心がわり「父よ、あなたのいつくしみに感謝してこの食事をいただきます。ここに用意されたものを祝福し、私たちの心と体を支える糧としてください」
平坦な声でドラルクが食前の祈りを述べる。ノースディンが注意するか否かの境界線上で行儀悪く振舞う癖は、親元に帰るまでにどうにか矯正しなければとノースディンは考えている。
「……あのねぇ、アホ師匠。こんなん毎回言う意味あるんです? どうせ私たちしかいないし、私たちの食事って」
ドラルクは飽き飽きといった顔でワイングラスの台座を指で挟み、テーブルの上で丸く揺する。
「これじゃん」
グラスの中に注がれているのは、まごうことなき人間の血液だ。あんたの悪趣味に付き合わせないでくださいよ、と顎を上げるドラルクに、ノースディンは動じず自らのグラスを口に運ぶ。
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