シャチナバス走り書き 海流が冷たく頬を叩く。海水のうねりに鰭や髪を遊ばせて尾を振るうと押し戻す感触の後に流れて去っていった。
その速さに追いつける他者はおらず、形を認識する前にバルナバスの視界から消えていく。
むすりと引き結んだ口を忌々しげに歪めると小さな気泡が零れて溶けた。
腹いせのように尾びれで打ち付ける水が音のない悲鳴を上げてバルナバスの巨体を押し出していく。ぐるりと身体を旋回させ鱗にまとわりついていた水草が散った。
バルナバスについていけるものなどいなく、全てが置き去りにされていく。
まったく。不愉快極まりない。
事の発端は腹がくちくなったので獲物を捉えたときのこと。そこそこ食いでがありそうな肉が眼前を抜けたので丁度良いと仕留めたらその獲物は自分たちのだと同族の稚魚共が群がりながら主張したのだ。
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