限りある瞬間を抱きしめたいよ 眠れないとき、そっと寝返りを打ちスマートフォンを浮かび上がらせる。
時刻は22:14と何かをするには微妙な時間帯であり、なんとなく持て余した。
今日のぶんのトレーニングは済ませてあるし、走り込みに行くなら朝のほうがいい。
「オレも……別に寝起きが悪いほうでもないんですけどねぇ」
隣にいる要を起こさないようにそっと呟いた。
これぐらいでは起きないと知っているけれど念のため。
気遣いはあるに越したことはないし、別段それが苦痛ではないと気付いたときはいつだっただろうか。
「さざなみって意外と気が利きますよね……」
なんて訝しげに言われたことがある。心外だ。
所作や生き方がお上品なものではないと言い切るだけの雑さは持ち合わせているものの、人並みくらいの丁寧さはなくはないつもりだ。
1620