ロマニはお茶を用意するため、医務室に備えつけの戸棚の前に立った。嗜好品としてカルデアから支給品されているノンカフェインの紅茶を探す。だが思い浮かべていた緋色のパッケージを見つけた途端に、彼の気は変わった。
漁っていた棚からはなにも出さず戸を閉め、代わりに一段下の棚からルイボスティーの缶とティーセットを取り出す。それは個人的な嗜好でかつて取り寄せた、ロマニのお気に入りだ。
カルデア支給の紅茶も味や香りは十分に優れたものだ。だが必死でがんばって生還を果たしたマスターに出す感謝と慰労の一杯は、特別なものがいい。振り返ったロマニは明るい声で立香を呼んだ。
「立香ちゃん。悪いんだけど、これをそっちに持って行ってくれるかな?」
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