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    ゆり子

    @yurikobfaes

    SDのリョ三大好き。
    三受ならなんでも大好きです。

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    ゆり子

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    リョミワンドロワンライに初参加させて頂いた作品です。
    お題は「内緒」
    大学に合格した三井が宮城に真っ先に伝えにいく話。
    付き合っていない二人が本心を伝え合う話です。

    それは秘密の心の内 冬の寒さがピークとなる2月上旬、三井の大学の推薦入学の合格の通知が来た。
     一刻も早く宮城に報告したくてたまらなかった三井は、暗闇に包まれた夕方の部活が終わる時間帯に、部室へと駆け足で向かっていた。部室の前に着くと扉の隙間から蛍光灯の光が漏れている。宮城がいると確信した三井はそのままバタンと扉を勢いよく開けた。
    「宮城!! オレ大学合格したぜ!!」
     部室のベンチに座って日誌を書いていた宮城は、突然現れた三井に目を丸くして驚いた。
    「……え、あ〜……、そーなんスッね……おめでとう、ゴザイマス……」
     まるでこの世の終わりを前にしたような絶望的な顔をして、呪いのような苦渋に満ちた声で宮城は祝いの言葉を口にした。人気のない部室は外気温とほぼ変わらない寒さで、呼吸をする度に宮城の口から出て来る白い息があたかもため息の様に見えて三井はショックを受ける。
    「オレが合格して嬉しくないのかよ?」
    「……嬉しくない……」
     いじけて拗ねた小さな子供のように、三井から視線を外し手元の日誌をじっと見つめたまま宮城はボソリと言った。
     三井は宮城に一緒に喜んで欲しくて、誰より早く伝えたくて、取る物も取り敢えず駆けつけて来たというのに。思いもかけない宮城の反応に三井のテンションは一気に地の底まで下がる。
    「お前さぁ、先輩の幸せを祝えよ! 喜べよ!」
    「……だって……」
    「だって? 何だよ?!」
    「……オレ、三井サンと離れるの、寂しいし……」
     絞り出すような声で話す宮城がうち捨てられた仔犬のように見えて、切ない気持ちになる。三井は胸の奥から溢れ出る感情を抑えるように手のひらを胸に当て羽織っていた紺色のダッフルコートをぎゅうっと掴んだ。
    「オレだって寂しーよ……」
     高校生活三年の間、三井がバスケをする事が出来たのはほんの僅か。その少ない時間を共にし、誰よりも心開いた存在は宮城だけだった。あんなに酷い事をしたのに、全てを許して受け入れてくれた宮城の事を三井はとても大切に思っていた。何も無かったかのように、いつでもパスを回してくれる宮城とするバスケが楽しくてたまらなかった。気がつくといつも三井は宮城の側にいたし、宮城もいつも三井の側にいた。帰り道はほとんど毎日一緒に帰って、たわいもない話をして、笑い合って、たまに寄り道をして、ファミレスで食事をしたりして――。引退後も暇さえあれば部活に顔を出して一緒にバスケをした。そんな日常が当たり前になっていた。けれど楽しかったこの日々がもうすぐ終わってしまう。卒業という区切りが二人を離れ離れにしてしまう。それがとても寂しくて、そしてとても恐ろしかった。二人の間に存在するこの形容しがたい感情が一体何なのか、宮城も三井も心のどこかで気がついていた。でもそれは口に出してはいけない事だったから、世間一般で禁忌とされる事だと知っていたから、二人は何も言わなかった。けれど今、目の前で下を向いたままの宮城の真意を、心の内を、暴きたいと思ってしまった――。たとえそれが許されざる事なのだとしても。
     すでに書き終わったはずの日誌を見つめ続けている宮城の頬に両手を当て三井は上を向かせた。
    「…………」
     そこには瞳を潤ませ、何かを堪えるようにきつく唇を噛み締めている宮城の顔があった。
    「宮城……」
     三井が唇にそっと指を当てると宮城の体がびくりと震える。血が出るのではないかと心配になり、そのまま親指で口元の結び目を解くように触れると、宮城が三井の指をパクリと口に含んだ。三井の指が宮城の口の中へと入り込み、温かい舌がまるで愛撫するかのように指先を舐めた。体に電気が走ったような感覚がして、今度は三井の体がびくりと震えた。慌てて宮城の口から指を引き出すと唾液がつぅと引き、二人を繋いでいた糸がぷつりと切れた。突然の宮城の行為に驚き硬直した三井は手首を掴まれ、同じ所をペロリと舐められる。
    「おまっ……何してっ……汚ねーだろっ」
     宮城の行動に三井が慌てふためき手を離そうとするが、強い力で引き止められて動くことが出来なかった。
    「汚くない」
    「汚ねーって!」
     宮城が三井の手首を掴んだまま、今度は手のひらに唇を這わせた。暖かい息とふっくらとした宮城の唇が肌を掠める感覚に、三井の背筋がゾクソクとして力が抜けていく。
    「三井サンは全部、綺麗。すげー綺麗」
    「……はっ……オメー……おかしいんじゃねぇの……」
    「うん、おかしいよ。もうずっと、初めてアンタと出会った時から」
    「初めて会った時って……オレがお前にケンカ売った時だろ……」
    「違うよ。もっと、もっと昔から、ずっとアンタにおかしくなってる」
    「何だよ? いつの話だよ?」
     時折こうやって宮城は『昔のあんたは可愛かった』とか過去の自分を知っているかのような発言をするのが三井は不思議だった。『お前、なんで昔のオレのこと知ってんだよ?』と三井が聞いても、宮城はいつものらりくらりとはぐらかすばかり。宮城は中一の時に中二の三井と出会っていた事を、自分だけが覚えているのがどうにもこうにも悔しくて伝えようとしなかったからだ。
    「……内緒」
     三井を掴んでいた手をパッと離し、宮城が片眉を上げニヤリと笑った。不遜極まりない表情なのに、三井の心はときめきを感じてしまい心臓が早鐘を打った。宮城を屋上で集団リンチをした時に『お前のその歪んだ眉毛が気に入らねぇ』と言い放った言葉とはまるで正反対の今の気持ちに三井は愕然とする。
    「んだよそれ……」
    「三井サン、オレ、アンタとずっと一緒に居たい」
    「……宮城……」
     三井の瞳を捉えたまま宮城がはっきりと言葉を口にした。二人とも核心には触れず、けれど今まで頑なに隠されていた本心を互いに探り合う。
    「ねぇ? アンタは?」
     宮城の言葉を受け三井は途方に暮れる。――もう、伝えてもいいのだろうか? この想いを、全てを。――例えそれが罪なのだとしても。
    「オレも……オレもずっと一緒に居たいよ、宮城……」
    「本当に? 本当に本当?」
    「……本当だよ」
    「――オレずっと、ずっとアンタの事が好きだった」
     はじめの一歩を踏み出したのは宮城だった。
     ずっと分かっていた、けれどずっと分からないフリをしていた宮城の気持ちを、三井はとうとう聞くことができた。宮城の告白に三井の心が、身体中の全ての細胞が、喜びでうち震える。
    「……オレもずっと宮城、オマエの事が好きだったよ」
     三井は掴まれていた手と反対側の手で、宮城の手首を掴み引き寄せ口付けた。
     触れ合った唇からお互いの体温が伝わる。冷たかった唇はすぐに暖かくなり、閉じていた口をどちらからともなく開き舌を絡ませた。

     そうして宮城と三井は、今まで秘密にしていた心の内を唇から唇へと伝え合った。
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