節分「こ、今年もやるんですか?」
「だって割と好評だしお賽銭入るんだもん」
よいしょ、と霊夢は沢山の豆が入った籠を持ち上げ鍋に入れる。その様子を華扇は青ざめた顔で見つめていた。
「無理にここに居なくてもいいのに。苦手なんでしょ?」
「そうなんですけど...やることは済ませてきましたし...」
「帰ってもやることが無い、と。私はてっきり修行の続きでもとか言うのかと思ったわ。」
あ、と華扇の口から小さい声が漏れて霊夢はそれを不思議そうにしていた。珍しい、と。
慣れた手つきで豆の調理をする霊夢を見つめながら華扇はため息をひとつついた。
「私、好きなんですよ。霊夢と一緒に居るの。」
「どうしたの急に。」
「...ほぼ毎日あるこの時間をちょっと自分が苦手だからって手放すのはねぇって。」
「毎日あるからこそたった一日くらい良いんじゃないの?」
その返事は無かった。理由はなんとなく分かっている。こうやって人間に情を入れすぎた妖怪は幾度となく見てきたから。
「分かった分かった。あと少しで終わるから、そしたらお茶にしましょ。」
華扇の方を向いて霊夢は言った。髪を弄っていた華扇はゆっくりとこちらを向いた。その目が、口元が、嬉しさを隠しきれていなかった。
「あんたって、ほんと分かりやすいわよね。」
「ほんとに大事なことは漏らさないからいいんですよ。」
少し拗ねたような口調で華扇は返した。自分もその立場ならそう返すだろうなと、似ている部分を見つけて、それが少し可笑しくて。霊夢はくすくすと笑いながら豆の調理を急いだ。