京極さんと二人で調査の現場まで車で移動していた。これで今年の京極さんとの仕事は終わりだ。
「も〜い～くつね～る～と～♪おしょ～がつ〜♪」
なんだなんだ。もういくつねるとお正月そんな分かりきったことを。
「急に変な歌を歌わないでください」
「変じゃねえよお正月には凧揚げて、駒を回して遊びましょう」
急にどうしましたかこのあと大事な調査があるんですけど
「嫌です」
「こーれーは歌詞だ」
「京極さんが今考えた歌じゃないんですか」
「んなわけあるか」
一度も聞いたことがない……やはり京極さんの即興ではでも京極さんがドン引きしているから、僕が知らないだけなのか…デニスに聞こう。
「ジェネレーションギャップってやつか…」
「そんなに年離れてないですよね」
「幼稚園の時歌わなかったのか」
「歌いませんよそんな歌」
「……お前日本生まれだよな」
そういう無意識下の決めつけをなんていうんでしたっけ、京極さん
「そうですけど……京極さん、日本人なら全員知ってると思ってたんですかそういうのはアンコンシャ」
「だあーーー、分かった分かった」
「最後まで言わせてくださいよ」
何回言うんだコイツって顔していますけど、京極さんが悪いんですからねっていうか途中で遮るとか僕に興味無いんですか
「お前まさかお坊ちゃんか庶民的な曲なんて聞いたことない感じ…」
「普通の家庭ですよ」
「嘘つけ絶対上品なやつと暮らしてただろ」
……上品なやつ……ねえ。
「歩の幼少期ってどんな感じだったんだ」
「それは……」
デニスと過ごしていたなんて言ったら京極さんはどんな反応をするんだろう。とても見てみたいがここで怪しい動きをするのはまずい。嘘をでっち上げようか。
「いやいや、何でもねえ……すまん、勝手に踏み込んだこと聞いちまって」
あ、考え過ぎたせいで京極さんに気を遣わせてしまった。
「大丈夫ですけど…」
あー気まず、話題を変えたほうが良いか。だが先に京極さんが口を開いた。
「おそらく全然違う幼少期を過ごした俺とお前が、こうやって一緒にいるのすげえよな…もしかして、赤い糸で繋がってんのか」
えっ……赤い糸って運命の恋の相手と繋がっている糸のことじゃないですか。
「……何馬鹿なこと言ってるんですかそういうことは本当に好きな人にしか言っちゃだめですよ」
「ははっ、すまんすまん」
京極さんそういうところですよ。僕に興味無いくせに、期待させるようなこと言って…ムカつく。
「京極さん、ちゃんと前見て下さい。信号変わりましたよ」
「ヤベッ、ぼーっとしてたわ」
まあ、心配いりませんよ。だって僕と京極さんは赤い糸よりも強い、鎖で繋がれていますからね。繋いだのは自分ですが。京極さんには、僕のことを死ぬまで追いかけてもらいますよ。
「は～や～くうこ～い～こ～い～おしょ～が～つ～♪」