十四話 こういう体 忙しく流れていた時は嘘のように静まり返って、この場にしっかりと己の足で立っているのは大型異形のみとなった。爪に多量についたヴァイスの血を気にすることもなく、異形はあたりを見渡している。もう息をしていない仲間を数秒見つめて、そうしてこの場から立ち去ろうとした。
その時、先程まで地面に伏せって死体と成り果てていたヴァイスが体を起こした。体の裂け目から血を滴らせながら、ゆっくりと立ち上がる。ヴァイスは異形と同じように、自分の足でその地に立っていた。
異形は目を見開き、信じられない出来事にでも遭遇したかのような顔をする。それを見て、ヴァイスは思わずあははと笑った。
「仲間意識が強い、だけじゃなく……表情も、豊かなんだね。っ、ごめんね……僕、こういう体なんだ」
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