていた。
時間だけがあった。だから彼女は歌ったり、その聡明な頭で考えを巡らせたりすることを楽しんでいた。
たくさんの記憶を思い返したり、ありもしない平和な世界で暮らす自分を想像してみたりして、人知れず歌う。それだけで幸せだった。
さみしくないかというと、当然心細くはあった。けれどそれは今さらだ。あるべき半身が欠けたままなのは、生きていた時と何ら変わらない。
女は暗闇に手をのばす。いつか、自分だけの赤い星に出会うことを夢見て――
それは突然のことだった。
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