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    うさひな

    カイオエ、ミスオエ、フィガオエ、ネロオエ、アサオエ

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    うさひな

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    【カイ→←オエ】
    オーエンを好きな理由をヒスシノに吐露するカイン
    少し重め
    オーエン出てきません

    #カイオエ
    kaioe
    #カイン
    cain.
    #オーエン
    owen.

    【カイオエ】おまえを好きな理由「俺たち、付き合うことになったんだ」


    久し振りに全員が揃った夕食の席でそう告げた時の、魔法使い達の反応は様々だった。


    「おめでとう、カイン
    少し驚いたけれど、おまえが幸せなら私は嬉しいよ」

    アクアマリンの瞳を細めて微笑む主君に、無意識に強ばっていたカインの頬が少し緩んだ。

    因縁の相手とも称される相手との交際。
    後悔はないし、もちろん愛している。
    それでも迷いがないかと言われると、心がざわついてしまう。

    驚かれ…はするだろうけど、否定されたりしないだろうか。
    心を操られていると疑われ…はしているようだ。
    フィガロとファウストから、なにか見透かそうとしているような視線を感じて、2人の姿を視界から外す。


    だって、自分でも信じられないと思ってしまうことがある。

    目玉を奪われ、地位を奪われ、築いた居場所を奪われた。
    あいつがいなければと、何度も涙を流した。
    必ず奪い返すと誓った。
    そんな、相手。





    「あの、こんなことを聞くのは失礼かもしれないんだけど…」
    「あいつのどこがいいんだ?
    おまえ趣味がわるいんだな」
    「こら、シノ!」

    様々な感情を浮かべたみんなに、それでも祝福をもらって、
    ひとり部屋に戻ってそろそろ寝る支度をしようとした時、訪ねてきたのはヒースとシノだった。

    突然の訪問者に、ちょうど部屋を片付けたところでよかったと安堵の息をつく。


    意外ときれい好きな恋人は、散らかった部屋には決してはいらない。

    僕をこんな汚いところに座らせるつもり?

    そんな声が聞こえた気がして苦いような甘いような感情がひろがる。


    上等な茶葉とネロの焼き菓子を土産に持ってきた2人と、夜のお茶会が開催された。

    居心地悪そうに目を反らすヒースを見るに、シノに無理やり引っ張ってこられたのかもしれない。
    ヒースにたしなめなれても、強い眼差しでこちらを見つめるシノに、少しだけ自虐じみた感情が沸き上がる。

    「いいんだヒース。
    俺がシノだったら、きっと同じことを言うさ」

    本心だった。
    なんなら、あいつだけはないだろうとも言ったかもしれない。

    「でも、カインは、その…」

    きょろきょろとさ迷わせた視線は、俺の目より少し低いところに落ち着く。

    「好き…なんだよね…?」

    「…ああ。
    俺はあいつのことが好きだ。」

    頬を染めてたずねるヒースになんとか言葉を返す。
    なんだかとても声が出しにくかった。

    本当に好きだ。
    愛してさえいる。

    それでも、素直に自分の感情を吐き出すには、騎士としてのプライドが邪魔をするのだ。

    なにもかもを奪った、
    歳も力も経験も、遠く及ばない相手。
    カインの恋人である北の魔法使いは、何よりカインが憎むべき相手だった。

    そんな相手に愛を捧げ、愛を乞うているだなんて。


    「いつから好きになったんだ
    どっちから告白した?」

    シノのまっすぐな視線は、俺の目から離れることがない。

    「いつから、だろうな。

    告白は俺からしたんだ。
    実は何十回もふられたんだぜ」

    迷いも、プライドも、
    悟られないよう笑顔をつくる。


    「あの、嫌だったら答えなくてもいいんだけど…
    どこを好きになったのか、聞いてもいい…?」

    シノに無理やり引っ張ってこられたと思ったが、案外ヒースも気になっているらしい。


    「…あいつは、強いんだ。」

    ぽつりと呟いた言葉に、ヒースもシノもきょとんとする。
    何をそんな分かりきったことを言っているんだ
    そんな表情だ。

    「俺が立っていられないような北の大地でも、あいつは暮らしていける。
    俺が一瞬で噛みつかれてしまうような獣達と、対等に話をするし使役する。
    俺が気付かないうちに害されるような魔力や敵意を、あいつは一瞬で気付いて弾いてしまう。」

    だからなんだ。
    そんな表情の2人に向けて、もう一度笑顔をつくる。

    「あいつが隣にいると、俺は安心するんだ。」

    勢いに任せて言った言葉は、胸に少しの痛みを与えた。

    「ほら、俺は騎士だったから、ずっと誰かを守っていたんだ。
    任を解かれた今も、その頃の癖だけが抜けなくてな。


    常に周りに意識を向け続けて、誰かが危険に晒されれば自分ではどうしようもなくても駆けつけずにはいられない。

    それは騎士としてのプライドであり、騎士でなくなった今となっては痛みを伴うものだった。


    「騎士であろうとしても、もう俺は騎士じゃない。
    でも自分を騎士じゃないと諦めることは、自分を自分でなくすることだ。
    じゃあ、俺はいったい、何なのか。」


    ヒースとシノはなにも言わない。
    それでも1度言葉に出してしまえば、最初のためらいなどなかったかのように次々言葉が溢れる。


    「あいつは、俺を魔法使いだと言った。」

    「あいつは、俺を騎士と呼ぶ。」

    「あいつは、おまえは弱い赤ちゃんだから自分の後ろにいろと言う。」

    「そうやって俺が何者か教えてくれる。」


    ヒースとシノはまばたきもしなかった。


    「あいつは俺の道を作ってくれる。守ってくれる。

    人のふりをして騎士団長を務めていた時、いつも少し苦しかった。
    騎士でなくなった時、俺はもう終わったと思った。
    同時に、安心もしていた。」



    ヒースクリフは妙にふに落ちた気分だった。

    目を、地位を、居場所を奪った憎い北の魔法使い。
    その魔法使いに、カインの心は守られていたのだ。


    「かっこわるいけど、強いあいつがそばにいると安心して眠れる。
    魔物や、強い魔法使いが襲って来たって、あいつが笑いながら倒してしまう。

    …守られるって、こんな感じなのかって」

    「カイン…?」

    いつも陽気でみんなを引っ張る。そんなカインしか知らないヒースには、あまりにらしくない言葉に聞こえた。

    「まあ、俺も守られてばかりじゃいられない。
    鍛練を積んで、あいつもみんなのことも守れるようになるさ」

    そう太陽のように笑った彼は、いつもどおりの彼だ。
    そんな彼でいるために、彼はあの、恐ろしい北の魔法使いを求めたのだ。
     

    「カインは、本当に好きになったんだね
    オーエンのこと。」


    「ああ、愛している。」


    それは愛というには執着や依存じみていて、
    恋というにはあまりに甘すぎたけれど、


    「さっきは驚いてしまって、伝えられなかったけど

    おめでとう、カイン。」


    確かに、祝福されるべきことだと思った。
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