仲良し友達以上恋人未満一緒によく旅行に行く程度の仲良し友達成人さねぎゆ。
今日も不死川君の運転で遠路遥々彷徨っていた所義勇さんが変な建物を発見。
「不死川!アレは何だろう?」
見るとその屋根には遊園地並の船のオブジェがくっついていた。車通りも少ないのでゆっくり前を通って看板を見る。
「冨岡、あれラブホだァ」
目をまあるくする義勇さん。
「入ってみよ!」
「……ほぉおん、良し行くか」
好奇心で輝く純粋な目を一瞥してニヤける口元そのままに建物一周して駐車場入口へ。
何を隠そうこの不死川実弥21歳、隣に座る幼稚園児みたいな男に惚れているのである。あわよくばと下心丸出しで白線中央に美しく駐車。落ち着いている。
男二人、ラブホ入口に到着。ドアを開けるとそこはアマゾン。周りを囲む熱帯植物、流れる川、動物の置物、石の壁。出だしから有名遊園地。
「不死川、橋があるぞ!」
視線きょろきょろはしゃぐ好きな子可愛い可愛い思いながら部屋を選ぶ。取り敢えず高いやつ。やっぱリッチにな。特別ルート。目の前には広がる湖。室内なのに湖。シーだ、あの遊園地のシーだ。ゴンドラがあり、それに乗り込む。アナウンスと共に動く小さい船。
「凄い、凄い!水!草!あそこに鮫が居るぞ!不死川見ろ!」
惜しげも無く寄せて来る体にそっと手を回して何食わぬ顔で「あーホントだー」と呟く。こいつちょっと体柔いんだよな。
ニコニコしてんのかぁいいと思ってると船が止まる。降りた先には部屋へと続く廊下。薄暗くて少々不気味。義勇さんの体はまだくっついている。不死川君ご満悦。電球が点滅している。そこが目的の部屋。中はアラビアン。しかし派手過ぎず広さも調度いい。床には特殊ガラス越しに水中が。魚も居る。
「不死川!露天風呂だ!」
奥には先程の湖を眺められる露天風呂。その他に普通の風呂もある。
「一緒に入るかァ?(なんつって)」
「うん!」
言ってみるもんだな。助平心期待大の風呂は後に取っておくとして探索。
「ラブホってこんなに面白いとこなのか」
「ここが特殊なんだよ」
好きな子が初心で嬉しい不死川君。テンション上げ上げのところ義勇さんがルームサービスのメニューを発見。
「お、美味しそうだ」
「おおスゲェ」
本当に美味しそう。これがラブホの飯なのか。もはやリゾートホテル。永遠に住めそう。横には可愛いコスプレメニュー。想像しただけでよだれ出そう。
「お前着ればァ」
助平心は留まる所を知らない。
「え、俺がか?」
一瞬の沈黙。
「良し着てみよう!」
言ってみるもんだ。判断が早くて助かる。羞恥より今を楽しむ方にゲージが振り切ったらしい。色々回る。エロい玩具発見。過保護家族に囲われてた男、何でも不死川君に聞いてくる。可愛いが流石にもう面倒。
「後で使ってみっかァ?」
「うん!」
言ってみるもんだァ…。
届いたご飯を食べる。見た目も良い美味しい素晴らしい。住みたい。満腹になったら先程の露天風呂へ。
「不死川、ちょっと狭いな」
「その為だからなァ」
男二人。狭いどころでは無い。ほぼ密着。長男だから我慢出来た。
「なァ、したくなんねェ?」
「何を?」
言っても無駄な事もある。預けられる白い背中。取り敢えずそっと抱き締めた。
アメニティの量ヤバすぎ。高級ドライヤーで乾かしてやる長い黒髪。僥倖僥倖。ぴょんぴょん猫っ毛かわぁあ。不死川実弥、至福の時。照明落として広いベッドに横になる。適度な硬さ、文句無し。隣にはふにゃふにゃしながら微笑む好きな子。可愛過ぎてどうしたらいい?
ふわふわの布団に埋もれる頭を撫でてやる。気持ち良さそうに細められる青い目。こんなんもう友達以上だろと調子に乗る。
「なァ、したくなんねェ?」
「だから何を?」
駄目だこりゃ。眠そうに瞬く瞼。分厚い睫毛がくりっくりの目を隠してしまう。ああ、コスプレも玩具も出番無し。すっかり忘れてる。
残念可哀想な下心。うっすら涙が浮かぶ不死川君の目尻。義勇さんが起きたらよしよししてもらおうね。