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    キユ(空気な草)

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    POIPOI 17

    第3回飯受けワンドロ P飯でお題【頭を撫でる】を書かせていただきました。

    #腐向け
    Rot
    #P飯

    ご褒美よこせ 悟飯の日常生活は一般的な人より激務なことが多い。それを本人は苦に思ってはいない。長年願い続けた学者になるという夢。叶った夢に喜びを感じながら日々過ごしている。
     仕事が楽しい、新たな発見を見つけることへの興奮。一分一秒が勿体なくて部屋に引きこもる毎日。気を探ればすぐ近くに愛しい存在を感じることも出来てしまうので引きこもり生活に拍車がかかる。
    「悟飯!いい加減に出てこい!」
     それを快く思わないのがピッコロだ。夕飯の時間になっても部屋から出てこない家主に喝を入れようと勢い良く扉を開いた。
    「すーー……」
    「寝ているのか……」
     ソファの上に横になり睡眠をとっている悟飯がいる。いつから寝ているのかは定かではないが机に置かれたマグカップや立ち上げたままのパソコンの様子からして仮眠のつもりだったのだろう。本人の気づかぬ間に疲労をためていた身体は少しの仮眠では足りなかったようだ。
     乱暴に開けた扉を今度は優しく閉じた。起こさなくてはいけないと頭の中で考えていても、折角穏やかに寝ているのを邪魔したくないと身体が勝手にそう動いた。
     近づくと眼鏡をかけたままだったので起こさぬように優しく外して横に置く。あと数分だけ待ってやろう。その後で叩き起こして栄養を沢山摂取させねばならない。
     ピッコロは折角なら待機している数分間、久々に一人で愛しき存在を堪能したいと思った。膝をつき、大きな身体を縮こませて顔を近づけていく。
     悟飯の顔は普段より白いように見える。今度は何日徹夜をしたのだろうか。何度注意しても続ける無茶にそろそろ本気で叱りつけてやろうかと思案していると、悟飯の瞼がぴくりと動き出した。
    「ん……あれ?ピッコロさんだ……」
     起こす前に起きてしまった。元々数分間の独り占めのつもりだったが予想以上に早く終わってしまいほんの少し残念だと気を落とすピッコロがいる。
    「どぉしたんですか……?よしよし……げんきになぁれ……」
    「!?」
     白い手がピッコロの頭を撫でている。子供をあやすかの様な行動にピッコロの身体は固まった。
     何度も左右に動かされる手。頭を撫でられるなど初めての経験だった。修行でついたマメで少しゴツゴツとした手の感触がずっと頭の上にある。初めて体験するその感触はむず痒く、温かい。
    「いいこ……いい、こ……かなしまないで……」
    「……悲しんでなどいない」
     悲しんではいない、ただ少し残念に感じただけだ。
    「そぉなんですか……?じゃあ、なでなで……いやですか?」
    「…………嫌では、ない。心地良い……」
    「あは……じゃぁ、いつも……がんばってる、ピッコロさんに……ごほうびのなでなでしま……す……」
     撫でると言いながら、睡眠欲に打ち勝てずに再び寝息を立てている。頭に乗せられていた手はぽとりとソファに落ちていった。
    「……ご褒美はどうした……」
     静かな部屋に寂し気な声がぽそり、と消えていった。

            ※※※

     じ〜〜〜〜〜〜。
    「あの、ピッコロさん?ボクまた何かしちゃいましたか?」
     ここ数日、悟飯は只管自分を見つめてくるピッコロに悩まされていた。最初は大好きな人が自分を見てくれてる、嬉しいなぁと喜んでいたがそれが連日続くと嬉しさよりも困惑が勝ってしまう。
     見つめてくるだけで何も言わない、何もしてこない。理由が不明な為にどう反応を返せばいいのかわからない悟飯は四日程耐えてついに本日本人に問いかけることにしたのだった。
    「…………別に」
    (全然、別にって顔じゃないですピッコロさん……)
     言葉とは裏腹に眉間に深い皺を刻み、不満ありますと言っているような表情だ。自分で原因を見つけたいが全く思い当たる節がない。少し前に徹夜して怒られたが、それ以降は仕事も落ち着き穏やかな日々を過ごしている。パンの送り迎えもキッチリやっているし修行だって……多少はしている。
     もっと追求したいがこの様子だとやりすぎるときっと拗ねてしまう。また後日、機嫌が良いときにでも聞き直そうとそれ以上の追求はしなかった。

     追求を断念してからさらに数日、結局まだ原因は不明のままだった。視線は引き続き向けられているし不満げな顔も継続中である。
     しかし一つだけヒントは得た。それはピッコロの家にパンと訪れて3人で修行をしていたときのことだ。三歳とは思えない動きを見せる自慢の娘が誇らしくて、可愛くて、「パンはよく頑張るなぁ」と頭に手を乗せた。その瞬間、ピッコロの気が膨らんで、乱れた。本当に一瞬の出来事で、パンは気づいていなかった。それくらいに刹那の間の出来事。
     撫でる手を止めてピッコロの方を見ると最近良く見る不満げな表情を浮かべていた。話しかけてもそれ以上の変化はない。あの一瞬の出来事だけが数日間で得た収穫だった。
     妻と娘が寝静まった頃、自室のソファに腰掛けながら頭の中であの瞬間を反芻する。娘の成長、それに感じた喜び、可愛い娘の頭を撫でて、褒めた。その直後に起きたピッコロの気の乱れ。
    (褒め方が良くなかった?でも視線はあの日より前から始まっている)
     どれだけ考えても答えは見つからない。師匠の様に心を読むことが出来れば簡単なのにと小さな溜息を吐いた。
     薄暗い部屋の中で目を瞑りながら長考していると、眠気に襲われた。寝室に行かなくてはと考えはいても身体は重くなっていき言う事を聞きそうにない。眠りに落ちるまであと数秒も掛からないだろうというタイミングで窓からキィ、と馴染みのある音がした。
    (ピッコロさんだ……起きなきゃ……でも眠い) 
    「窓の鍵が開いているぞ無用心め。またこんな所で寝ているのか」
     悟飯が窓を開けに起き上がる前に待ちきれなくなったピッコロが室内へと入ってきた。一直線にソファまで近付いて悟飯の目の前でしゃがみこんで様子をうかがっているのが気配で理解できた。
    (どうしよう、起きるタイミング逃してしまった)
    「……のか?」
     静かな声で何かを言っている。全てを聞き取ることは出来なかったが何かを問いかけるかのような台詞に聞こえた気がした。
    (ん?右手を掴まれた?)
     ソファにだらんと置いていた腕が自分の意志とは無関係に動き出した。今そんなことが可能なのは目の前にいるピッコロしかいない。優しい手つきで持ち上げられた手が前へ前へと引っ張られていき……。

    ぽふん

    「…………いい子…………いい子」
    (!?)
     掌が丸みを帯びた物体にぶつかったと思ったら前後左右に動かされる。この動き、そしてピッコロの発言から今何が行われているかを理解するのはあっという間だった。
    (頭、撫でてる!?ピッコロさんが!?ボクの手を使って!?)
     悟飯の頭の中は予想外の緊急事態に大混乱していた。そんな間にもピッコロによる強制頭撫で撫では続けられている。
    (落ちつけボク!目を開けるなボク!今開けたらピッコロさんは恥ずかしがって一ヶ月は顔を見せてくれなくなってしまう!耐えろボク!ピッコロさんどうかボクの心は読まないでくださいね!)
     心を読まれたら起きていることが即座にバレてしまう。この滅多にないピッコロからのデレを堪能するためには眠ったふりを続けなくてはならない。悟飯は今までにない位の集中力で気を正常に保ち続けている。
    (あれ?この感触、ボク覚えがある……)
     全力の無心を続けていると、一つの疑問が浮上した。悟飯は人生で一度もピッコロの頭を撫でたことはない。撫でたいと思ったことはあるが、身長差があるしピッコロは歳上だ。更に言えば本人の性格上たとえどんなに可愛い素振りを見せようとも悟飯に撫でさせはしないだろう。ならば何故、感触を知っているのか。
     眠ったふりを続けながら必死に考えていく。すると数日前の出来事が朧気ながらではあるが蘇ってきた。

    『いいこ……いい、こ……かなしまないで……』

    『あは……じゃぁ、いつも……がんばってる、ピッコロさんに……ごほうびのなでなでしま……す……』

    (撫でてたー!ボク!寝ぼけながらピッコロさんの頭撫でてたー!)
     一度思い出してしまえば頭の回転の早い悟飯には全ての謎が次々に解けていく。
     何故視線を感じたのか。何故不満げな表情を浮かべていたのか。何故パンの頭を撫でている時に気が乱れたのか。何故今悟飯の手で頭を撫でているのか。
    (ご褒美貰えなくてしょげてたんだー!拗ねてたんだー!ご褒美あげる前に寝落ちしたボクの馬鹿ー!)
     なんということだろうか、最初からある程度予想はしていたがやはり全ての元凶は自分にあったのだと覚った。
     悟飯脳内会議で判決は死刑……と言いたいところだがそんなことをしたら目の前の愛しい人が悲しむので否決される。しかし大罪を犯したことにかわりはない。
     罪を犯したのならば、償わなければならない。目には目を、歯には歯を、撫で撫でには撫で撫でだ。
    「っ!?お前、いつの間に起きてー!?」
     カッ!と目を全開まで開くとそこには頬を真っ赤に染めた大好きな人。その人に言う台詞は決まっていた。

    「やり直しさせてください!」
     ピッコロさん!いい子ー!と悟飯の大声が家中に木霊した。





     
     
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