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    Ma2rikako

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    Ma2rikako

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    インフルから復活したので。
    短いお話。荼ホ。

    寒い日の朝寒さは感じる。
    寒いのは嫌いじゃない。けれども寒いものは寒い。
    鈍くなった体感でも、首筋からうっすらと冷え込んだ空気が纏わりついてくる感覚。隣のぬくもりが離れていく感覚。自分を包んでいた布が取り払われていく感触。
    そんなどこからか湧いてきた苛つく感情にうっすらと目を開けた。少し目線を下げると見える肌色は、昨夜肌を重ねた男の背中だった。 
    その均整の取れた背中、肩甲骨の辺りからは赤い羽が小さく纏まっていた。その背筋が伸びる。うーん、と声を漏らしながら両手を上げ、伸びをした背中。羽先もピンと張って、そしてふっと力が抜けて脱力する。今度は「ふわ~」とあくびをする声。大口を開けてどんなまぬけ面をしているのか少し興味はあったが今まだ眠い。剝がされた分の掛布を取り戻したい。そう思って腕に意識を送る。俺の右腕はその男の腰に絡みついていた。それを自覚した途端に、男は俺のその腕を掴んでポイと乱雑に避ける。
    こいつ、人の腕を物みたいに扱いやがって……。
    そうしてしばらく男はじっと動かなかった。髪はぼさぼさだ。いつも風に靡くままに後ろへと撫でつけられている金の髪は、昨夜のような行為の時には目元にかかってくる。その時の光景を思い出して少しだけ目が覚めた。潤んだ瞳が細められて、その真っ赤な目元を隠すように前髪がはらりと落ちてくる。隠される方が余計暴きたくなるってもんだ。羽もしな垂れて、乱れていた。あれだけぐちゃぐちゃにかき乱した羽根の束はもとの形には戻ってはいないようだ。その付け根の周囲には鬱血痕や歯形が散らばる。肩には指の跡。腰にも。毎度のことながら、こんだけやられてよくもまぁこんなのんびりとしてられるよなあ。
    はぁ、と溜め息を吐いた頭が項垂れた。きっと前髪は目元にかかっているのだろう。
    ようやくもぞっと動いた身体は独り言を言いながら何かを探していた。掛布を腰元に集め、顔が左右に動いている。
    「……っと、ぱんつぱんつ……あ、った」
    どうやら探し物は見つかったらしい。ベッドの下へ腕を伸ばしている様だがどうにも届かない。身をかがめたところで「ッあ」と小さな声が上がった。その後ろ姿は一度姿勢を戻すと、腰をゆらゆらと揺らしながら自分の右手を後ろへ回した。その手は腰に触れ、指先がするりとその下へと下りてきた。腰元に寄せられたシーツにその指が引っかかり、ピッピッと尻まで巻き付けようとする。少し腰を浮かせて、また下ろした。その時にネチョと、僅かに粘着質な音がした。
    ああ。こぼれてきたのか。
    また目が覚めた。今度はハッキリと覚醒した。けれどもそれをこいつに悟らせようとはしなかった。ちらっと振り向く気配を感じたので咄嗟に瞼を下ろす。思わず漏れそうになる笑い声も必死で抑え込んで。
    小さな舌打ちが聞こえた。
    それなのに、こいつは俺の肩に掛布をかけ直した。冷気に触れていた肌があたたかなぬくもりで包まれる。
    きしっとベッドが軋んだ。腰元のぬくもりは離れないがもぞりと違った動きを見せた。トンと、片足だけ下ろしたようだ。そのまま再び薄目を開けてみると、また身をかがめて床下に手を伸ばしている。其処までしてベッドから下りたくねぇのかよ。ま、確かに今日は布団から出たくない気温ではあるがな。それにしても。
    どんどん身をかがめていくその背中に伴い。俺の目の前に現れるはその下の、昨夜の名残を色濃く残すその尻であり、ケツであり、ええと、臀部?
    「ん~ッ、っと、とぉ……れた!」
    どうやら目的のものを釣るのに成功した様だ。本当に小さな声で「ぉっし!」なんてパンツを握りしめている姿に我慢できずに俺はとうとう吹き出してしまった。
    「え、おっ、まえ、荼毘ッ、起きて……」
    「くっ、くく、ああ、わりぃわりぃ。おまえの後ろ姿があんまりにも可愛すぎて」
    「かわっ!」
    ぶわっと羽根を膨らませ、顔を真っ赤にしながら目の前の男、ホークスはやはりパンツを握りしめながらやっと俺と目線を合わせた。
    「それ、履けんの?」
    握りしめられているそれはおそらく使い物にはならない。ホークスはそれにチラリと視線を送ると、拳を緩めて苦虫を嚙み潰したよう顔をしながらもう片方の手で顔面を覆った。
    俺はそれにまた吹き出しながら目の前の尻を撫でる。
    「それにこっちもどうにかしねぇと履いたってしょうがねぇだろ?」
    「うるさい」
    そう言いながら手首を掴まれ剥がされそうになったから、それに逆らって腰を引き寄せてやった。
    「なぁ、まだ寒いだろ」
    「……ああ、今日は冷えるな」
    「じゃあまだいいんじゃね?」
    ホークスはジト目で俺を見下ろすと、はぁと長いため息を吐いて頭をガシガシと掻き混ぜた。そうして黙って体を倒してくる。俺の腕の中へ。
    後頭部に指を絡めながら頬に空いた方の手を添えると、諦めたかのような表情で瞼を閉じた。唇同士がくっついて離れて、そうして俺の胸に頭を預けながら「ぬくい」と男は呟いた。冷えて冷たくなっていた肩や背に腕を回す。
    そうするとあとはトクトクトクと静かな部屋の中、心音だけが響いた。
    たまにはこんなのもいいだろう。
    まだ、寒さを感じる身体でよかったと思った。


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    🍏🥝🍣現遂🍣🥝🍏

    PAST〈法庶04〉
    【ふたりハミング】
    いま見たら全年齢じゃなくて法庶だなと思った。
    あと、ほせ殿にサラッと高度な事?をさせてる気がする。
    通りすがりに一度聴いただけの曲、その場で覚えて、知らないその後の部分に即興で別パートメロディ作って一緒に歌うって……
    でも、この二人で歌ったら声とか意外と合いそうで妄想が楽しいです。
    徐庶が最初は法正の事が苦手だったって場面設定もあまりやってなかったかも
     「♪♩♬♩♫〜〜……」
     書庫の棚の前に立って資料整理をしていた徐庶は、何となく曲を口ずさんでいた。何日か前に街で耳にした演奏が印象的だったのか、メロディが自然と鼻歌になって出てしまう。沢山あった仕事が片付いてきて、気が抜けていたのかもしれない。
     ふと気配に気付いて横を見ると、いつからか通路側に法正が立っていて徐庶の方をじっと見ていた。外の光で若干逆光になった彼の姿に少したじろぐ。
     この人に鼻歌を歌ってる所なんか見られてしまうなんて……

     徐庶は法正のことが少し苦手だった。
     諸葛亮と彼の反りが合わず空気がギスギスした時は仲裁役になる場面もしばしば、用があって何言か言葉を交わしたこともある。しかしそれ以上はあまり関わりたくないと、苦手意識を持つ男だった。
    1964