「哲太さん、明日は大晦日ですね」
「そうだな、あっという間に今年も終わっちまうのか」
人生の中で最も密度の濃い一年だった。ファントムを追い求め、ファントムと繋がりのあるデニスの存在を知った。斗真という心強い仲間ができた……同時に、最愛の部下を失った。その後警察を辞め、ルシカと斗真と行動を共にすることになった。本当に色々なことがあったな……
「明日はどのようにお過ごしになりますか」
「俺…今年は一人でテレビ見ようかなー」
今年…は。ここ数年、一緒に年を越していた歩はもういない……やべっ、なんか泣きそうになってきた。堪えろ俺目の前にギィがいんだぞ歩が死んでもう数ヶ月経ったのに、情けねえ。
「そういうギィはどうすんだ年越す瞬間とか変なBGMでも流して踊ってそーだな…ハハハッ、想像したら笑っちまうよ」
「…哲太さん、辛いですよね」
あれ、顔に出さないようにしていたのに……さすがだな、ギイ。お前には全てお見通しか。
「別に大丈夫だよ。すまねえ、心配かけちまって」
「いえいえ……あの、もしよろしければ明日年越しパーティしませんか」
「年越しパーティ」
「はい、今年の最後は哲太さんと過ごしたいなと思っていたので…良いですか」
俺に気を遣ってくれたんだろうか。ギィの優しさに再び涙腺が緩んじまう…くそっ
「…ありがとう、ギィ」
「では、明日ta-taでお待ちしています」
そして大晦日の夜、俺はta-taを訪れた。ドアを開けると、ハイテンションのギィが迎えてくれた。
「お待ちしていましたよ今日は思いっきり楽しみましょう」
「おうっ」
年越しまで俺とギィは酒を飲みながら話したり、ダーツやビリヤードで遊んだりした。
「よっしゃーーーー勝ったぞおおおお」
ギィ強すぎ…今まで俺何連敗してたんだ
「やっと勝てたぜ、ギィ」
あ、嬉しすぎてはしゃいじまった。ギィが何とも言いようがない表情をしている。
「すまんすまん、舞い上がっちまって…」
「いえいえ、嬉しいんです。哲太さんには笑顔が一番ですね」
「…ヘヘっ、ギィもな」
楽しい時間はあっという間に過ぎるんだな。気づけばもう年越しの時間だ。
「いよいよですね、哲太さん。年が明けますよーー」
残り10秒。緊張してきた…今年が終わっちまう。俺とギィでカウントダウンを始める。
「「54321…明けましておめでとー」」
「今年もよろしくな、ギィ」
「哲太さん、よろしくお願いします」
今年はどんな一年になるんだろうか……ファントムに辿り着けますように。
「さぁ酒飲むぞーーー」
気がつくと、俺は自分のベッドで横になっていた。午前10時。急いで起き上がると、ベッドの上に何やらメッセージカードが置かれていることに気づいた。
『おはようございます、哲太さん。急遽開いた年越しパーティに参加してくださりありがとうございましたお陰様で最高の時間を過ごせました今年はルシカさんと斗真さんもお誘いしたいですねまたお待ちしております』
パーティの後、酔い潰れた俺をギィが家まで運んでくれたのか…申し訳ねえ。
「……昨日は楽しかったなぁ」
久しぶりに夜を笑って過ごせた気がする…出来れば、アイツとも一緒に年を越したかったな。俺は愛していた亡き部下を思い、天を仰いだ。