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    nagisa_1146_

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    nagisa_1146_

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    ⚠️attention⚠️
    ・まだ未完(今後更新予定(たぶん))
    ・律モブ律+(茂夫(???%))の同棲本
    ・年齢操作(14.13→20歳(大学生))
    ・他キャラの年齢、関係捏造
    ・今後茂夫とモブの書き分けが出るかもしれないのでモブ(兄)と茂夫で呼称を変えてます
    ・100話後、「本当の兄弟」として向き合った2人なので互いにかなりラフな感じです。冗談も悪態もつきます。うぶではないかもです。

    窓辺のかけら1.
    ポットの沸騰の音が小さく脳内に響き、途切れる思考の中で段々と大きくなっていく。やがて寝起きの聴覚には煩わしくなってきて、律はやっとそこで目を開いた。
    右側の窓から朝日…というには少し強い、10時くらいの陽光が降り注いでいる。眩しさで顔を左に背けると、黒猫みたいなふわふわの髪の毛が鼻先を掠めた。呼吸に合わせて、髪の隙間から見える、炊きたての米の白さをもつ肩が動いている。未だ覚醒状態にない律の脳は避けたはずの陽光を求め、さらりとベッドに垂れる髪に顔を埋めた。すすきのはらに居るような、陽だまりを落とした眼前に、またも律の意識は引っ張られて瞼を落としていく。
    「り…ぅ…」
    至近距離にいる律だけが聞き取れるような、か細い寝言。起きている時も夢の中でも、彼が最も発している単語は恐らく「律」という名だろう。微睡む脳内でそう認めてから、律は薄ら笑った。
    隣に寝ている青年…影山茂夫は、れっきとした僕、影山律の兄である。いや、恋人というか、家族というか。兄の茂夫と弟の律は年子の20歳と19歳。大学を卒業してもこの関係は続けるつもりだし、プロポーズも……いつかやるつもりだ。2人の関係に名前はない。憧れであり、兄弟だし恋人だし家族だし、だからただ、いちばん大切なひとなのだ。
    「んぅ……ししょ…ー…おめれ…と……」
    どんな夢を見てるんだろうと考えながら、陽光によって段々目覚めてきた体を動かす。兄を起こさないように小さく伸びをして、そのままの反動で胸の辺りにあった頭と細い腰を腕で包み込む。相変わらず細い……僕のご飯を食べて筋トレだってまだしているはずなのに。
    「…………かわいいね」
    兄に聞かれていないこの時間、普段素面では本人に言わないような自分の本心を告げるのが日課になっていた。意識してしまうと中々こういう言葉は言えないものだ。ふと口を突かないと出てこない恋人としての気持ち。ヘタレとかそんなのじゃなくて…何と言うか、自分の気持ちを言葉にするのは得意な方ではないだけだ。彼と違って。
    「昨日の夜…も……」
    言いかけて恥ずかしくなってやめた。兄の何でも口にする性格につられたのと、一度自分の言葉足らずな事が原因で大喧嘩をした時から、なるべく口に出して言おうと心がけてこの時間を設けた訳だが……やっぱり合わないものは合わない。
    その分行動で示してるつもりだが、基本的に鈍感な兄に伝わっているかは定かではない。
    生まれつき健康体でそうそう風邪や体調不良に見舞われた事の無い体は、朝もスッキリと目覚めることが出来る。対して兄は生まれつき人に比べて体が弱い方で、朝は低血圧と貧血のせいで弱かった。
    「……エクボいるか?」
    「なんだよぉ、今来たばっかりだってのに」
    Hey Siri、OKGoogleと同じ要領で、悪霊のアシスタント機能(笑)を立ちあげる。声を出したことで腕の中の兄が蠢くが、まだ起きてはいないようだ。
    「今日のスケジュールは」
    「はぁ〜無視かよ。まぁいいけど。……金曜日の授業は無し、todoは買い出し、……って俺様は霊幻からの伝言で来たんだよ。出来れば夕方に来て欲しいってさ」
    ふぅん、行けそうだったら行くよ、と生返事を返す。エクボは興味をなくしたように、寝ている兄の近くで手を振って「待ってるからな〜」と窓から差し込む陽光の中へと消えていった。相談所にでも向かったのだろう。毎朝とは言わないがちょくちょく僕達の住むアパートに潜り込むのがあの悪霊のルーティンだ。
    確か金曜日は兄も授業は無かったはずだ。前期は兄が金曜に一限だけ入っていたが、通年科目ではなかったため既に単位をとって終えていた。
    土日…僕は土曜の昼からバイトが入っていたな…今日のうちに買い出しを済ませよう…と考えて、漸く隣の兄を揺する。
    「兄さん。………兄さん、朝だよ」
    平日は兄を起こさずにまず律が先に起き、2人分の朝ごはんを作ってから声をかけに行く。匂いにつられるのか、起こしに行った時には薄らとその鴉色の瞳を覗かせている事が大抵だ。起きられるなら自分で起きなよ、とこれだけ長く19年も共に生活していると文句のひとつも言いたくなるが、呼びに来た自分を見てふにゃ〜と笑う彼を見て何も言えなくなる。多分これが"幸せ"なんだろうなと思う。
    でも今日は2人にとっては休日だ。平日はゆったりと朝の生活を楽しめない時もあるが、休日は2人で色んなことをすると決めてある。
    「起きて、朝だって」
    「ん、み」
    猫みたいな声を出してモブの意識が覚醒し始める。さっきまで無防備に晒されていた5歳児みたいな顔が歪められる。
    「………あ、あさ…もう…?」
    「そう」
    胸の辺りにあった顔が、律の頭の部分まで上がってくる。のそのそ、とシーツも少し引っ張られて弛む。陽光に照らされた真っ白なシーツと真っ白な体。そのうち同化して永遠に横になって寝てそうな気がする。その自分の思考に何となく不安になって、「自分のものだ」と言わんばかりに上り途中のモブの唇にキスを落とす。
    「ふ……ぇ…ちょっと待っ…て、もう起きるから…」
    目覚めない自分に痺れを切らして律がキスしたのだと思ったのか、モブはぐっと勢いをつけて同じ高さまで上ってきた。
    「…おはよ、律」
    言いながら、細い睫毛が影を落としている瞼を開く。さっきまで白と黒だった眼前に陽の光を受けたオニキスが咲く。普段大きくキラキラと見開かれてる目は、眠気でトロンとしており、律に昨晩の情事を思い出させてしまう。
    「おはよう、にーさん」
    ん〜、とちいさく強請るように薄い唇を突き出してくるので、ちゅっとライトキスをする。もっと、さむいから、と言われたが、兄は軽いキスが好きなため、要望に答えていたら恐らく一日中ベッドの上だ。唇を手でそっと押し返すと、やっと覚醒したみたいだった。
    「また…夜にね。昨日あれだけしてたのにまだ余裕あるの?」
    「え?いや普通にからだ痛いけど……。でも律のアフターケアが上手いし、僕だって筋トレしてるからこのくらい平気だよ」
    へらっと笑ってベッドの反動で体を起こすと、律の上に乗って頬にキスしてきた。からだが痛いとか、朝は低血圧とかいう言葉が嘘かと思えるくらい朝から昼の元気をもつモブに振り回される。顔に小鳥のようなキスの雨を振らせてくるモブに苦笑して、降ってきた顔の耳の辺りをガッと掴んで口付けする。そのままぬるりと舌を入れると、モブは慌てたように顔を離した。
    「そのキスはなしだってば!!」
    「兄さんが性懲りも無くキスばっかりしてくるからだよ。…もっとって言ったじゃん」
    「それは…バードキスがしたいって意味で………」
    ム………とちょっと不服そうな顔をしながらモブはそのまま律の上に倒れ込んでくる。肩口に顔を埋めて、ツンツンと跳ねる兄とおなじ色の髪に頬擦りした。
    「ふふ、律のにおい〜」
    「…………嗅がないでよ………」
    我ながら阿呆みたいにイチャついてる自覚はある。あるが、まあここは公共の場でもないれっきとした僕等の家だし、(僕が)周りの目が小っ恥ずかしくて学内でそこまでイチャつけない分、家ではそれなりに好きなようにしている。兄は平気な顔して学内でも家と同じ距離感を詰めてくるけど。
    流石にそろそろ起きようと思い、顔を横に傾けて兄の頬に軽くキスをして「ちょっとどいて」と言う。「え、もしかして重い?僕、太った……?」と悲痛な声で呟く兄に「兄さんはもっと食べていいよ、まだ50キロ代でしょ」と言い放って、やっとベッドから床に足をつく。ベッドから垂れるようにして落ちていた自分の灰色のスウェットを履いて、すっくと立った。
    うーん、と伸びをすると、幼い頃から短距離走で鍛えてきた筋肉が伸びてとても気持ちがいい。見慣れた部屋をぐるりと見渡す。
    僕らの家、と言っても大学生のふたり暮らし、しかも僕等の家庭は裕福でも貧困でもない、至って平均的な家庭だ。何個も部屋がある訳がなく、玄関から入ってトイレや風呂へ繋がる扉のある廊下を抜けたら右にキッチン、少し進むと2人用サイズのダイニングテーブル、その右奥に今2人が寝ていたダブルベッド、ベランダへ続く窓、そして左奥にはテレビや収納棚が置いてある。至って普通の「一人暮らし」の部屋だ。
    体が全体的に伸びきったのを確認して、窓を開ける。今年の10月の気候は穏やかで、寒くもなく暑くもない、ずっと続いて欲しいと願わんばかりの心地良さで2人を包んだ。部屋よりほんの少し涼しい風が通り抜け、思わず鼻から深呼吸をした。すっと入ってくる冷たい空気が寝起きの火照った体を撫でていく。横を見やるとモブも座ったまま伸びをしながら深呼吸をしていて、少し実家のリビングにいる気持ちがした。
    「僕も陽あたりたい」
    どうぞ、と窓の前から退いてやると、モブは細い足首を床につけて立ち上がる。そのまま窓の前に来ようとしたので、慌てて止めてから床に落ちていた白いバスローブを着せようとする。つまみあげようとしてから、「これはダメだな…」と思い当たる。僕としたことが、行為のアフターに洗い損ねていたらしい。仕方なく「ちょっと待ってて」と言ってから収納ボックスをまさぐって、良さげな黒色のスウェットを履かせた。兄は寝起きのボーッとさ加減がすごい。真っ裸で窓辺に行こうとするとか、デリカシーも恥も何も無いみたいにみえてしまう。
    モブはうーーんと思い切り伸びをして、そのまま横にいた僕を抱きしめた。抱きしめたというか、よろけたと言うか。
    「やっぱり、からだ痛いかも」
    「ほーら」
    ほらも何も結論からいえば僕のせいなのだが。いくらアフターケアをしても痛いものは痛いということは律にもわかっている。もう幾度となく経ている事ではあるのだが、昨日は特にやり過ぎてしまった気がする。僕がというかモブが、だが。ほんの少しの罪悪感を感じながら腰を摩る。「ひんっ」と犬みたいな声を上げてから、やっぱりモブは笑った。
    「いいよ、元はと言えば僕が煽ったのが原因だし」
    あんま覚えてないんだけどね……と言いながら、モブよりこぶし2つ分ほど高い位置にある僕の頬を撫でる。兄さんのこういう所が…
    「そういう所…だよ…兄さん、ほんとに………嫌………」
    「えぇ?律の気持ちは難しいな〜。僕死ぬまで律の気持ち解読できないままかも」
    それってつまりプロポーズと同じなのだが、兄は絶対自分の言ったことに気づいてない。口に出したことに気づかない。昔からだ。
    まあプロポーズは自分からしたいという謎の矜恃があるため、こんな所で雰囲気もなく終わらせる気は無い。兄が鈍感で助かったような気もする。
    「さ、いつまでもこうしてたら本当に日が暮れそうだから動き出そう」
    「そうだね……今何時?」
    体を起こしてやり、首を傾けてダイニングテーブルの横の壁を見やると既に10時を回っていた。
    「ん〜ブランチにする?」
    「…いや、朝は抜こう。どうせ怠くてそんな食べる気起きないでしょ。とりあえず林檎だけ切るからちょっと待ってて」
    上半身裸のまま、とりあえず軽く何かを羽織ろうと思って周囲を見渡す。いつも着ている薄いパーカーは恐らく収納ケースの中なので、その辺にシャツがないかと床を見遣る。
    「そこの引き出しの中に僕のジャージ入ってるよ」
    ベッド横の小棚を指してモブが言う。コトン、と開けてみると確かに兄が高校生の時に使っていた青いジャージの上着が入っていた。
    「僕こんなの入れたっけ」
    「いや、いつも律は上着探してるからさ、この間実家で見つけたのを入れて置いたんだ。小棚、リップとかローション以外何も入ってなかったから。……あとシャツも入れて置いたよ、花沢くんとショウくんと選んだんだ」
    裸じゃ寒いしさ、収納ケースの場所ずらした方がいいんじゃないの?と兄は白い背中を日に浴びせながらサイズを測るフリをする。そんな狭い場所に収納ケースは入らないよ。
    花沢輝気はうちの大学の芸術学部の2年、鈴木将は別大学の経済学部の1年生の同級生である。モブの在籍するサークルの仲間といったところだ。
    「そう…」
    派手なアホ面猿のシャツをそっと棚の奥にしまって、少しキツいサイズの青色ジャージを羽織る。ちらとモブを見ると相変わらず律が服を羽織るところを食い入るような目で見ていて、本当に飽きないなと思う。モブは付き合う前……つまりただの兄弟であった頃から律の着替えとか髪を梳かすを見るのが好きらしく、何をしていても手を止めて眺めてくる。兄の興味を自分に向けられているのは小気味がいいので、気付かないフリをしているがちょっと視線の熱さに疑問がある。これで気付かれてないと思っているのだから本当に鈍感なんだなと思う。
    キッチンまで数歩で着き、下の棚から果物ナイフを取り出す。手とナイフを同時に水で洗い、濡れたナイフをワークトップに置いてからペーパータオルで手を拭き、振り向いて冷蔵庫の野菜室をカポッと開く。食べるのが好きな割に小食なモブは、それなりの頻度で体調を崩すことがある。そんな時は林檎やブドウといった果物しか食べなくなってしまうので、常備するようにしている。食べなくなってしまうというよりも、律が作った料理だと体調に関係なく無理にでも食べようとしてしまうので、胃腸が悪いときには作らないようにしていた。
    5個ほどストックされていた林檎の中で一番小さく熟れているものを取り出し、手の上で皮をむいていく。豆腐のように簡単にはいかないが、慣れてしまえば手の上で林檎を切ることも可能だ。昼は外で食べる予定を脳内で完成させている律は、洗い物を増やさないために手の上で林檎を切った。どうせダイニングテーブル越しに「律が手の上に包丁当ててる…怪我しないのかな」なんて目でモブが見ているのだろうなと思いながら縦に八等分にし、ナイフをシンクに置くとそのまま林檎を持っていく。
    「はい」
    「ありがとう、律」
    手を出すモブを無視して、まず自分が口に含む。えっ、とがっかりしたような顔をするモブをちょっと意地悪な顔で眺めてから、おもむろに顔を近づけて林檎のもう片方のふくらみの部分を彼の唇に押し当てた。
    「ふ、んむ?」
    そっと口を開いて、モブが林檎を口に入れる。シャク…と控えめに歯を立て、そのまま口を進めていく。律も大きめに咀嚼し、最後の一欠片を舌でモブの口内に押し込んでからライトキスをして唇を離した。
    「兄さん、起きてから手洗ってないでしょ」
    「そういえばそうだった」
    ハァ、とため息をついて、右手で林檎を差し出すと嬉々としてかぶりつく。なんか餌付けしてるみたいだな…と複雑な気持ちになりながら2欠片目を押し込むと、「うーん、もういい…」と顔を背けた。まだ2欠片半しか食べてないのに、20歳の男にしては本当に少食だ。残った5欠片を黙々と食べるが、やはり少なすぎだと思い返して最後の一欠片を口渡しする。「もういらないって〜」と言いながらも3分の1くらいまでシャクシャクと食べ、残りを食べきった律の口に吸い付く。
    「…!、ぅむ…兄さん、ほんとキス好きだね」
    林檎の甘い味のするモブの唇をペロリと舐め、強請るように至近距離の鴉色の瞳を見つめるとゆるりと口を開いてくれる。誘われるように舌を差し込み、縮こまっているモブの舌をつつく。互いに閉じていない瞳が揺らぎ、恐る恐る差し出された舌を緩やかに吸うと、モブの喉から「んん…っ」と声が漏れた。律が目を閉じると、モブもつられるように目を閉じたのがわかる。舌を引っ込まないように絡めると、向こうからもたどたどしく舌を絡ませてくれた。
    「ん、ぁふ……すき…はぁ、り、つ…りつ、………」
    キスの合間から名前を呼ばれると、脳に白い靄がかかるように気持ちがいい。そう思うとモブの口からも「きもちい…」と言葉が漏れ、もっとしたくなる。自分の下半身に熱が集まるのを感じて、惜しく感じながらも唇を離した。
    「……前から言ってるけど、ことある事にキスを強請られると困るよ」
    「だって律とのキス、きもちいいんだもん」
    「だもん、じゃな……。……いいから風呂入ってきなよ。シャワーだけでいいから」
    うん、じゃあ先に失礼しようかな、と言いながらゆっくり立ち上がり、のそのそとバスルームに向かうモブを横目に見ながら、律はテレビの横の薬箱を探り始めた。
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    nagisa_1146_

    DOODLE⚠️attention⚠️
    ・まだ未完(今後更新予定(たぶん))
    ・律モブ律+(茂夫(???%))の同棲本
    ・年齢操作(14.13→20歳(大学生))
    ・他キャラの年齢、関係捏造
    ・今後茂夫とモブの書き分けが出るかもしれないのでモブ(兄)と茂夫で呼称を変えてます
    ・100話後、「本当の兄弟」として向き合った2人なので互いにかなりラフな感じです。冗談も悪態もつきます。うぶではないかもです。
    窓辺のかけら1.
    ポットの沸騰の音が小さく脳内に響き、途切れる思考の中で段々と大きくなっていく。やがて寝起きの聴覚には煩わしくなってきて、律はやっとそこで目を開いた。
    右側の窓から朝日…というには少し強い、10時くらいの陽光が降り注いでいる。眩しさで顔を左に背けると、黒猫みたいなふわふわの髪の毛が鼻先を掠めた。呼吸に合わせて、髪の隙間から見える、炊きたての米の白さをもつ肩が動いている。未だ覚醒状態にない律の脳は避けたはずの陽光を求め、さらりとベッドに垂れる髪に顔を埋めた。すすきのはらに居るような、陽だまりを落とした眼前に、またも律の意識は引っ張られて瞼を落としていく。
    「り…ぅ…」
    至近距離にいる律だけが聞き取れるような、か細い寝言。起きている時も夢の中でも、彼が最も発している単語は恐らく「律」という名だろう。微睡む脳内でそう認めてから、律は薄ら笑った。
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