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    悪魔🟥🟥×聖職者(?)🟩🟩。結。ほんのちょっとえろとぐろ。

    #マリルイ
    marijuana

    君に幸あれそれはあまりにも素早い対応だった。
    マリオがルイージを犯し穢した翌日には教会本部から兵団が町へ派遣されていた。金属音を鳴らして歩む白騎士団に囲まれて見るからに偉そうな顔と態度の神父数人がやってきた時の町の様子といったら、魔物の大群が押し寄せてきたものと大差がなかった。通りすがる町民に挨拶すら交わすことなく堂々と進んでいく彼らはルイージとエルのいる教会へ。そこで何を言われたのか何をされたのか誰も知らないが、彼らが町を出ていく際にルイージとエルを拘束し連行していくを見て、只事ではないと町民達は上へ下へと大騒ぎ。その大騒動をドクターは静かに観察し、考察していた。
    「法力は男女共に純潔である者にしか宿らない力。それを失いかつ神を信仰していない彼に存在価値は無い、相方共々冒涜者として処刑、と言ったところか。この対応の早さから察するに彼らを虎視眈々と狙っていたのは我らだけではなかったようだな」
    見せしめに処す為なのか。はたまた別の目的に利用する為なのか。どちらにせよあの特異体質な聖職者二人を深い眼差しで見守っていただなんて絵空事。教会は清廉潔白な場所ではなかったと言う事だ。
    「あの警備の固さからしてボクが単体で侵入出来る程度の『浅い所』で済むような話ではなさそうだ。全く、本当に面倒な事をしてくれたね」
    「…………悪かったよ…………」
    部屋の窓付近に立って外を観察していたドクターは、机に突っ伏しているマリオに悪態をつく。
    「勝手な真似はするなよとボクはしっかりと君に伝えた筈だが?その禁を犯して、挙げ句神父も犯して、状況に混沌を招く。まさしく『悪魔』とは君の事だよ」
    「ちくちくちくちく嫌味刺してくる君もだからな」
    頭を上げて溜息を吐くマリオ。不味い事をしてしまったという自覚はある。しかしながらあの時のあの激情はどうにもコントロール出来るものではなかったのだ。
    「いつから『誘惑』をかけられていた?」
    「…………わからない…………何度思い返してもこれだというキッカケが見つからないんだ…………」
    片手で顔を抑えるマリオはげんなりとした表情を浮かべていて、その言葉に嘘は無いとドクターは判断する。
    「あいつの本当の姿は一体何なんだ?」
    悠久の時を生き、数々の呪術を扱うエリート悪魔が全く悟られる事無く呪術をかけられるなんて、あの間の抜けた笑顔の裏には何が潜んでいるのやら。
    「とかく、我々も教会の本部へ向かうぞ。二人を取り戻さねばならん。反省なら移動中にしていろ」
    「クッソ〜!!」
    悪魔二人は町を文字通り飛び出し、聖職者二人が連れて行かれた大都会へ向かった。

    ドクターの読みはあたっていた。聖職者二人は大都市の一等地に立つ豪勢な教会の奥、そのまた奥深くの真の聖職者しか立ち入る事の許されない最深部にある牢獄の中へ幽閉されていた。ルイージとエルは服のような布切れ一枚を羽織り、手枷足枷を嵌められて二人仲良く並んで牢屋の中。
    「僕らは贄になるんだって。降臨式で降りてきた神様への贈り物で、現世での容れ物だってさ」
    「へぇ〜」
    すりすりと手枷を撫でながらルイージは自分達の末路を事もなく言う。それにエルは心底つまらなそうに返した。
    「あんまり驚いてないね?」
    「ここはカミサマダイスキ人間の集まりだぞ?そんな奴らの考える事なんて大体想像つくだろ。心の底から信じてるってったって、それがしっかりと目に見える形になれば無神論者への説得力も増すし、外部への教会の圧力は今まで以上に強いものになる。夜はベッドへ連れ込めるしな」
    「呼び出してベッドにまで連れ込んでおいて添い寝で済ますのぉ?」
    「ホンモノの聖職者ならなぁ」
    不謹慎な会話に監視の視線が突き刺さる中、二人は壁に寄りかかって呑気に会話をしていた。
    「…………君は僕を怒らないんだね。今君がここにいるのは僕のせいなのに」
    「俺は勉強してこなかったがよ、レイプ被害者にキレ散らかす程馬鹿じゃねぇわ」
    「エルは本当にいつでも優しいね」
    「優しかねぇよ。苛ついてはいるんだ」
    「え」
    「あのクソったれ悪魔を即刻撃ち殺さなかった、お前を守れなかった自分に」
    「…………エル…………」
    「大丈夫だルイージ。お前だけは俺がどうにかしてここから逃がしてやっからよ…………例え人殺しになっても」
    「…………そう」
    エルの力強い言葉にルイージはそっと呟いた。
    「そうか、君は『人を殺める事』が『条件』になってるのか。同じ肉体を分かち合った僕達なのに条件はそれぞれ異なるってのは、不思議だねぇ〜」
    「?何言ってんだルイー…………!?」
    謎の発言をするルイージにエルは首を傾げながらルイージへ視線を向けて、そして驚愕に目を見開いた。
    「ルイージ、お前」
    「ん?」
    「その目!?」
    「ああ、これ」
    エルの言葉を待たずしてルイージはごく自然に己の左眼に触れていた。
    それは慈愛の青空色ではなく、瞬く金眼に変化していた。
    「僕の条件は『不浄の存在に身を穢される事』。だからあれだけ高位の悪魔が相手ならキス一回で済む話だったんだけど、どうも彼は本気で僕に惚れてたみたいで、呪術が効きすぎたみたいでさぁ…………まあ、悪魔とのエッチに少し興味あったしいいかなって。それでたっぷり穢されたものだから、その分の有り余った力が漏れてきちゃうんだ」
    「…………何を言ってんだ…………?」
    先程から淡々と意味不明な説明を垂れる双子の兄に、双子の弟は困惑している。そんなエルを見て、ルイージはにこりと笑いかけた。
    「う〜ん、本当はもう少し遊んでいたかったけど、エルをこれ以上困らせたい訳でも無いし、もういっか!」
    そう言い放ったルイージはエルの腕の中へべったりとしなだれかかった。突然の行動にエルはおろか監視達まで身を強張らせる中で、ルイージはそっとエルの耳元で囁く。
    「今の僕ならこのまま君を目醒めさせる事が出来るから…………僕を怖がらないで」
    その声色は酷く心地の良いものだった。
    「おいで」
    そうしてルイージはエルに口付けをした。唾液をたっぷりと絡んだ舌が口内に侵入した時、エルの目は更に見開かれる。されどルイージを突き放す事はせず、その舌が愛撫をすればするほどエルの瞳は濁り、蕩け始め、そしてルイージとは反対の右眼の虹彩の色が変わっていった。
    ルイージと同じ、暗黒の中でも禍々しく毒々しく光り目立つ金眼へ。
    「っ!」
    「…………ぁ…………」
    されるがままだったエルの舌がやり返し始めれば、ルイージの口から嬌声が漏れた。
    くちゅくちゅ、と水音と鳴らして口付けを続ける二人の体からそろりそろりと溢れ出てきていた『得体の知れない濃厚な冷たい何かの気配』。それを監視達が感じ取った時には既に時遅く、びくり、と体を跳ねさせた後にばったりと地面に倒れ込んだと思えば、そのまま動かなくなった。
    ドライアイスから溢れ出る二酸化炭素が地に這いずる様にその気配が部屋一杯を満たし終えた時、二人はようやく唇を離した。
    「っはぁ…………」
    「ん…………」
    二人は互いに顎に垂れた唾液を舐め取る。
    「…………思い出した?」
    「おう…………全部思い出したよ」
    「ほんとに?上手くいって良かった!」
    「悪かった。手間かけさせたな」
    「そんな事ないよぉ」
    ニコニコと嬉しそうに笑うルイージ。それにエルもつられて笑った。
    …………徐ろに、二人の体が光り輝いていく。それはどんどんと強くなっていく。
    「さあ、使命を果たす時だよ。エル」
    「わかってるさ。ルー」
    全てが光に包まれる瞬間、二人はまた深く口付けをしていた。

    その頃悪魔二人は大都会の入り口まで近付いて、顔を顰めていた。
    「以前来た時より聖気が濃くなっている…………これじゃ教会どころか都市へ入れもしないぞ」
    「って事は、教会の連中が集まって裏で何かやり始めているのかい?」
    「その可能性は高いな。この聖気が魔除けなのか、それとも自然に高まったものなのかは定かではないが…………」
    マリオとドクターがどうにかして入り口を見つけられないかと模索していた時のだった。
    都市から何かが上空へ打ち上がった。
    「!」
    目撃していたマリオが目を見張る。
    花火のように打ち上がったのは輝く光の塊だった。それはある高さまで行くと美しく開花。
    そうして現れたのは二人の天使。
    上等なシルクで出来たドレス調の服を身に纏い、背中には純白の羽根が四枚ずつ。仄かに発光しているそれはまさしく天使の証であり、恐らく都市にいる人間達は突如として現れた神の使いに揃って上を向いてぽかんと口を開けているだろう。
    だが悪魔二人の反応は違った。二人は人間の擬態を瞬時に解くと、魔王の使命も己のプライドも何もかもを投げ捨ててその場から全速力で逃げ出したのだ。
    その天使二人の頭に鋭い二本の黒光りする角が生えているのを確認して。
    「もっと早く飛べドクターッ!!巻き込まれるぞッ!!!」
    「わかってるッッ!!!」
    悪魔二人が死物狂いで逃走する中、天使二人はそっと手と手を合わせた。それから目と目を合わせる。
    「…………エル…………」
    「…………ルー…………」
    微笑みあったルイージとエルは重ねた手を互いに強く握ると、空いた手を空へ捧げて、唱えた。

    「「汝に祝福あれ」」

    その言葉を聞いた者。その音を感じ取った者。その波長に鼓膜を揺らした者。その者全てがこの世から消えた。行方不明だの蒸発だの、そんな生温いものではない。何一つ残さず、何の跡形もなく、後も濁さず、完全に消失した。着ていた服も持っていた物も食べていた物も飲んでいた物も、聖職者も無神論者も労働者も浮浪者も犯罪者も家庭持ちも独身も男も女も老人も老婆も子供も新生児も犬も猫も馬も鳥も鼠も虫も草も関係なく言葉の届いた範囲内全ての生命皆平等に儚く美しく一瞬にして、消え失せてしまった。
    何千万人と住んでいた大都市はたった一言で壊滅してしまったのだ。

    …………呪術から命からがら逃げ切った悪魔二人はただただ呆然と都市を見つめていた。
    「…………これほど…………までとは…………」
    何とか絞り出したようなドクターの声にマリオは反応できなかった。こんな人智はおろか悪魔の力さえ易易と超える力をまざまざと見せつけられて、言葉が出る方がおかしい。
    だが、いつまでもそうはしていられない。
    「やあ二人共。やっぱり来てたんだね」
    『背後』からの声に悪魔二人は顔を強張らせてゆっくりと振り返る。そこにはいつもの温和な笑顔を浮かべているルイージと、いつもの顰め面を浮かべているエルがいた。
    そう。山場はここからなのだ。
    「今の見ててくれてた?初めてにしては上出来だったでしょ?」
    ニコニコと語るルイージ。シルクの服と白い羽根の装いは完璧な天使なのだが、金色に光る左眼と頭に生える鋭い二本の角がそれに違和感を与えてくる。そして悪魔二人はその違和感の正体を知っていた。
    「ワルの先輩としてどんなものだったか感想を聞きたいな」
    「あ、ぁあ、すごかった、よ」
    意見を求められ、マリオはどもりながらも答えた。
    「僕には到底真似が出来ない呪術だったよ」
    「ほんとに?」
    「ほんとさ…………流石って感じ、で」
    「ん〜ふふふっ!」
    ルイージは手の平を口にあてて嬉しそうに笑っている。それを見ながらマリオは冷や汗が止まらない。とにかくここは穏便に済ませて乗り切らないといけない。そうしないと次に消されるのは自分達だ。
    「じゃあさ、この次は…………」
    「ルー、もう行かないと」
    「えっ!?」
    会話を続けようとしたルイージをエルがやんわりと止めた。
    「あれ?もうそんな時間?」
    「この世界の時間の流れは異常な程早いって知ってるだろ。一分一秒無駄に出来ねぇってさ」
    「ああ、そうだったね」
    「そう、だから」
    と言ってエルは腰の裏から黄金に輝く大口径の拳銃を引き抜くと、ぴたりとドクターの眉間に銃口を向けた。ドクターの目が極限まで見開かれ、喉の奥が恐怖に引き攣った。
    「最後にいい想い出を作ってかねぇとよ」
    轟音と共にドクターの頭部が爆発した。吹き飛んだ脳やら骨やらの欠片がマリオにびちゃびちゃと付着する。支えを失ったドクターの体がぐらりと後ろに傾いて墜落しかけ、それを反射的にマリオは抱え込んでいた。ぴく、ぴく、と痙攣しているバディの首無しの肉体にマリオが背筋を凍らしている間に、エルは金の右眼を光らせながら銃口から立ち昇る煙をふう、と吹く。
    「一度はそのムカつくお顔を吹き飛ばしてやりてぇってずっと思ってたんだよォ」
    「いーなー。僕もなんか想い出作りたいなぁ〜」
    「もう一匹いるじゃん。好きにしろよ」
    「う〜〜んと、じゃあ…………」
    「ちょ、ちょっと待ってくれ!!僕らは君達にこれっぽっちも敵意はないんだ!!見逃してくれないかッッ!!」
    「よし!きめたっ!」
    マリオの悲痛な命乞いは聞き届かず、ルイージは閃いたと言わんばかりに手を打つと、右手を前へ差し出した。そのまま空を握り込み、下へ引く。それは何かをもぎ取る動作に似ていた。
    瞬間、マリオの右足が消えた。
    「!!!」
    ブツ、と足の千切れる音が生々しく体内に残り、悪寒は更に激しさを増す。下を見れば右足が入っていた筈の右裾は厚みを無くし、風に吹かれるままにひらひらと漂っている。痛みが無いのがまた恐怖を煽った。
    「これを想い出にするよ」
    そして、ルイージが自身の右足だけを握って愛でるように撫でている光景に、泣きそうになった。
    「んなもん持ち帰ってどーすんだ」
    「そうだねぇ。これから作る教団の信者さん達に御神体として崇めさせてみようか」
    「インテリアかよ」
    「そんなもんでしょ。記念品なんて」
    くるくると右足をもて遊びながらルイージは呟いた。その金と青の瞳は爛々とルンルンと熱を帯びて弧を描いていた。
    「いいよねマリオ。そう使っても」
    「…………いいよ」
    「あ?何泣いてんのお前」
    エルの呆れた指摘の通り、悪魔ははらはらと泣いていた。
    「っえ!?え?何で泣いてるの?お腹痛い?どうしたの?大丈夫?」
    「…………好きにしてくれよもう…………さっさと目の前から消えてくれ…………」
    「どうしようエル。どうしたらいいかな」
    「何か辛ぇ事でもあったんじゃね?」
    「悪魔が泣くほどの辛い事って何だろう…………エル何かわかる?」
    「いや全然」
    「エルがわかんないんじゃ、僕もわかんないよ」
    「もうほっといてよくね?いい年した悪魔なんだからよ。慰めるとか面倒くせぇわ」
    「でもさぁ…………マリオ可哀想だよ…………」
    「それより俺達には他にやることあるって言ってるだろーが」
    「…………ぅんん…………」
    ルイージはきょろきょろとエルとマリオを見比べるが、最終的には片割れの意見を受け入れたようだった。
    エルはルイージの肩へ手を回す。それから四翼の羽根が身を包み始める。
    「泣かないでマリオ。何があったのかはわからないけど、君は強い悪魔なんだから大丈夫だよ。きっと乗り越えられるさ。エッチも割と上手かったしね」
    ルイージは羽根の隙間から慈悲の笑みを見せた。
    「君に幸あれ!」
    粒子に飲まれ、光の塊となった二人は遠く遠くへ飛んでいってしまった。
    空っぽになった都市と、悪魔一人を残して。

    「…………ゔうァ…………」
    唸り声を上げてドクターは体を起こした。世界はすっかりと夜の闇に飲まれていて、自分は民家の屋根の上に寝かされていた事に気付く。建物が立ち並ぶ割にはやけに暗いとドクターは思ったが、瞬時にその原因を思い出していた。街頭も店の灯りも家の灯りも無い真っ暗で当然なのだ。それを必要とする者が『ここには誰一人としていない』のだから。
    「おはようドクター。七時間ぶりだな」
    頭を緩く振るドクターに、隣に座っていたマリオは平坦な声をかける。
    「よく生きてたもんだよ。本当」
    「咄嗟に脳を腸へと移動させたから…………二度としたくない芸当だがな…………」
    「君も大概、器用だよなぁ」
    月明かりしかない世界で悪魔はぽつぽつと会話する。
    「…………その右足は再生させないのか?」
    「させないんじゃなくて、出来ないんだよ。君が寝ている七時間の間に何度も何度も手を変えて試したけど、どれもダメだった」
    中身の無くなった右裾。それを力なく見つめる。
    「思い出せないんだ。右足が。どんな形でどんな色でどんな長さで、どんな風に動かしていたか、どなんな機能を果たしていたか…………自分の右足の事が何一つ思い出せないんだよ。だから再生のしようが無くて。そもそも僕には元から右足が無かったんじゃないかとすら思えてきて…………けど、もぎ取られて奪われた感覚だけははっきりと残っててさ…………それが気持ち悪いのなんのって…………」
    マリオは観念したように両手で顔を覆った。
    「右足を概念ごと持っていかれたよ」
    「だとすると義足も無意味か」
    「ああ、だって今の僕は『右足という存在が理解出来ない』から」
    「…………何という…………」
    続く言葉が出てこない。沈黙してしまったマリオの隣に座り直し、ドクターは呟いた。
    「神の名は伊達ではない、か」
    二人がどうしてあんなにも神を信じなかったのか、今更になって理解した。
    神が神を信じる訳がないのだから。
    「二人の正体が人間ではないとはわかっていたが、まさか二体一組の『邪神』だったとはなぁ。流石のボクも想像だにしなかったよ」
    「…………ぅあ〜〜〜〜…………」
    「そして君は半分は操られていたとはいえ、その覚醒の手伝いをしてしまった訳だ」
    「ぁあ〜〜〜〜〜…………」
    「魔王からどんな仕置が言い渡されるものだろうかね」
    「あぁああ〜〜〜〜〜〜〜…………っ!!」
    ガシガシとマリオは頭を掻き毟る。これは本当に大変で厄介で面倒な事になってしまったし、させてしまったし、そうなっていってしまう事案だ。
    「荒れるぞ。全ての世界が」
    「…………どれくらいだよ」
    「検討もつかん」
    「なんっだよそれぇ…………」
    「一つ言えるとすれば、邪神が引き起こす様々な負の要因で夥しい数の人間が地獄に雪崩込んでくる事くらいか」
    「ワンチャン魔王喜ぶルートある?」
    「あの魔王が自身とライバル関係である邪神の所業で喜ぶと思うか?」
    「…………ぐうの音も出ない…………ッ!」
    これからの自分の運命を想像し、頭を抱えて離さないマリオ。その様子にドクターは呟く。
    「随分と罪深き者に惚れたものだ」
    嫌味成分なそれに、マリオは返す言葉も出なかった。



    END
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