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驕りが生まれるのが人間であるのだと、数十年前に読んだ本に書いてあった。
ならばこれは、己が人である証とも呼べるのではないか。
──などと、悠長なことは言っていられない。
血に濡れたティアが身動ぎすらせずに地に伏せている。握られていた長棍は無残にも中心から折れ、視界の端に弾き飛ばされていた。
油断していた、なんて言葉では片付けられない不測の事態だった。
悠久の時の中で出会った少年は、他人を拒絶していたテッドの中にいとも簡単に居場所を作り上げた。
ずっと一緒にいることなど出来ないと知りながら、居心地の良さに、信頼してくれるティアの眼差しに、その意欲が削ぎ落とされた。
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