「歩、一緒に飯行かねえか」
今日は仕事が早く終わり、京極さんと食事に行くことになった。
「ちょっと待ってろ、今良さそうな店調べるから」
チラッとスマホを覗くと、京極さんは唐揚げのお店を調べていた。今日はレモンをかけるか聞いてくれるだろうか…いや、それはない。どうせレモンをかける理由は「さっぱりして美味しいから〜」だろう。…アンコンシャスバイアス。京極さんが調べている間に色々考えていると、何やら気配を感じた。
「わあーーお姉さんの髪の毛きれいー」
小さな女の子達が僕と京極さんの周りに集まってきた。めんどくさい、京極さんとの時間を奪わないでくれ。
「おっ、そうかお姉さんじゃなくてお兄さんなんだけどな」
子供達は一斉に目を丸くした。無理もない、だって京極さんは美人なんだから。
「そうなのーてっきり眼鏡のお兄さんの彼女だと思った」
…は自分が京極さんの彼氏だというのか…というかそんなに馴れ馴れしく京極さんの髪の毛に触れるな京極さんもそんなに気安く触らせるな
「だっはっは聞いたか歩俺がお前の彼女だってよ……おーい歩、お前顔こえーぞ…」
京極さんに指摘されて我に返った。無意識に子供達を睨みつけていたらしい。
「じゃあねお兄さん、バイバーイ」
「おうもうすぐ暗くなるから気をつけて帰れよ」
優しく手を振り返す京極さんに子供達はメロメロになっていた。子供達さえもこの短時間で魅了するなんて…。こういうことをすぐにするから京極さんは気づかぬうちに周りの人達を何人も落としているんですよ、と言いたくなったが我慢した。いい加減気付け鈍感上司
「…にしても歩が彼氏かー。歩とはずっと一緒にいるから、案外彼氏と彼女であってるかもな…なんつって」
冗談のつもりで言ったとは分かっていたが、少しドキッとしてしまった。
「…おい、何赤くなってんだよ。こっちも照れるだろ…この話止めた早く飯行くぞーー」
そう言って京極さんはそそくさと歩き出した。自分も急いで後を追うと、前を歩く京極さんの耳が少し赤くなっていた。…さっきの話は冗談なのか、それとも…この人の心は、本当によくわからない。