生まれ変わってまた出会う話② ⚫︎第三話 嫉妬 ─瑞月─
授業の終わりを告げるチャイムが、ざわざわとうるさい教室に鳴り響く。
たった今猫猫のクラスで授業を終えたばかりの瑞月は教卓の前に立ち尽くしたまま、こっそりと唇を噛み締めていた。
──あの男は、いったい何なんだ。
いや何なんだって何だ。どこからどう見たって、俺の生徒だろう。
「この頃の経済は────」
その日の授業中、瑞月はすでに暗記済みの教科書を読み上げながら視線はちらちらと猫猫を追っていた。
時刻は昼下がり、うつらうつらと舟を漕ぎ涎を垂らす姿はたまらない。きっと教科書を読む自分の声に安心感を覚えて、知らず知らずのうちに眠気に誘われてしまったのだろう。
前世でも寝台で俺の話を聞きながら、いつの間にかすやすやと寝ていた妻を思い出す。口元を濡らす涎を拭ってやるのが、夫としての喜びの一つだった。
記憶はなくとも、きっと五感は覚えている。前世で一緒に過ごした声や匂いが、今の猫猫にも染み付いているのだろう。
「風邪薬として、錠剤が流通し始めたのもこの頃だと言われていて────」
可愛い奴め。そう思いながら上機嫌で授業を進めているうちに、瑞月ははたとあることに気が付いた。
──あいつ、薬草図鑑や生薬を眺めている時は、眠そうにしたことなんてなかったよな?
いつも悔しいくらいに目をキラキラとさせて、いくらもう休もうと誘ったって朝まで読み耽ることもザラだった。
それは、つまり。
「俺の話はつまらないってことかっ⁉︎」
「ぅわっ」
思わず朗読を中断して、教室で声を張り上げる。眠っていた猫猫は猫のようにびくりと飛び起きて、何が起きたのかと目をぱちくりさせた。
目も口もぽかんと開けた間の抜けた表情が可愛らしいが、同時に憎らしい。
「……漢」
「す、すみません」
「ああ、大いに反省しろ!」
瑞月は教師として、そして前世分の想いもほんの少しだけ上乗せして、寝起きの猫猫を叱り付けた。
「……今日はこれで終わり。居眠りしてた生徒は、放課後準備室に来るように」
気まずそうに目を逸らす女生徒を切長の目で睨み付けながら、その日の授業を締めくくる。終礼と同時にチャイムが鳴り響き、途端に教室はざわざわと騒めき出した。
教室に溢れる十代の若者らしい喧騒。それを横目に教材を片付けながら、瑞月はこっそり笑みをこぼしていた。
──先ほどは大きい声を出してしまったが、何だかんだ言って放課後に会う口実ができたのは僥倖だ。
二人で話す時間は貴重である。たまには仕事を押し付けず、ゆっくりとお互いの話をするのも良いかもしれない。
あいつが過去を思い出そうが出さまいが、想う気持ちに変わりはない。しかし歳の差や立場を考えると思い出してもらった方が結ばれる近道だろう。
声で、匂いで、空気感で。今日は五感に訴えながら、記憶を呼び起こすことにしよう。そう思いながら職員室に戻ろうとしたその時。
「娘娘ー」
教室の後方、窓際の席から聞こえてきた声。
瑞月は出口に向かおうとしていた足をぴたりと止め、素知らぬ顔で耳をそば立てた。
「ねぇ娘娘、化学の実験俺と組もうよー」
「すでに班が振り分けられているので」
「ええ、つれないなぁ」
鬱陶しがる猫猫に纏わり付くのは、重たい前髪でぎょろりとした大きな目を覆い隠す一人の男子高校生。後ろ髪は美容室で整えたように綺麗にマッシュに揃えられているけれど、きっと自らカットしたのだろう。
瑞月はあの男を随分前から知っている。前世から何かと気の障る人物、狂気の医官天祐だ。
「ねぇねぇじゃあさ、放課後寄り道しない? モルモットとかカエルとか観察しに。良いペットショップ知ってるんだ」
「しない。たった今先生に呼び出されたばっかりだし」
「ふぅん、先生にね」
訳知り顔のにやにやとした笑いが鼻につく。天祐はとにかく何を考えているのかよく分からない生徒で、教師としても手を焼いていた。
──やれ、実験と称して教室に大量の虫やネズミを持ち込んだとか。
──やれ、生徒や教師など誰から構わず、興味のあることは質問攻めにして困らせるとか。
前世を考えると刃物を持ち出して何かを解体していないだけマシなように思うが、奇行ぶりは健在だ。
そして何より一番目に余るのは、やたらと猫猫に付き纏うことである。明らかに相手にされていないのに、しつこく執拗に声を掛けている。
もどかしい。前世の自分であれば、すぐに猫猫の手を引いて『自分の妻』だと主張できた。でも、今はそれができない。
天祐は曲がりなりにも自分の生徒だし、七つも年下の未成年だ。そして何より大きな問題は、瑞月と猫猫は付き合ってすらいないということだ。
「……っ」
悔しさにぎゅっと唇を噛み締める。
正直なところ、教室という公の場所で周りの目を気にせずに自由に会話ができる天祐が羨ましい。
自分だってあんな風に猫猫に話しかけたい。どこへ行くにも隣を歩きたい。ひとときも離れたくない。もはや一緒に住みたい。今すぐに結婚したい。
誰もが見惚れる涼しい顔の裏側では、いつもぐるぐると煩悩が頭を駆け巡っている。複雑かつ単純な想いを抱えながら、一見親しげにも見える二人を無意識に睨み付けているとぎょろりとした目と視線がかち合った。
「……っ、」
目を合わせたいのはこいつじゃなくて、猫猫なのに。そんな風に思いながらも、瑞月は教師として余裕の笑みを浮かべる。
「あ、ねぇ猫猫」
天祐は一瞬目を見開いた後、こちらに向かってにやりと口元だけで笑った。そして視線を瑞月から猫猫へとスライドさせ、腕を伸ばす。
「肩に何かついてるから、取ってあげる」
瑞月に見せつけるように、男の手が猫猫の肩にぽんと触れた。
──それを目の当たりにした瞬間、駄目だった。
立場とか倫理観とか全部吹き飛んで、教材を教卓に放って教室を横切るように大股で駆ける。
たった今猫猫に触れた天祐の手を払いのけて二人の間に割って入ると、想像以上に切羽詰まった声が漏れ出た。
「っ、漢、手伝ってくれないか?」
「え、今ですか? 放課後ではなく?」
突然目の前に現れた焦った教師に、猫猫は少なからず驚いたようだ。いつもより少し眉の位置が高い。ずっと見てきた自分にはその微妙な変化が分かる。
「ああ今だ。今、急遽手伝いが必要になった」
「良いですけど……」
「先生ぇ、俺も手伝いましょうか?」
「……今は漢だけで大丈夫だ」
廊下に出るように猫猫を促しながら、瑞月は後ろを振り返った。今後二度とこのようなことがないように、しっかりと釘を刺すのを忘れてはいけない。
「天祐」
「何ですかぁ? 先生」
「気を付けろよ。クラスメイトだからって、簡単に女性に触れるんじゃない。セクハラだとか、色々言われる時代だからな」
教師然とした態度で毅然と言い放つ。しかし忠告は全く響かず、天祐はにやにやとした気色の悪い笑みを浮かべるばかり。
「えぇ? セクハラですか?」
「そうだ。しつこく付き纏うのもやめた方がいい」
「そんなこと言ったら、先生の方がよっぽどセクハラだと思うんですけど」
「は? 俺がセクハラ?」
「はい。女子高生と、距離がちょっとばかり近いと思いますよ」
予想外の言葉に面食らった。いつも生徒、特に女子生徒とは細心の注意を払って、なるべく接触を避けるようにしている。
不可抗力でくっついてこられることはあるが、すぐに距離を置いている。それをセクハラと言われたのなら、たまったもんじゃない。
瑞月は眉間に皺を寄せて首を振る。
「断じてそんなことをしたことはない。女子高生とは常に一線を引くようにしている」
「へぇ? 目の前のその子は、女子高生じゃないんですか?」
「目の前の……?」
天祐は人差し指で、一点を指差した。指先に導かれるように瑞月の視線がすっと下がる。
その先にいるのは、何やら言い争う二人を遠巻きに見ている猫猫。
「猫猫は? 女子高生では?」
「なっ、それは……っ、そうだが違くて」
「どうしましたぁ? 先生」
「漢は確かに、女子高生だが」
「……ふぅん、まぁ、別に良いですけど。きっと俺の気のせいですね。こちらのことは気にせず、お好きにどーぞ」
見ていておもしろいので。そう呟いてひらひらと手を振り、どこかへ歩き去る天祐。
瑞月は何も言えず、後ろ姿を呆然と見送る。
「先生? 手伝いは良いんですか? 席戻って良いですか?」
訝しげな表情で首を捻る猫猫を前に、これからはもっと気を付けよう。
──特に天祐の前では。
そう心に誓った瑞月だった。
⚫︎第四話 面倒ごと ─猫猫─
教師に目を付けられるだなんて、面倒なことこの上ない。
「漢さん、放課後付き合ってくれないか?」
「ま……漢、今日も居残りだぞ」
始業式早々呼び出され嫌々着いて行った時の態度が癪に触ったのか、それともその他の色々な行動が目に余るのか、瑞月は妙に突っかかってくる。
正直、やめていただきたい。
「……先生、他の生徒が手伝いをしたそうにこちらを見ていますが」
「いい、隠し撮りされたりSNSに投稿されたりしたくない」
「ああ……」
外面も顔も良いこの教師は、いまや学校中の女子生徒の憧れの的だ。熱狂的な生徒にストーカー紛いのことをされている現場もそういえば何度か見たことがある。
「その点おまえは心配がないだろう? 残念なことに、この顔に少しも興味がないことはわかっているからな」
「……ソンナコト、アリマセンヨ」
「こら、バレバレだ」
大きな拳で軽くコツンと小突かれた。一応抗議をしておこうと、痛くもない頭を抱え背の高い教師を見上げると。
「先生、体罰は反対です……、」
「ん?」
見上げた先、こちらを見るその瞳は慈愛に溢れた優しい色を浮かべていた。
(そんな目で見ないでほしい)
猫猫はその眼から逃れるように、ぷいと顔を逸らす。
──出会ってこのかた、瑞月の瞳が苦手だ。
時に突き刺すようなするどい視線で睨み付けられることもあれば、いっとう親しいもの見守るような柔らかな目線を向けられることもある。
「怒ったのか? 悪いな。でもおまえはいつも、これくらい気にしないだろう?」
「……ノートに書き溜めておいて、いざと言う時に校長に提出します」
「容赦ないな」
困ったようにこぼしながらもくだらない軽口が嬉しいのか、にわかに目尻を下げ大きな手で頭をぐしゃぐしゃにかき混ぜられる。
「ちょっと」
虫を払うように瑞月の腕を手の甲で叩き、猫猫は一歩後退り距離を置いて睨め付けた。
「だからやめてくださいって。私だってそのうちやり返しますよ?」
「本当か? それは楽しみだ」
「……」
いったい何が楽しみだというのだろうか。いまいち噛み合わない男にじっとりと胡乱な目を向けると、それはそれは嬉しそうな顔をされた。
「その目、やっぱり良いよな……」
「はぁ……」
結局この男には、何を言っても無駄である。猫猫はため息をつき首を振った。
(高校生活を平和に過ごすため、面倒ごととはなるべく距離を置くと決めていたのに)
瑞月ほど面倒ごとを体現したような人物はいないというのに、いつの間にか隣にいる時間が増えていた。放課後の手伝いに、ちょっとした小話。時々くれるご褒美としてのお菓子を食べる時間。
どうしてこうなったのかいまいちよくわからないが、いつの間にか二人でいる時間が増えていったのだ。
(これって大丈夫なのか?)
やましい気がなくとも、個人的に仲良くすべき相手ではない。自分たちは教師と生徒、それ以上でも以下でもないのだから。
(何事も踏み込みすぎないことが大事だろう)
猫猫はすくと立ち上がると、鞄を背負う。
「今日はもう帰ります」
「送る」
「遠慮します」
いーっと歯茎を見せて、筆舌に尽くしがたいほど醜悪な表情で威嚇をしてから出口の扉を開ける。猫猫なりの意思表示である。
「くっ、また明日な」
しかし相変わらず瑞月には通じていないようだ。
(振り向いたら負けだ)
笑いを堪える声を無視して、準備室を出る。階段を降りて玄関に向かい、騒つく校舎を出た。グラウンドに響き渡る運動部の掛け声を聞き流しながら歩く帰り道、その間ずっと頭から離れないのは先ほど別れたばかり教師のこと。
(それにしたってあの野郎、距離感がおかしいだろう)
天祐の言葉じゃないが、そう思うことが多々ある。いくら交流する機会が多いからといって、正しく教師と生徒の距離感なのか? と。
(友達じゃないんだから)
瑞月と話していると、七つも歳が違うはずなのにクラスメイトと話しているような気分になる。いや、クラスメイトよりももっと近い、身内と話しているような。
(弟……いや、飼い犬みたいなものか)
不本意にも不思議な居心地の良さを覚えるのは、きっと顔の良し悪しに頓着しない猫猫を珍しがった瑞月が、妙に懐いているからだろう。
女性相手に少し親しい態度をとれば、すぐに色恋に発展してしまう。そんな男からすれば、猫猫のような存在は気楽なのかもしれない。
(顔も家柄も良い男は大変だな……)
そのうち飽きるだろうから今は大目に見てやるか。そんな風に考えながら、家路に着いたしばらくあとのこと。
「瑞月先生、ここ教えて!」
「仕事終わり、おしゃれなバーに行きませんか? 瑞月先生」
今日も今日とて、あの教師は多くの女性に纏わり付かれている。制服の胸元が大きく開いた発育の良い元気いっぱいの女子高生に、華美な服装の色気たっぷりの女教師。
(よりどりみどり)
猫猫は一定の距離を置いて、渡り廊下の向こう側から冷めた目でその様子を眺めていた。するとめざとく視線に気付いたのか、切れ長の目とばちりと視線が合う。
「漢!」
目が合うと決まって大きな声で名前を呼んで、そそくさと逃げ込んでくる男。
(やっぱり犬だ)
瑞月はすばやく猫猫の隣に並び立つと決して手が触れないように注意を払いながら、女性たちに向かってこちらを指で指し示した。
「すみません、この生徒に指導があるので」
ていの良い女避けにするのはやめてほしい。そう思って高い位置にある顔をじっとりと睨め付けるも、瑞月はまったく気にしていない。
「ほら行くぞ、漢」
「……はい」
しぶしぶ話に乗ってやるが、正直言って不本意極まりない。その日の猫猫は、何故か特別に機嫌が悪かった。
「いつも悪いな」
「……」
「漢?」
「そう思うなら、ご自身の行動を見直してみては?」
二人でいつもの準備室に足を踏み入れて、カタンと扉が閉まった瞬間猫猫はけっと吐き捨てた。
「漢? 悪かったって」
「本当は、どう思ってるんだか」
「な……っ」
「何度も何度も言い寄られて、本当は嫌じゃないのでは?」
普段はあらゆることを受け流す猫猫の剥き出しの苛立ちに、瑞月は少なからず動揺していた。
「どうしたんだ?」
「毎度のことなので、わざとなのかなって」
「俺だって気を付けてはいるが……!」
「へぇ! 随分べったりとくっつかれていましたよね?」
目の前で瑞月が戸惑っていることはわかっていたが、一度開いた口は止まらない。
女子高生は胸を押し付けるように瑞月に腕を絡み付かせていた。女教師だって、これ見よがしに寄り添い肩を触れさせたりして。
「まんざらではないのでは?」
いつもはこんなこと絶対に言わないのに、今日は口が勝手に動いてしまう。瑞月に当たることじゃないと分かっているのに、苛立ちをぶつけずにはいられない。
(何でこんなことで、もやもやしなきゃいけないんだ)
制御できない黒い感情が心の中を覆い尽くす。だから嫌なんだ、面倒ごとに巻き込まれるのは。
ベタベタするなら見えないところで思う存分すれば良い。目の前で見せつけられて、不用意に心を乱してほしくない。
猫猫はどうにでもなれと、吐き捨てるように言った。
「瑞月先生って、本当によくモテますよね。今までどれだけ食ってきたんですか?」
「く、食うだって? はしたないぞ!」
「はぁ? じゃあもっとわかりやすく言いますね、どれだけヤッてきたんですか?」
「なっ……、」
瑞月の顔は真っ赤だ。思うように言葉が出ないようで、口をぱくぱくと動かしている。
ほら見ろ、言えないほど多くの女と肌を合わせているんじゃないか。ここに用はないとばかりに、出口の扉に手を掛けたところで大きな声が飛んできた。
「俺は未経験だ!」
「……はぁ?」
「聞こえなかったか? み、け、い、け、」
「あー! もう良いですから!」
廊下にも聞こえるくらいの声を出す瑞月の口を、猫猫は慌てて両手で塞ぐ。教師の貞操事情など、学校中に知れ渡らせるものではない。
「ん、むぐ」
「あ、すみません」
「はぁっ……、なぁ分かったか? 俺はまだ誰も食ったことはない!」
「先生、彼女いたことは……」
「ない!」
きっぱりはっきりとした良い返事に面食らう。百戦錬磨と思われている瑞月が未経験、彼女すらいたことないだって?
(そんな訳あるか?)
猫猫は胡乱な目を向けるが、ふとあることを思い出した。
──瑞月先生には、ずっと前から心に決めた相手がいる。
そんな噂を耳にしたことがあった。嘘か真か、瑞月に関しては日頃多くの噂が出回っていたし、そもそも興味がなくて気に留めていなかった。
だけれども、これに関しては本当のことなのかもしれない。
「先生、もしやずっと一途に好きな相手が……?」
「! ああそうだ!」
何かを期待するように、瑞月の顔が赤らむ。それでいてもじもじと照れた様子を見せた。
ああ、あの噂は本当だったのだ。猫猫はぽんと手を打ち、それから頭を下げる。
「やっぱり噂は本当だったのですね。女性に言い寄られてまんざらではないなどと言ってしまい、失礼しました」
「……待て、噂って何だ?」
嫌な予感がする。そんな焦れた表情で瑞月はこちらを見た。
「え? 前世の夫婦だとか言って、猫を一途に溺愛しているんですよね?」
「なっ……違、いや、違くないが、」
「良いと思いますよ、恋愛は自由ですから」
猫猫はうんうんと訳知り顔で頷きながら、滅多にない笑顔を見せた。
「応援しています」
「待て! おまえは絶対に勘違いしている!」
「では教室に戻ります」
「こら! 逃げるな!」
──瑞月の相手が猫なら、まあ良いか。
猫猫は上機嫌で、まるで逃げ足の早い猫のように準備室を後にした。