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    しゅうだい を 目指した。

    Become only mine, ツキプロ寮内で緑の会が開かれてからしばらくして、水色の会が開かれることになった。ROCK DOWNの立花歩が発案して作ったグループチャットに招待された柊羽は、「緑の会が羨ましかったとかそういうことではなく」と書いてあったのを見て、以前玲司と会った時に歩が最近は随分と社交的になったことを話していたことを思い出した。
     とはいえ、とりわけ多忙な柊羽を筆頭にSolidSの大もいれば、寮こそ違えど同じイメカラ水色の葵王子ことグラビの皐月葵や、Growthのリーダーである昴輝もメンバーに加わっているとあればスケジュール調整は難航した。それでもまめな性格の面々が揃っていたので、根気強く連絡を取り合った末に、QUELLの共有ルームで2時間だけ集まれることになった。 

     当日、幹事の歩を筆頭に、葵、大、廉、昴輝とでテーブルを囲んで穏やかに談笑するという光景に、柊羽も半ば信じがたい気持ちでいた。
     各々の前に置かれた紅茶は、オフなのでとウェイター役を買って出た壱流が淹れたものだった。少し前から、香りがより引き立つように淹れられるようになったので尋ねたら、VAZZYの直助とゲーム仲間になってコミュニケーションルームに入り浸っている間に築兄弟から教わったと話していた。この空間にいる全員が、適切な距離感を探りながら話を進めることに安らぎを覚えながら、柊羽もカップを手にしながら話題を広げていった。

     時間は瞬く間に過ぎ去り、全員が柊羽の次の予定を気遣ったため時間よりも少し早く、水色の会はお開きになった。
     柊羽は部屋も近いし片付けるからと残った大と二人きりで、より静かになった共有ルームに残された。壱流は紅茶が行き渡って話が始まったあたりから気を利かせて自室に篭っている。

    「……大」
    「何だ? 柊羽」
    「みんな気を遣ってくれたが、正直なところ時間はまだあるんだ。少し、二人きりで話さないか」
    「どうしたんだ、いきなり」
    「そうだな……。SolidS自慢の末っ子を、今は俺だけが独占するということがしてみたくなったから、というのはどうだろう」
    「なんだ、それ」

     大は笑っていた。ひとたびステージに上がれば、カメラの前に立てば、たちまちぎらぎらと輝き始める彼の瞳を柊羽は知っている。その大が浮かべる穏やかな笑顔は、今まで沢山の人間を見てきた柊羽にとっても緩やかな引力が働くことを、否が応でも感じざるを得なかった。

     テレビの前のソファに並んで座る。触れれば届く距離。だが、触れていないので心音の速度も体温の高低も推し量ることはできないし、悟られることもない。
     はずだった。
     
    「……柊羽、なんだか元気がなさそうだな」

     言葉とともに肩を抱き寄せられる。気付いたときには大の胸元のシャツの生地にピアスが触れ合って、微妙な摩擦が生まれていた。
     体温が上がる心地がした。
     嗚呼、志季や里津花は、いつもこんな風に──

    「悪い、こういうの……嫌だったか?」

     慌てる大を宥めるように、片手の指先を硬い脇腹に置いた。

    「申し訳ない、こういったことに慣れていないもので……。仮にも年下の大に、気を遣わせてしまったと思うと、どうにも情けないな」
    「……『年上だからって甘えちゃいけないなんてこと多分ない』んじゃないのか?」
    「は……、返す言葉もないよ」

     もしもの話だ。こんなにも優しい大を籠絡して──、自分だけを一心に求めながら、例えばキスしているところなんかを志季や里津花に見せたら、彼らはどんな顔をするのだろうか?

    「ありがとう、大。例のドキュメンタリーの撮影が続いていて、自分でも思っていた以上に疲れていたみたいだ。……もう少し、このままでいさせてくれ」

     きっとこの逡巡に、大は気付かないのだろうから。



    了.
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    mu____zi

    DONE課(特に付き合ってない)たざかみ、愛と地獄の新婚旅行編

    たざかみの日のプリズンなブレイクの続編です。
    ◾️◾️




    波間の揺れる一面のコバルトブルー。神永は海の真ん中、木製の小洒落た桟橋の上に立っている。頬を撫でる風に目を細めて、はて。──どうしてこうなった。と、隣で柔らかく微笑む田崎の顔面を見つめながら、答えのない疑問を脳裏に過らせた。


    さて、神永が水上飛行機から桟橋に降機したのは、ほんの1分ほど前の話である。桟橋の専用プラットホームに横付けされたその飛行機に乗り込んだのは、大凡1時間ほど前だっただろうか。因みに、小型水上飛行機へ乗り込むより前の、南国の国際空港に到着したのは3時間ほど前のことで、神永が日本で旅客機に乗り込んだのはそれより更に約15時間前だ。
    この土地に降り立つまでに既に半日以上が経過し、神永の凝り固まった背筋は慣れない疲労を訴えていた。しかし、神永の疲弊は肉体的よりも寧ろ精神的な部分にある。開放的な南国の土地に降り立った人間にしては些か場違いだろう。とはいえ、神永はそんな疲弊の断片を顔色に滲ませることなく、口角を緩めてながら極上の幸福に溢れたバスタブに浸かった顔をする。順風満帆で、今まさに世界が終わりを告げても尚、隣にこの男がいてくれるのなら後悔などない、という顔である。
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