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    真砂長文倉庫

    @masago5050

    Twitterに収まらないものを入れる場所です。
    お手数ですが、Twitterのプロフをご確認いただけると有り難いです。
    ワートリ関係をのんびり詰めていこうと思います。
    まずはシステムに慣れることから…。
    プロフ画像は最高のコラボより。いつ見ても和む……。

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    真砂長文倉庫

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    ※CPの左右が意味をなしませんので、地雷の方はご注意ください※


    卒業式前日。互いのボタンとネクタイをどうするか。
    情事の後、服を着るときの会話。

    タイトルはとある植物の学名より。
    バレンタインネタ以来、地味にマイブームです花言葉。ロマンしかない。
    複数の意味がベストマッチしてくれたので選びました。

    卒業式前日 王蔵王「ヘデラ」「そろそろ帰らないと」
    そう呟いて王子がベッドから上半身を起こす。ベッドのスプリングが小さく鳴いた。

    二月末日、日没前のやや柔らかい日差しがカーテン越しにその体躯を浮かび上がらせる。乗馬経験者だけあって王子様然とした顔立ちからは思いもよらない程、靭やかな筋肉を纏っていた。胸像よろしく生々しさと無縁のそれに、無粋な花弁が数枚散っている。それらを刻んだ張本人は残滓を惜しむように柘榴色の瞳を細めた。

    「明日でその姿も見納めだな」
    「きみもそうだろ。いや、昼前には跡形もなさそうだ」
    制服のシャツに腕を通し「ふふっ、現着できないのが残念だよ」とボタンを留めながら軽く笑う。先刻記された深紅の花弁の真上に位置する、学生服の第二ボタンに指がかかると、蔵内が躊躇いがちに問いかける。

    「……それを…貰えないだろうか……?」

    土耳古石の双眸が瞠られる。二度瞬いた後、艶やかに輝いた。再び軽快な微笑を零して首肯した。ボタンを一撫でする。
    「……成程、今日のキスマークが濃い理由が分かったよ。きみは結構ロマンチストなんだね」


    涙もろいから、当然と言えば当然か。

    そう胸中で独り言ちると、漸くベッドの上で胡坐をかく恋人の傍らに座る。ぎしり、とスプリングが呻く。
    「いいけど…今かい?」
    「いや、明日でいい。卒業式で咎められるのもなんだろう。予約だけさせてくれ」
    「王子了解。……でも、心臓はあげられないよ?」


    つきん。
    妖艶なまでに瞳を蕩けさせておきながら、残酷な言葉を告げる。蔵内の心臓に氷の刃が突き立てられた。
    制服の第二ボタンは「心臓に一番近い」故に「その人の一番大切な人になりたい」を意味すると言われている。中学校の卒業式で多数の相手から求められた後、調べて知ったことだった。王子も当然知っている、という返答に蔵内の暗澹たる思いが言葉となって零れ落ちた。

    「………俺は、ネクタイも心臓も王子に貰って欲しい」
    制服姿の王子の腰を裸の両腕で閉じ込める。哀願するように額を肩口に擦り付ける。ふるふると海老茶色の毛髪が揺れた。

    少しでも傍に居たいし、献上したい。王子が居なければ俺の心臓は不要だから。

    ふぅ、と柔らかな吐息が落とされる。
    「知らないのかい?ネクタイを贈るということは”相手を束縛したい"を意味することを」
    びくり。
    瞬時に強張った腕に、更に力を込めてしまう。掠れた声音が、苦く響く。
    「あぁ、知らなかった。……でも、そうだな。お前に受け入れられた今、俺は少しでもお前の近くに居たい。いつでも隣に居たい。お前の世界を俺で埋め尽くしたい。……それを、束縛と言うのだろう」
    王子に指摘されて自嘲的に頷く。下唇を知らず噛みしめた。


    こんな自分は知らなかった。
    知らなかったんだ。

    共に弓場さんの下を離れ、カシオや羽矢さんを迎えて王子隊として過ごしていた時も。
    あんなに充実していた日々だったのに。

    こんな自分なんて知りたくなかった。
    知りたくなかったんだ。
    知りたくなんて、なかったんだよ。王子。


    「……王子の心臓になりたい」
    「それではぼくはきみに触れられない」
    顔を上げられ、音もなく零れる涙をそっと拭われる。
    「きみに触れたときの歓びを知らなかった頃には戻りたくない」


    「……王子と一つになりたい」
    「それではぼくは独りきりだ」
    半身を捻り、強く抱きしめられる。
    「隙間なく重なる心地良さを忘れたくない」


    温もりに満ちた両手で頬を包まれる。思わず頬をすり寄せる。
    「ぼくは"ぼくときみ"で共に在りたい」
    額にひとつ。
    「ぼくはきみを誇りに思うし、きみにもそう思ってもらいたい」
    瞼にひとつ。
    「こんな我儘なぼくだけど、ぼくはぼくのままで、きみと居たい」
    耳朶にひとつ。
    「きみはきみのままで、ぼくと居て欲しい」
    唇にひとつ。口づけを贈られる。
    深められたそれを、言われた通り、隙間なく重ねて蹂躙する。王子の背中が僅かに跳ねて、腰が震えた。

    光る糸と共にやがて離れた唇に代わって、互いの額が合わされる。さらり、と黄櫨色と海老茶色の前髪が重なった。
    「きみが断ることはない、とわかっていてもきみの口から答えを訊きたい」
    土耳古石が柘榴石を射抜く。
    「ねえ言って、"ぼくの為に、最期まで生きる"って」
    こちらの願いを全否定しておいて、自分の我を押し通す。それが王子の王子たる所以だと、再確認する。


    ああ、これ以上なく清澄で蠱惑的な声音で紡がれる言葉が、ひとつひとつ、俺を絡め取る。
    お前こそ、俺の首にタイを巻き付けて締め上げているではないか。
    酸欠になる程の目眩。酩酊とも言える。
    海よりも深い、その碧さに溺れてしまう。


    ほろほろと溢れる涙が止まるのを待って、王子の両肩を抱く。
    「わかった。”王子の為に、最期まで生きる”。俺の為に、最期まで生きるよ」
    刹那、瞠目した後、芍薬の蕾が綻ぶように王子が微笑んだ。斜陽を背負ったかんばせは手折りたくなる程、美しかった。




    心臓はあげられない。
    きみを守り抜くために。

    一番にこいねがったそれは、蔵内の鼓膜には届けられず泡沫の如く消えた。
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    Replies from the creator

    真砂長文倉庫

    DONE王子ハピバ!今年は当日お祝いできたぞ!やったね!
    去年の蔵王と同様、ワインとケーキで誕生会。王子二十歳の誕生日。別時空です。
    それぞれのお相手への王子の差異を書くのが楽しいです。
    CPじゃなくても仲良しなのが好きなので蔵水がっつり出てきます。

    王子誕は香水をテーマにすることにしました。だから来年までに蔵っちとみんぐの香水プリーズ!
    王子は何回も二十歳になって羨ましいw
    (初出:20240111)
    王子誕2024イコプリ「Everything is OK」 警戒区域からほど近い1LDKの単身者用マンションには、三門市立大学に通う生駒と水上、そして隠岐が隣同士で暮らしている。
     年の瀬が近づいてきた今日、生駒宅の玄関には住人の他に二足分、持ち主の異なる靴が並ぶ。一足は少しだけ踵のすり減った代赭色のスニーカー、もう一足は手入れの行き届いた暗褐色の革靴だった。個室のローテーブルに置かれたノートパソコンの画面を生駒・水上・蔵内が取り巻いている。

    「王子のイメージはやっぱり青や思うんやけど、そんな色のケーキある?」
     生駒はブラインドタッチが不得手というより雨垂れ打ちに近いため、入力担当は副官である水上である。スクエア型ハーフリムタイプのブルーライトカットグラスをかけ、キーワードを入力した。
    6226

    真砂長文倉庫

    DONEブックサンタのpixiv版がある(しかも二次OK)と知り、本命CPにメリクリして貰いました。
    (高1~高2設定)
    定番のクリスマスソングを参考にしたのですが、コレ失恋ソングなんですね。優しい雰囲気だったのでハピエンだとばかり思っていました。
    やっぱり推しには倖せでいて欲しいので、歌詞のイメージをアレンジしました。

    メリークリスマス!


    年末を機にこちらに移動。

    (初出:20231223)
    クリスマス2023蔵王「Last Christmas and... 」 防衛任務後、ボーダー本部を後にした蔵内と王子は蓮乃辺駅前に赴いていた。隣接する三門市における三年半前の大規模侵攻で一時期規模を縮小していたクリスマスイルミネーションが、漸く以前と同レベルに戻ったからである。駅前のロータリーには五メートルに及ぶ現代アーティストによるクリスマスツリーが据えられ、上品且つ華やかに彩られていた。そこから放射線状に広がる幾つかの大通りにはテイストの異なる電飾が施されていて、訪れた人々の目と心を楽しませている。更に、クリスマスソングがオルゴール版にアレンジされ、心地良い調べが街灯に設置されたスピーカーから控え目に降り注ぐ。
     ある柔和なメロディーがオルゴールで奏でられると、オブジェを撮影していた蔵内の脳内に伸びやかな歌声が想起された。そして、その歌詞も。
    3723

    真砂長文倉庫

    DONE今年もボージョレ解禁でゲットした「オレンジワイン」の色がみんぐ色(はい?)だったので、連想してみました。蔵水とも迷ったのですが、ワインは王子のイメージだったので久しぶりの王水で。

    当日書くつもりでしたが、一瓶飲んで寝てました。出産後の断酒を経験すると加齢もあってめっきり弱くなったなぁ。
    酒は飲んでも飲まれるな。(ブーメラン)
    オレンジワイン王水「nouveau dessert」「やぁ、お邪魔するよ」
    「…………入れや」
     ここ数日でめっきり冷え込んだ玄関での問答は無意味だ。
     招かれざる客ではあったがその両手に抱えられた物を視界に捉えると、琥珀色の双眸が酷薄に輝いた。その光を凌駕する土耳古石の所有者は悠然と微笑む。勝手知ったる恋人の家のリビングに入り、ローテーブルに荷物を置いた。ふわりとスパイシーな香りが舞う。そのまま瑠璃色の上着と濃紺のスヌードを壁際のハンガーにかけ、手洗いと嗽を済ませてテーブル前に座した。ちゃっかり引っ張り出した座布団を敷いている。

    「時間ぴったり、かな?」
    「約束も連絡もせんで、『ぴったり』もあらへんやろ」
     そうは言いつつも、水上の空腹具合をぴたりと見計らって来るのが王子であることを知っている。そう水上が思っていることを王子も知っている。それは、六年前の春、高校入学時に出逢った頃から肌で感じていたことだ。知人・友人・恋人とクラスチェンジした今でもそれは変わらない。嫌悪・共感・親愛の比率が多少変わったくらいだ。変動制であるそれの現在の比率は7:2:1である。
    1973

    真砂長文倉庫

    DONE2024カレンダーに脳を焼かれて書きました。
    高3夏休み設定他色々捏造していますので、ご注意ください。
    弓場隊・王子隊全員の動向を追ってみました。

    そしたらどんどんキャラ増えた……www最早CP詐欺だろコレ。済みません。

    皆、倖せであれ。

    蔵っち、も一度誕生日おめでとう!
    蔵誕2023蔵王&ワンドロワンライ「夏祭り」(15.5時間) 『Holiday Snapshots』「ほら、できたぞ」
     ぽんぽん、と角帯を叩いて終了を知らせる。
    「どう?似合うかい?」
     くるりと身体を翻す。藍鼠の小千谷縮に銀鼠の帯を合わせた王子が、まだ唐茶色のシャツと亜麻色のアンクルパンツを纏う蔵内に問う。立てていた右膝を伸ばしていつもの視点に回帰すると、蔵内は数歩下がった。
    「ああ、似合うぞ」
     腕を組み目を細め、軽く首肯した。柘榴石が柔らかく輝く。八畳間の片隅にある、衣文掛けに掛けられた鉄紺の小千谷縮を携えようとする蔵内を、軽く制する。
    「ぼくもやってみたい。いいかい?」
     きらきらと輝く土耳古石。厚めの唇が綻んだ。
    「勿論、どうぞ。しかし、それなら俺が先に着付けて貰ったほうが良かったかな」
     無論、一般家庭で育った王子に着付けの経験はない。それでも、黙々と自分を着付ける蔵内の手際の良さに魅了され、やってみたくなってしまったのだった。だから、その提案には意味が無かった。配慮に感謝しつつ、憂慮を打ち消す。
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