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    5月スパコミ新刊タルスカ本進捗
    ・現パロ
    ・全年齢
    ・キスしてるだけ

    #原神BL
    genshinBL
    #タルスカ
    taluska
    #chiscara

    5月スパコミ新刊進捗 人間に化けれる"自称"妖精の身でありながら、散兵が人間として過ごしたことは殆どないらしい。全くないわけじゃないようだけど、本人がその時のことを話したがらなかった。俺に拾われる前は誰に飼われていたのか、くらいは知りたいところだけど、勿論、無理強いして聞き出そうなんて思ってないし、散兵が話したくないのなら聞くつもりもない。彼の反応を見る限り楽しい話ではないのだろう。
     俺は散兵のことをよく知らない。でも、俺と一緒に過ごす散兵のことはなんでも知っている。甘いものが嫌いで苦いものを好む。あんなに嫌な顔をしていたコーヒーもあっという間に飲めるようになり、食事やお菓子は洋食より和食を好んだ。
     動画を見るのが好きで、暇さえあれば俺の携帯を奪い、動画投稿アプリやサブスクでドラマや映画を見ている。彼が最近専ら見ているのは、意外にも恋愛系のドラマだ。人間の感情の揺らぎが見れるから好きなのだとか。
     そのうち年齢制限があるようなものも見始めたらどうしよう。見た目の年齢は中学生くらいなのに実際は俺よりも年上らしいから、問題はないだろうけど。グロテスク系やホラー系ならまだしも、アダルトなものに彼が興味があるとは思わない。そもそも性欲なんて無さそうだし。
     そう思っていた矢先のことだ。ゼミのレポートを書いているとき、いつものようにベッドを占領して俺の携帯で去年放送された恋愛ドラマを観ていた散兵から「ねぇ」と袖を引っ張られた。俺はブルーライトカット用の眼鏡を外して散兵を向く。
    「これ、何? なんでするの?」
     差し出されたスマホの液晶画面はドラマの終盤あたりで停止されていた。二人の男女が抱き合い、キスをしているシーンだった。
    「なにってキスだけど……」
    「きす? なにそれ」
    「今この二人がやってること」
    「口と口を合わせることを人間はそう言うのかい? なんでするの? 意味は?」
     なんだろう、このジワジワと羞恥心を刺激される質問責めは。どう返せばいいのか言葉に詰まる。恋愛経験が豊富なわけじゃない俺にとって、彼からの質問は大学の課題よりも難しいものに感じた。意味なんて俺が知りたいくらいだ。
    「……好きだから、じゃないかな。一般的に」
    「好きって?」
    「え?」
    「好きってなに?」
     散兵からすれば純粋な疑問のつもりなのだろう。曇りのない双眸がじっと俺を見つめている。俺はまたもや言葉を詰まらせた。
     好きという感情を言葉で説明するのは至難だ。その人のことを考えると胸の奥がきゅっと締め付けられたり、会いたいと思ったりする気持ちだろうか。でもそれは人によって様々だと思うし……。
     俺が返答できずにいる間にも、散兵は次々と質問を投げかけてくる。
    「キスは好きな人とするものってこと?」
    「まぁ、一般的にね。一般的に。嫌いな人ともする人はいるけど……」
    「……よく分からないな。実際にしてみて、キス」
    「……ん?」
     なんか今、耳を疑いたくなる言葉が聞こえたような。
    「僕にキスをしてみてよ」
     散兵がぐい、と顔を近づけた。俺は思わず後ろに背を反らし距離を取る。けれど離れたその分を散兵は身を乗り出してまた詰めた。
     なんだこれ。どういう状況だよ。いや、この状況がどういうものなのか分かってるんだけどさ。散兵の思考回路が全く理解できない。
     文字通り目と鼻のすぐ先に彼の小綺麗な顔があって、瑠璃色の瞳が上目で俺を見ている。長いまつ毛が瞬いて、まるで人形みたいに整った造形の顔立ちなのに、不思議とその唇には生々しさがあった。
    「ちょっ、ちょっと待て!  散兵、一旦落ち着こう!」
    「僕は落ち着いてるけど」
    「君じゃなくて俺が落ち着けないんだよ!」
     このままじゃ本当にキスしてしまいそうだ。俺と同じシャンプーの爽やかな匂いが鼻腔を抜け、次第に脈が早くなる。顔に熱が集まってきているのが自分でも分かる。
    「もしかして初めてなのかい」
    「……キスくらいしたことある。昔の彼女と」
    「ふぅん……なら問題ないじゃないか」
    「どこが……!?」
     問題だらけだよ。散兵とキスをしそうになっているんだ。好奇心というものは恐ろしい。
     こうやって喋るだけでもすぐに触れてしまいそうなくらい近い場所に、もうそれは迫ってきていた。無意識に唾液を飲み込み喉から「ごきゅ」と音が鳴った。
     落ち着け、一回キスするだけ。たった一回、唇と唇を触れ合わせるだけだ。無知な彼の好奇心を満せば、満足してくれるだろう。変に考えるな。猫だって挨拶で鼻先を触れ合わせているし、どこにも緊張する必要なんてない。
     そう自分に言い聞かせれば、確かに彼にとってはただの興味であり、行為に意味はないのだと冷静になってきた。
     大丈夫、これはただのお遊びみたいなものだ。だから、そんなに深く考えなくてもいいんじゃないか? それに俺だけ取り乱しているのも恥ずかしいし。
     じっと見られている視線を感じながらゆっくりと目を閉じて、それから少し顎を上げると、柔らかい感触が音もなく自分のものと重なった。
     散兵の薄い唇は想像していたよりずっと柔らかく、温かいものだった。少し乾燥していて、苦い味がする。そういえばベッドに寝転ぶ前にコーヒーを飲んでいたな。ファーストキスはレモンの味、と言うけれど散兵の場合はコーヒーの味だった。
     ほんの数秒触れるだけの軽い口づけをして、俺はようやく顔を離す。目を開けるとすぐ近くで散兵と視線が絡む。何をされたのかよく分かっていないような顔だ。冷静になれたとはいえ、じわじわと恥ずかしさのようなものがこみ上げてくる。
    「これで終わり?」
    「……終わり」
     そっと散兵の肩を押して身体を離す。呆然とした彼はさっきまで他人の熱が触れていた唇を指で撫で、そして手元のスマホを見る。キスシーンで停止されたままの画面を見つめ、小さく「温かい」と零す。
    「好きな人にはこれをするの?」
    「多分ね。まぁ人によると思うけど……」
    「ふぅん……」
     散兵は何かを考えるように黙り込んだ。そして再び俺の方を見て、今度は自分から顔を近づけてきた。
     ちゅ、というリップ音を鳴らしてまた一瞬だけ唇が重なる。セカンドキスもコーヒー味だ、当然だけど。目を閉じる暇なんてなかったから散兵とはずっと目が合ったままだった。キスをするときは目を閉じるものだと教えてあげるべきかもしれない。
    「なんでまたしたの?」
    「別に理由なんかないよ。ただ気になったから」
    「……そっか」
    「ねぇ、もう一度キスしてもいい?」
     返事をする前にまた散兵は俺にキスをした。湿り始めた唇が互いに同じ温度になっていく。さっきよりも長く触れ合い、自然と見つめ合う時間も長くなる。
    「ふふっ」
     どことなく、彼が笑った。瑠璃色の瞳が僅かに綻んで、真紅のアイラインが緩やかな弧を描いた。唇が離れるとその口許もまた緩んでいた。
    「タルタリヤ」
     散兵が口を開く。俺の名前を呼ぶ声には喜色が滲んでいて、俺はなんとなく次の言葉を想像できた。どうやら彼はキスをお気に召したらしい。
    「もっかい」
     そんな何回もするもんじゃないよ、と言おうとした俺の口を柔らかな感触が遮った。
     楽しそうな散兵を見ていたら羞恥心を感じていた自分が馬鹿らしく思えてくる。キーボードから手を離し、散兵の髪を耳にかけてやれば擽ったそうに身を捩った。
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