隠れ小径喫茶店から出ると、仙台の街はすっかり人がまばらになっていた。澤村が言うには繁華街と呼ばれる場所はもっと別なところにあるらしい。
「ホテルまでの道わかるか? 送ってくよ」
澤村の言葉に黒尾は頷いた。地図アプリもあるし、大体の見当はついているので本当は送ってもらわなくても平気だけどもう少し一緒にいたかった。
手を繋いでいいのかわからないまま二人で夜の街を歩く。数年前はよくコンビニの袋をぶらさげてお互いの家の近所を歩いていた。なんて贅沢な時間だったのだろう。
あのとき自分の気持ちに気付いていたら、という後悔は何百回もした。
だから自分の気持ちを知った今こそ絶対に後悔しないように行動した。告白したときは心臓が破裂しそうだったし、もう友達としても会えないかもしれないという不安でいっぱいだった。
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