吸血鬼は何に祈り、何に誓うのだろうか。ノースディンは、とうの昔に人間であることを辞めた頭の片隅で考える。
つい先日目覚めたばかりの、吸血鬼としてはまだ赤ん坊同然の我が子を保護し屋敷へと連れ帰ったのは、血を与えた親吸血鬼として当然の成り行きだった。
誓って――――あえて誓うとすれば、クラージィに誓って、やましい気持ちなど何一つ無い。
そう誰に言い訳するでもなくノースディンは、ベッドヘッドに背を預け戸惑った様子でこちらを見る赤い瞳に気付かないふりをした。
再会したクラージィは体が酷く冷たく、どれだけ部屋を暖炉の炎で温め、その瘦せ細った身を毛布でくるんでも末端が冷えるらしく、寝付きが悪い。
ノースディンがそれに気付いたのは、クラージィの目元にくまが出来てからという事実は、思い返す度に無意識下に室温を下げてしまうほどに許し難いことだった。
2029