いつかまた──正午、セピア外周のマーケット
「あーよかった。割高だったけど家にあるフク、どれも綺麗にする暇なかったから…。」
購入した帽子とフクに身に着け、先程まで着ていたものは適当な店で売り払った。
ちなみにいつも被っていたウールウーニーズクラシックは、なんとなく家のロッカーに置いたままだ。
キッカは荷物の入ったブキケースを背負い直し、とある場所に向かっていた。そこに、店長の知り合いが待っててくれているそうだ。
念の為ブキを出して歩いていると、案の定柄の悪そうなヒト達がキッカの前を塞いだ。
「おうおう嬢ちゃん、そんな大荷物でどこに行くんだ?」
「あんたたちにカンケーないでしょ!そこどいてよ」
「ここはオレたちの道だ!通行料を払え。払う気がないなら…」
リーダーと思わしき男が下卑た笑いを浮かべながらキッカに手を出そうとし、恐怖のあまり目を瞑った。
「…んだテメェ!…ぐ、ガ…ッ!!」
「騒がしいと思って様子を見ていれば…。キッカ、もう大丈夫だ」
目を開けると男は腹部を抑えうずくまっており、傍にはF-190をアレンジして着こなすオクトリアンのジルコが言葉とは裏腹に不機嫌そうな顔をしてこちらを見ていた。
キッカのことを嫌いと言った割には助けてくれるんだ〜という言葉は飲み込んで、ありがと、と感謝を伝えた。
「…外に行くんだろう。そこまで護衛してやる」
「いいの?じゃ、お願いしまーす」
小さい頃のように腕にしがみついてみたが、咄嗟に動けないだろうとジルコは振り払った。
目的地に着くと、そこにはサンサンサングラスをした奇抜なインクリングが手を振っており少し安堵した。
彼は古着屋の店主で、キッカ達の店に置いているフクはここで卸しているためキッカも少しだけ知っている。
「それじゃあ、ここまでで良いね。」
立ち去ろうとするジルコの袖をキッカは掴んだ。
「アタシ、エン・コーダの季節になったら帰ってくるから…ジルも、その時一緒に店長…ううん、○○○に会いに行こうね?」
ジルコは意外そうな、困ったような顔で振り向き何も言わずに再び歩き出した。
きっと彼なら迎えに来てくれるだろう。
「見送りはもうokじゃ、行こっか〜」
「はーい。よろしくお願いしまーす」
キッカは男が乗ってきた車に乗り込み、ぼやけて小さくなっていく風車を眺め続けていた。
ひび割れて壊れたものは元に戻らないが、繋ぎ合わせたものが最良の形であることを願う。