再装填(……風は、南西から)
風力としてはさして気にする程でも無い。
己の呼吸を隠すように、細く息を吐き出したグラディウスは、枝葉を積み重ねて作ったドームの中で風の動きを追っていた。
(デカいな……幸運だ。二頭もいれば全員食える)
視線の先の穏やかな川で水を飲む、カモシカのような偶蹄類が数頭。
グラディウスは長い間覗き込んでいるスコープから目は離さずに、抱えた狙撃銃を構え直した。
『退屈で……気が狂いそうでなァ。フフフフッ……!お前はどうだ……グラディウス』
インペルダウンのゴミを集積している島に潜伏して、二日が経った。
十二人もの囚人が姿を消した海底監獄で、一体どういう騒ぎが起きているのかは分からない。
しかし、二ヶ月掛けて一人ずつ袖を引き、ニューカマーランドに全員集合した後、玩具に扮して脱獄するという作戦は今のところ成功しているようだ。
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