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    ななめ

    創作BL(@naname_336)と
    二次創作(@naname_line)。

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    ななめ

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    ワンライで書いたもの。
    試しに文章を投稿してみます。どんな風に表示されるのかな。

    ##文アル

    地味な秋声を応援する会の地道な活動


    激しく扉を叩く音がした。徳田が驚いて振り返る。一体誰が、とその激しい音に戸惑いつつ、手にしていた万年筆を置いて立ち上がる。扉越しに「誰だい?」と尋ねると、「ぼくだよ!」「おいらだよ!」という叫び声が返ってきた。新美と草野の声だ。
    「君たち、ちゃんと名乗らないと分からないだろう。ぼくだよだけじゃあ……」
    小言を云いながら扉を開けると、徳田の目の前に何かが突きつけられた。近すぎてよく見えない。一歩退くと、その分ずいっとせまってくる。
    「ねえ、お願い。ごんを治して」
    「ぎゃわずもお願い」
    二人の訴えに、ようやくそれが〈ごん〉と〈ぎゃわず〉であることに気づいた。ぐいぐい押しつけられてはたまらない。「ちょっと待って」と二人を制してごんとぎゃわずを受け取った。
    「まあとにかく二人とも部屋に入ってよ」
    部屋に招き入れると、新美と草野はしょんぼりと徳田の後をついてくる。さっきの勢いが嘘のようだ。二人は座布団の上におとなしく収まった。徳田も二人の向かい側に腰を下ろす。さっき手渡されたごんとぎゃわずをじっくりと眺める。ごんは背中の方にかぎ裂きが、ぎゃわずは裾(裾、でいいのか分からない)が二寸ほど綺麗に裂けていた。
    「治るかな?」
    草野が心細そうに言った。複雑に裂けているわけではないし、これくらいなら自分にも直せるだろうと見当をつけ、「大丈夫だよ。すぐ直る」と徳田が返すと、草野はほっとした表情を見せた。
    「大丈夫だよ、心平さん。ぼく、前もごんを治してもらったもの」
    新美がそう言いながらも心配そうな顔をしている。徳田は新美にも「もちろん、ごんもすぐ直るよ」と言った。
    さっそく裁縫道具を取り出して傷を縫い合わせる。
    「で、君たち、ずっとここにいるつもり?あとで取りに来てもいいんだよ」
    二人は無言で首を横に振った。徳田の手元をすがるような不安な目で見つめている。とても居心地が悪い。一刻も早く直してやらないといけない気分になる。しかし一体どこでこんな傷を作ったのだろうと新美と草野の様子をそっとうかがうと、彼らの髪には落ち葉や枯れ草がついているようだ。それに服も汚れている。さっきは二人の必死な様子に気づかなかったが、どこでどんな遊びをしたのやら。
    「……はい、できた」
    ごんとぎゃわずを、二人同時に手渡してやる。
    「やったあ!良かったね、ごん」
    「わあ、ありがとう!」
    新美はごんに頬ずりをして、草野はぎゃわずを定位置に戻した。ぎゃわずが徳田に向かってぺこりとお辞儀をした。
    「ありがとう。本当に助かったよ。お礼をしなきゃ」
    「え、お礼なんていいよ」
    「そういうわけにはいかないよ。……そうだ!いいこと思いついた」
    新美が草野の袖を引いて「ねえ。ぼくもお礼がしたいな」と言うと、草野は大きくうなずいて、
    「うん。南吉くんにも手伝ってもらうからね。明日また来るから、それまでお礼は待っててくれる?」



    次の日の午後、草野は新美とともにやってきた。部屋の入り口に立ち、草野が手に持っているのは……。
    「それは……おはぎ?」
    そうだよ、と満面の笑みで草野が答え、ぼくも作るのを手伝ったんだよ、と言って新美が得意げな顔をした。
    「お茶うけになるように小さめに作ったんだよ」
    小豆、きな粉、黒ごま、青のり。確かにそれは小さくて色とりどりで美味しそう、と言いたいのだが。
    「どうしてこんなに金箔が乗っているんだい?」
    「えっ」
    草野が驚いた顔をして、「藤村さんがこうした方が喜ぶって。ちょっと金箔多すぎじゃないかなって心配したんだけど、おいらの横で藤村さんがもっともっとって言うから……駄目だった?」
    なるほど島崎の入れ知恵だったか。二人のお礼の品は純粋に嬉しいけれど、島崎のちょっかいは気に入らない。徳田は無理やり笑顔を作ると、「入っていきなよ。一緒にお茶にしようか」と言って部屋に入るよう促す。やったー!ありがとう、そんな二人の声を背中で聞きながら、徳田は「島崎のやつ……」と口をへの字に曲げた。
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