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    yuma

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    ハドアバ/ガンマトらくがき置き場

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    yuma

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    以前書いたちびアバちゃんと魔王のお話に加筆しました。
    魔王がちびあばちゃんをお家に送り届けるミッションをこなすお話です。じいじ(一世)と赤先生も出ます。
    (なかやんさんちのちびちゃんの三次創作です🙏✨)
    CPハドアバ(魔王×赤先生風味)

    #ハドアバ
    hadabah
    ##ハドアバ

    ちびあばちゃんと魔王とじいじ「うわあ、すごいですね〜」
     空を行く竜の背から遥か下、見渡す限りの青の海面を眺めるアバンは、小さな身体をこれでもかと乗り出して今にもこぼれ落ちそうだった。その後ろ姿を見て、ハドラーは慌ててちびアバンの背負ったカバンを指に引っ掛け、自分の膝に引っ張りあげる。
    「おい小僧、じっとできないなら縄でしばるぞ」
    「そうしていただければ安全にもっと下まで見えるかもしれませんね! お願いできますか!」
    「お前な」予想外の回答にハドラーはうんざりした気分でため息をついた。まだまだ暴れて逃げ出そうとするアバンの腹をギュッと抱き抱えて、そのまま考えに耽る。
     泣く子も黙る獄炎の魔王ともあろうものが、なぜ子守りをしているかというと小一時間前にさかのぼる。
     そもそもだ。部下どもに勇者アバンを捕らえるよう命じたところ、なぜか捕獲できたのが、この小さなアバンと成長した大きなアバンの二人だった。
     全く意味がわからない。大きなアバンは、時空の乱れがどうのとか言っておったが、オレが欲しいのは勇者アバンなのだが。
     泣き喚く小さなアバンを宥めるために、菓子を与えたまでは良かった。菓子を食べ尽くしたあと、勝手に茶を淹れて優雅に飲んでいた大きい方のアバンが、平然とこう宣った。
    「ハドラー、あなた、そろそろこの子をうちまで送り届けてもらえますか?」
    「なぜオレが?!」
    「私はこれからティーパーティの片付けで忙しいので。それに、そもそもあなたの部下たちがこの子を攫ってきたのが原因でしょう。もう夕方近くです。きっとお祖父様が心配しています。部下の責任は上司が取るべきでは」
    「ぐっ」
     オレは魔王だぞ、と思ったが、成長したアバンからは、なぜか勇者にはない圧を感じてしまい逆らえなかった。それにどうせちびには用はない。こいつが残るなら、まあ楽しめるだろう。
     と言うわけで、ドラゴンを呼び出してホルキア大陸からカール王国まで出向くことになった、というわけである。
     はぁ、まったく面倒だ、もうその辺りの人里に放り出してやろうかと思い、抱き抱えたアバンの方に視線を戻すと、なんとすっかり目をつむって、うつらうつら眠ろうとしているではないか。
     まったく、仕方がないな。もう何度目かわからないため息をついて、オレはドラゴンの手綱をしっかりと握り直した。
     

     
     カール王国付近に近づくと、ジニュアール邸はすぐに判別することができた。屋敷全体が破邪の魔法で覆われている。それは以前カールに赴いた時には全くなかったものだ。こんな強力で目立つ呪文が存在したとしたら、スライムだろうと気づくはず。
     いったいこれも時空の乱れとやらの影響なのだろうか。疑問は残るが、今は最優先でやらねばならぬことがある。そのためには破邪呪文を弾き、屋敷の中に入らなければ。破邪の力はたしかに強力ではあった。しかし、そのあたりの並モンスターならいざ知らず、魔王を名乗るハドラーの魔法力を持ってしてはたいした手間ではない。破邪の力の膜を破ったのち、二階のバルコニーにでもこやつを置いてくれば今回の目的は達成だ。
     ドラゴンを近くの開けた場所に置き、眠ったチビを片手で胸に抱えると、おもむろに屋敷の護りに空いた片手をかける。少しの抵抗と指の焦げる匂いを感じるが、かまわず進む。
     その瞬間、日が沈みかけ赤く色づいていた世界が突如闇に沈んだ。
     上空に暗雲が渦巻き、雷鳴が轟く。
     なんだ? 突然の異変に、オレの身体は瞬時に戦闘体制となった。
     屋敷の二階、掃き出し窓のカーテンに人影が映っているのに気づいた。 
    「誰だ?!」
     カーテンの影から貴族めいた服を纏った男が現れた。
    「アバン?!」
     いや、大人のアバンと同じ妙な髪型だが、違いがひとつ。髪色が空色ではなく雪のような白さだった。
    「いかにも、私がこの家の当主、アバン・デ・ジニュアール一世です」
     落ち着いたテノールは、この男が経てきた年月を感じさせた。
     老人の……アバンだった。いや、一世とか言ったな。
    「おまえがこいつの祖父か?」抱えたチビを掲げて指し示す。
    「イエス。孫になにかご用でしたか?」
     再び、空を切り裂く雷光がひときわ眩い光を放ったかと思うと、轟音があたりに響いた。
     その雷光は、少し離れたところにいたドラゴンを直撃した。一拍置いて、黒焦げの竜がゆっくりと横倒しになる。
     ドラゴンが倒れ伏した時の勢いでその辺りの空気が揺れ、ハドラーのマントもたなびく。
     有無を言わせぬ攻撃は激しい怒りを感じさせる。
     地上にまだこのような猛者がいたとは。にわかに湧き上がってきた血が沸るような感覚にハドラーはニヤリと笑おうとした途端、小さな稲妻が連続してローブをかすめていく。
    「おい! 待て、待て、待て! 孫に当たるぞ」
     魔王は慌てた。
    「このアバン・デ・ジニュアール一世、そんなヘマはしません。さあ、誘拐犯、疾くうちのアバンを返しなさい」
     そこへ落雷の轟音で目を覚ましたアバンが、あまりにも大きな音に泣き出す。
    「誰が誘拐犯だ? あ、おい! うるさい! 泣くな!」
    「びゃあああ、おじいさま! たすけて! こわい!」
    「アバン! 今助けますからね!」
     混乱の極みである。
    「ええい、話を聞け!」
     ジニュアール一世は地上に降り立つと、竜巻と突風とをバギを使って作り出し、魔王に向かって繰り出した。
     ハドラーは思わずちびアバンが巻き込まれないよう、自分の身体でかばうようにした。
     その時、魔法力の塊が空から流星のように流れ、一世と魔王の間に落ちた。ルーラの軌跡だった。
    「待ってください!」
     現れたのは、地底魔城にいるはずの大人のアバンだった。一世へ向き直る。
    「……キミは誰だね?」
    「名乗るほどの者ではありません。少し落ち着いていただけますか? この人は見た目こそ怪しいですが、そこまで悪い人ではありません」
    「いや、魔王だが」
    「あなたは黙ってて」大きいアバンはハドラーの足を踏んづけた。
    「ここへは、迷子になったこの子を送りにきただけなのです」ほらハドラー、と促され、魔王は胸に抱えたちびアバンを下ろす。成長したアバンが現れたことで少し落ち着いた幼いアバンは、とてとて軽い足音を響かせ、自身の祖父のもとへ駆け出して行った。
    「アバン、本当なのか」
    「はい。おじいさま、この魔王さんにはたくさんお菓子をご馳走していただきました!」
    「なんと、そうだったのか。それは失礼した」
    「失礼では済まんぞ」
     焦げ目ができ、穴の開いたローブを掲げて魔王は怒りを露わにしたが、感動の再会を果たした祖父と孫にはその姿はあまり見えてはいないようだった。

     
     


     

     
     大人のアバンは負傷したドラゴンに回復呪文をかけた。ドラゴンは巨大な鼻面をもと勇者の首筋に押し付けて懐いている。
     そろそろ晩ごはんの時間なので、と屋敷に戻っていく小さなアバンたちと分かれて、魔王とアバンは帰路につくことにした。
    「おじいさまは天候を操る呪文が得意なのですが、ちょっと私のこととなると過保護気味で」
    「得意なのです、とかいうレベルではなかったが?? いや、それはいい。それにしても貴様、ルーラができるならルーラを使えばよかろう」
     魔王がドラゴンに飛び乗ると、当たり前のように隣にアバンも乗り込んできているのだった。
    「ドラゴンの背に乗っての長距離移動なんて、なかなかできませんからね。こんな機会を逃す手はありません」
    「はあ、お前もか」
    「ねえ、ハドラー、星がとっても綺麗ですよ」
    「ああ……それで貴様の方はいつ帰るのだ」魔王はうんざりした気持ちで尋ねた。
    「おや、帰してくださるんですか? てっきり私は捕虜になったものかと」
    「……まあ、そうだな」出発した当初はこのアバンと遊ぶ気もあったが、いまは疲れ果てていた。
    「本当のところ、帰ろうにも帰り方がわかりません。……実は、私は死んだ身なんですよね」
     どういうことだ? 思わず、アバンの方を見る。
     大人になったアバンが現れたとき、一度は未来の自身の死を覚悟したハドラーであった。
     勇者との決着の日は近い。勇者が大人になるまで何年も闘い続けているビジョンはハドラーにはなかった。歳を経たアバンが存在する、ということは敗北したのは魔王のはずだ。
     それなのに、このアバンも死んだ身、とは? 
    「詳細は省きますが、確実に死んだはずです。死ぬ覚悟で望んだ闘いの真っ最中でした。しかし、死に直面した次の瞬間、この世界にいる自分を見つけたのです」
     月明かりに照らされたアバンの横顔は、今にも消えてしまいそうに見えた。こいつが命をかけるほどの相手がおそらく自分ではない、ということに、魔王は静かに衝撃を受けた。心を動かされた自分自身に驚いてもいた。
    「なので、行き場がありません」
    「勇者どものところへ行けば良いだろう」
    「それも考えたのですが、彼らは自分たちで道を切り拓いていけるはず。私がやるべきことはそこにはない、という気がしました」
    「さっきのチビの屋敷は」
    「私のお祖父様はもう亡くなっています。今から戻っても、あの二人の時空にまた戻れるかどうか」
     アバンの眼鏡がきらりと光り、その奥の隠された瞳がハドラーをまっすぐ見つめている。
    「……あの、今まで敵対していた私が言うのもおかしな話ですが、地底魔城のそばで目が覚めたのも何かの縁、しばらく置いてもらえませんか」
     ハドラーはアバンの言葉を吟味する。
     自身の死の可能性に直面して、結局のところハドラーはこう考えることにしていた。
    『どこかの世界では勇者に敗北した魔王がいる。だが、オレはそうはならない』
     今後、自身が負けるとは考えないようにしていた。むしろ、勝つことに対してより貪欲になれそうだった。未来の可能性はいくつもある。であれば、行き場のない元勇者を拾った魔王がいても、面白いだろう。
    「……まあ、良いだろう。貴様は勇者とは違うようだ。オレの邪魔をしないのであれば、好きにしろ」
    「ありがとうございます。今の所この世界に干渉する気はありません。傍観者の立場でいるつもりです」
    「ただし」
    「ただし?」
    「多少なりとも役には立ってもらうぞ。無能を取り立てるほど、我が魔王軍は軟弱な組織ではないからな」
    「別に魔王軍に雇っていただかなくとも……世界征服に貢献したいとは思いませんから。何か役割が必要というなら、あなたの個人的な身の回りの世話する、というのはいかがですか」
    「オレの? まあ……」
    「お茶を淹れるくらいはしますよ……はあ、とうとうイエスと答えてしまいましたね」
    「なんだ?」
    「いえ、こちらのことです」
     魔王とアバンを乗せたドラゴンは、月夜を切り裂いて進んでいく。
     地底魔城まで、あとすこし。
     
     
     







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