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    うさひな

    カイオエ、ミスオエ、フィガオエ、ネロオエ、アサオエ

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    うさひな

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    【フィガロ(→←)オーエン】
    昔みたいに戻りたいふたりの話
    過去捏造
    賢者が来てすぐの頃から始まります

    #フィガオエ
    figuoe.
    #フィガロ
    figaro
    #オーエン
    owen.

    昔も、今も、きっと石になるまで【フィガオエ】昔みたいに戻りたいかい?


    そんなことを聞いたら、
    彼はきっと最高に美しく、最高に軽蔑した笑顔を見せるのだと思っていた。

    「おまえなんか嫌いだよ」

    北の大地のような鋭さを纏って、きっとそう言うのだ。





    「フィガロは、北の魔法使い達のことを昔から知っているんですよね?」

    この世界に来たばかりの賢者様は、ペンを握りながら俺にそう問いかける。


    北の魔法使いとはまだ全然話せていないから、彼らのことを教えて欲しい。
    そう頼み込んできた、フィガロからすれば赤ん坊のような賢者の瞳を、無下にすることはできなかった。
    それはあまりに、フィガロがこれまで切り捨ててきたものと似ていたのだ。


    フィガロとあまく呼ぶ、彼の瞳を思い出してしまう。


    「まあね。彼らは若い頃から北の国で有名だったしやんちゃだったから、スノウ様やホワイト様に言われてお仕置きしたこともあったよ」

    「やんちゃ…ですか」

    「山をまるまる消したり、森をめちゃくちゃにしたりね」

    「消したり…めちゃくちゃにしたり…」

    「北の国では日常茶飯事さ」

    ここではない世界からやって来た賢者様は、想像するのが難しいらしく首をかしげていた。

    「ミスラは渡し守の仕事をしているときはおとなしかったけど、何しろひどく気分屋だからね。
    寝ている彼の近くを人間が通ったって理由で、村ひとつ消すことだってざらだった。」

    なぜこんなことをしたのかと問いかけた自分に、
    足音がうるさかったから、人間がいなくなれば静かになると思ったのでと気だるげに答えたあの男の顔はさすがのフィガロでも忘れられそうになかった。

    その頃はフィガロのほうが魔力も経験値も勝っていたが、あと数十年もすれば逆転するだろうと確信していた。


    「ブラッドリーは盗賊だったんですよね。」

    「魔法使いの集団が長続きすることなんて滅多になかったからね、ブラッドリーの名前はどの国でも知られていたよ。」

    そのブラッドリーを捕まえて檻にいれたのが、他でもないフィガロと双子だということを、賢者様はまだ知らない。
    いつか知ることになるが、今教える必要もないと思った。

    本当に、教える必要は本当にないのだろうか。
    なんていつもなら考えないようなことを考えてしまう。

    いや、ブラッドリーを檻にいれたことを伝えるか、なんて本当は考えていない。

    ミスラのことも、ブラッドリーのことも、
    次に賢者様の口からでる名前に比べたら、どうでもいいとさえ思えた。
    そんなどうでもいいことを考えずにいられないのは、きっと現実逃避だ。

    表面上は賢者様の質問に丁寧に答えながら、フィガロの脳内は彼のことを考えていた。 


    「ブラッドリーのこと恐そうだと思っていたんですけど、賢者として彼から学ぶべきことはたくさんありそうですね。」

    そんなまっすぐな言葉に、また彼の面影を見てしまう。
    もっとも、その面影はとうに本人から失われているのだが。


    「では、オーエンはどうですか?」


    きた。

    ついにきてしまった。

    それはフィガロの心をこれ以上なく揺さぶる名前だった。
    意味もなくティーカップを揺らして、口を開く。


    「そうだな、彼は北の魔法使いの中でも特に孤独を好んでいたから…」


    彼は確かに孤独を好んでいた。

    でも、少しうぬぼれるならば、
    彼はフィガロにだけ、自分の隣にいることを許していた。
    同じテーブルで食事することも、肌を寄せあって眠ることも
    彼の自分ですら知らなかったやわらかい部分にふれることだって、許されていた。

    きっと彼の特別だった。


    「俺は中央の国に行くよ。」
    「そう、じゃあ、お別れなんだね。」
    そう言った時の彼の顔を、フィガロは覚えていない。
    いや、見ていないというのが正しいかもしれない。

    孤独を好む彼が、彼の世界から自分を追い出すところを、見たくなかった。

    中央の国に行くなんて、勝手に決めたのは自分なのに、自分が捨てられるところは恐くて見られなかった。

    「よいのか、フィガロや」
    妙に優しく細められたスノウ様とホワイト様の瞳は、全て見抜いているようだったことを思い出す。


    「ありがとうございました、フィガロ。
    北の魔法使い達とも仲良くなれるようにがんばります!」

    緊張のにじむ笑顔で言った彼に、無理はしないでと微笑んで見せたけれど、

    「でも、オーエンに近づくのはあまりおすすめしないよ。
    彼の言葉は心を蝕む。」

    そう付け足したのは、賢者様への忠告であり、彼の世界に近付かないで欲しいというくだらないわがままでもあった。

    彼の特別にはならないで欲しいと、浅ましくも願った。





    彼が賢者の魔法使いに選ばれたことはスノウ様やホワイト様から聞かされていた。
    だから自分に紋章が浮かび上がった時から今までの時間を使って、覚悟を決めてきたはずだった。


    騎士様と若い赤毛の魔法使いを呼ぶ声も
    お菓子を取られてミスラをにらみつける瞳も

    もう自分のものではないのだ。

    悲しんではいけない。悲しませたのは自分なのだから。いや、彼は悲しんだのだろうか。
    彼は行かないでくれとも言わすすぐ別れを口にしたし、手紙なんて、ましてや会いにくることなんて1度もなかった。
    自分は特別ではなかったのかもしれない。


    「フィガロ先生、お酒飲み過ぎてないですよね?
    僕がしっかり見張ってますからね!」

    厳しい監視役の頭を一撫でして、もう寝る時間だと告げる。
    僕が寝てから飲む気じゃないですよねとなかなか鋭いことをいうこの子は、きっと母親のような強い魔法使いになるだろう。

    「俺ももう部屋に戻るよ。お酒を飲んだりしないさ。ほら、おやすみ。」

    「わかりました。おやすみなさい、フィガロ先生。」


    部屋に向かう子ども達の姿をみて、今日は自分もおとなしく寝ることにしようと思った。
    西の魔法使いに混じって酒を飲みたい気分だったけど、自分は今優しい南のお医者様なのだし、ばれたらきっとあの子に怒られてしまうから。





    「大いなる厄災の影響を受けて、人の村に魔獣が現れるようになったらしい。
    それを討伐するのが今回の任務じゃ」

    スノウ様の言葉に、北の魔法使い達は一様に嫌な顔をする。

    「どうして僕たちが行かなくちゃ行けないのさ。」

    「北の国からの依頼じゃからの。」

    「何で南の魔法使いも一緒に行くんですか。
    この兄弟が死んだらどうしてくれるんです。」
     
    「さほど強い魔獣でもないようじゃ。南の魔法使い達の訓練にぴったりじゃろう。」

    「じゃあそいつらだけで行かせろよ。」

    「そなたらはチームワークのお勉強じゃ。
    また今日も魔法舍の壁を壊しおって、まったく悪い子達じゃ。」


    北の魔法使い達が言い争う声に、ミチルが不安そうに俺を見上げる。いつもは強気な性格だけど、目の前でもじもじと両手を組む姿は年相応に幼かった。

    「フィガロ先生、北の魔法使いと一緒に任務だなんて、うまくできるでしょうか」

    「大丈夫だよ。ミチルはこれまでたくさん訓練を積んできたし、フィガロ先生もついてるからね」

    頭を撫でてやれば少し安心したように笑う。


    「フィガロ先生もついてるからね、だってさ。」


    彼がふんと鼻で笑った。やけに耳に響いた。

    「なんだいオーエン。おまえも俺についていて欲しいのかい?」

    「ふざけるなよ、僕を誰だと思っているの。
    誰がおまえなんか。」

    「これ、オーエンちゃん。」
    「喧嘩したらいかんぞ、オーエンちゃん。」


    北と南の合同任務は不安の中で始まり、
    拍子抜けするほどあっけなく終わったのだった。

    オーエンが弄ぶように魔獣を追い詰め、ミチルが緊張しながら魔獣を仕留めた。

    「よくやったねミチル。
    今日の夕食はミチルの好きなものを作ってもらおう。」

    「いい子じゃったのうオーエンちゃん。」
    「明日のおやつはオーエンちゃんの好きなものを作ってもらわねばの。我がネロに頼んでやろう。」
    「パンケーキがよいかの、それともルージュベリーのタルトがよいかの」
    「どっちもに決まってるだろ。あと、茶色いどろどろも食べたい」

    気まぐれな白い魔法使いは、明日のおやつを考えてにこにこしながら鼻歌を歌っていた。





    「こんばんは、南の優しいお医者様。」


    任務から戻り、部屋の前についたところで、後ろからひやりとした声がかけられる。

    「どうしたの。僕が声をかけるなんて思わなくてびっくりしちゃった?それとも、お優しいお医者様は、悪い魔法使いの僕のことなんて忘れちゃったのかな。」


    とっさに声がでなかった。
    オーエンから近付いて来ることなんてないと思っていた。後ろにいることは気付いていたけど、そのまま通りすぎるか魔法で転移するのだろうと思っていた。


    「忘れるわけないだろう。急に後ろにいるものだから、少し驚いただけさ。
    気配を消すのがうまくなったね、オーエン。」

    にこりと笑って見せても、彼の美しい顔にはどんな感情も浮かばない。その代わり、ふわりと緩慢な動作で腕を組みながらささやくように言葉を連ねる。

    「ごまかせるとでも思ってるの?おまえは僕の気配に気付いていた。気付いていて、知らないふりをした。僕を無視したんだ、僕なんかと話したくなかったから。」

    噂で聞くような、人を恐怖に陥れるような笑顔を浮かべていてくれればよかった。おまえはあの頃のおまえではないんだねと言えたから。

    「言い訳もしないんだ。口は達者じゃなかったっけ?」

    口調こそ昔と変わっているけれど、それは傷付くのを恐れているようにみえたから、
    何者も自分の世界に入れないような、それでいてフィガロだけは許されるような、そんな昔と同じ表情をしていたから、


    「オーエン、おまえ昔みたいに戻りたいかい?」


    なんて、言ってしまったのだ。


    少しだけ涙の膜がはった、昔とは違う色のその瞳が、
    まるで泣いているように揺れた気がしたから


    「オーエン、部屋で話をしよう。」

    昔みたいに、彼の細い肩に触れる。


    「オーエン!いきなりどこに行ったんだ?」

    突然響いた赤毛の魔法使いの声で、彼の瞳がまた揺れたように見えた。
    彼はオーエンとおそろいの目玉を嵌めていた。

    「彼と一緒にいたのか?
    きみを探してるようだけど」

    あの若い魔法使いはもう、彼の特別なのだろうか。


    「昔より弱くなったんじゃないフィガロ
    もうおまえも年だもんね
    あんな赤ちゃん相手に弱気になってるなんて笑えるよ。
    昔は僕が誰といたって、勝手に連れ回したくせに。」


    こちらの心を読んだように、勝ち気な表情で彼は笑う。
    瞳を揺らしていた彼はもういない。


    「まったく、おまえは気が強くなったね。」

    「昔からだよ」

    「本当に、強くなった。」


    パタンと扉が閉まる。
    部屋を囲う結界を張ったのはふたり同時だった。

    「僕を閉じ込めて、どうする気?」

    にやりと笑ったオーエンは、それはもう、美しかったので、

    「俺は、昔みたいに戻りたいよ。」

    強く抱きしめたのだ。


    「おまえが捨てたくせに」
    彼の帽子を脱がし、ソファーに放る。

    「引き止めもしなかったじゃないか。」
    銀糸の髪に触れる。

    「引き止めたって、おまえは僕を捨てたよ。」
    「手紙もくれなかった。」
    「おまえがどこにいるかなんて、知らなかったもの。」

    ふわりふわりと彼の衣装を取り去っていっても、彼は身動きもしなかった。
    感情のないような瞳で、ただ俺を見つめて


    「騎士様が、仲間だとか愛だとか、そんなくだらない話を僕に聞かせるんだ。そんなもの、心を弱らせるだけなのに。現にそれが理由で命を落とした魔法使いや人間をたくさん見てきた。 

    だけど、それでも昔は」
     

    僕はきっと、おまえをあいしていたのに。



    先にベットに倒れこんだのがどちらだったか、はっきりわからない。


    何百年もの時間をうめるためには、お互い以外のものを意識する余裕はなかった。


    「おまえが置いていったんだ、僕のことを」


    昔の彼はフィガロと呼んだけど、今はおまえと呼ぶ。
    昔はあまいばかりだった表情が、今は少しの苦みを伴う。

    昔みたいに、昔とは違う
    それはなにか、新しいものだった。




    一晩中抱きあって、次の日は北の国に出かけた。
    昔の話をするには、魔法舍はあまりににぎやかだったから。

    からだが痛いという彼を抱きしめて、優しくほうきを飛ばした。
    人に見られたくないからひとりで飛ぶと彼が言うので、他人からふたりが見えなくなる魔法をかけた。

    新しいけれど、それはどこか昔と同じようだった。




    予定がない日はふたりで北の国へ行き、夜は抱きあって眠った。

    他の魔法使いには気付かれないようふたりで思いつく限りの魔法を使った。


    気付かれてもなにも変わらない気もしたが、何かが変わる気もして。

    勝手で気まぐれな俺達のことだから、
    誰かに変えられなくても、
    いつかまた変わってしまうかもしれないけれど。


    何度繰り返しても、きっと俺達は変わらないのだろうと思う。
    石になるまで、きっと。


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    「お、おう」
    そうだよな、そんな訳ないよな。
    動かない俺の袖口を軽く掴んで、ウィルは店内へと足を進め 1106