結婚式のスピーチ 衣更真緒の場合招待状が届いた。宛先を見ると俺が最も知っている二人だった。朝が苦手だからと迎えに行っていた幼馴染の凛月、そして俺たちを応援してくれてプロデューサーとして一緒にがんばってくれたあんず。その二人が結婚すると手紙が来た。
「ま~くんには言っておかないとね」
一週間前に聞かされた結婚の話。頭では理解していたつもりだったが、聞いてからの一週間は仕事に身が入らなかった。世間では『朔間凛月、結婚!』『相手は業界に勤める一般女性』などの文字があちこちのメディアで賑わいを見せる。慌ただしく動く世の中に独り取り残された気分だった。あの時こうしていたら、なんてのは野暮だと分かってはいたが、考えられずにはいられなかった。あの時、俺はあんずのことが――。
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