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    xa_pij

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    サボが前髪切る話 現パロ

    「……流石に邪魔だな」

     洗面台の鏡に映る自分を見ながら、顔の左側の覆う前髪を摘んでサボは顔を顰めた。
    最後に切ったのはいつだったか。そんな前じゃなかった気がするけど、前髪って伸びんの早えな、だる。
     軽く前髪を横によけてみるがすぐ垂れてくる。まあ左側の火傷跡を隠すために伸ばしてるからよけちゃ意味ねえんだけどな、とサボは独りごちた。

    「エース、ハサミある?」

     洗面所から顔を出してエースを呼ぶと、おー、と気の抜けた返事が返ってきた。ゴソゴソと布擦れの音が聞こえた後ガチャガチャとプラスチックのなんかを漁ってるやたら騒がしい音が静かになると、工作用の赤い持ち手のハサミを持ったエースが現れた。

    「これしかなかったけどいいか?」
    「良いよ。前髪切れればいいし。新聞紙ある?」
    「人んちで前髪切んのかよ…新聞紙なんてんなもん読むやつこの家にいるわけねえだろ。ゴミ箱使え」

     そう言ってエースはすぐそばにあったゴミ箱を洗面台に直に置いた。サボはそれゴミ箱の底濡れねえかと思ったが、すぐに別にどうでも良いかと差し出されていたハサミを受け取り、鏡に向き合う。

    「どんくらい切んの?」
    「ちょっと…今顔の半分くらいあるから、目の少し下くらい…」
    「ふーん」

     刃を縦にして少しずつ毛の先を切っていく。パサパサと金色の毛先がゴミ箱に引っ掛けられたポリ袋に落ちていく。その様子をグレーの緩いズボンに手を突っ込んで見ていたエースは揶揄うように笑った。

    「お前髪切るの上手くなったよな、ガキんときお前めちゃくちゃ下手くそだったのに。おれが手伝わないといけないくらい」

     煽ってくるエースに若干ムッとして、サボは鏡越しの、壁にもたれかかってニヤニヤしているエースを睨む。

    「初めて切る時だけだっただろ!あれからはもう普通に切れたし」
    「ほんとか?なんかすげえ切りすぎた時もあっただろ」
    「うるせえな癖毛だから切りにくいんだよ」

     あはは、とそばかすを歪ませて笑われる。エースは昔からルフィの髪をちょくちょく切ってたから散髪は割と上手かった。大雑把だし完全に独学だが気にならない程度にはエースは手先が器用だ。ハサミ一本ありゃ1000円浮くんだから人に切ってもらう必要はねえ、と豪語していた。サボはといえば、ルフィのような練習台がいるわけでも無し、そもそもそんなに金に困ってるわけでもなかったから、金払えば綺麗に切ってもらえるなら本業の方に切ってもらいたい。
     だがあまり好きではない鏡の前に座り、顔面の傷跡を長時間人目に晒すのは嫌だった。その上やたら話しかけてくる美容師に顔の傷のことをつつかれた経験があったから、ネット予約で備考欄に話しかけないでくださいと書いて、絶対に話しかけてこない美容院に通っている。それもエースに髪伸びたなと言われたら行くことにしているから、半年に一回くらいだ。ただ前髪は一ヶ月半ほどでだいぶ伸びてしまうので、セルフでハサミを入れている。…若干ガタガタになるが。

    「つーかそんな左だけ前髪長えとさ、左目悪くならねえ?」
    「悪いよ。こっち側だけ1度くらい悪ぃ」
    「勿体無ぇな。普通におれみたいにすりゃ良いのに」
    「気になんだよ、おれがな」
    「そっち隠してても目が怖すぎてよく避けられてるだろお前…」
    「モブはどうでもいんだよ。あんまエースとかルフィに見られたくない」
    「だから……まあ、お前の好きなようにすりゃ良いけど」

     エースは頭を掻いてため息をついた。理由は詳しく聞いたことはないが、左側の火傷痕を気軽に晒すことをサボは頑なに拒んだ。サボは変なとこだけは妙にこだわりあるよな、ヤる時は前髪邪魔だとか言って勝手にイラついてるくせに…
     サボが前髪を伸ばすきっかけになった、つまり、左側が痛んだ原因の…あの事故はサボのせいじゃない。全部サボの親のせいだとエースは思っている。だから恥じたりする必要はないし、なんつーか、隠してる方が悲しいつーか…上手く言葉にできる自信がないから言わないけど…逆にサボが前髪伸ばしてて良いことは、セックスしてる時にすげえ前髪が揺れてると今死ぬほど激しく犯されてるって余計実感して、それだけでメスイキすることとか…いやそれは良くない鍛えねえと…あとはヤった後に隠れてる痕にキスすると体の力抜けるとことか…
     
    「エース、切り終わったよ…おいエース?」

     ハッとして顔を上げると、はさみの持ち手を差し出されていたので反射的に受け取る。
    そのまま視線をサボの顔に移すと思わずエースは声を上げた。

    「えっ…短くね?」
    「…ちょっとだけな?お前が気にするから」

     サボはなんでもない顔で言った。実際のところ目が若干隠れるくらいに切るなんて、常に弱いところを晒してる様で嫌だったけど、これでエースが喜んでくれるならとサボは思った。もう22だし、ちょっとは大人になってもいいかもな。そう思ったが…

    「なんか色気減ったな」
    「あ!?」
    「いや、違くて…わり」
    「長すぎだっておめえが言ったんだよなあ…?」
    「ごめんって、は、おい!あっ♡サボ…♡」

     …一ヶ月半後、またサボの前髪はいつもの長さに戻っていたらしい。
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